凍矢達と再会してすぐの事。




「ねぇ、凍矢。吏将さんが凄くうなされてるんだけど、大丈夫かな?」
「すぐ治まるだろ」
「てか、凍矢は寝てなくていいの?」
「どっかのバカが人の寝てる間に出歩こうとするから寝るに寝れん」
「バカって言われたー」


ちぇ、凍矢はなんでもかんでもお見通しなんだもんなー。
いや、確かに何処にも行かないって言ったら嘘なんだけど、そんなしょっちゅう行こうとは思ってないし。
折角人間界に来たんだから、色々見て回りたいのに、さ。
そういえば、昔からだけど、凍矢って私が起きてる時に寝た事ないな。




「瑠架さんに包帯もらってくる」


陣は傷というよりも痣だからそのままなんだけど、凍矢はお腹貫かれてるからこまめに包帯を替えてあげないといけない。
引いてあるカーテンから出て、瑠架さんの姿を探すけど、どうもこの部屋にはいないようだ。


「凍矢凍矢」
「どうした?」
「瑠架さん、この部屋にはいないみたいだから、隣とか探してくる」
「そうか」


勝手に行くと後で怒られるから、何処に行く時も言ってから行くようにしている。
でも、場所にもよるんだけどね。遠かったりすると中々許可が下りない。
一人元気な陣に手を振りながら部屋を出ようとすると、誰かとぶつかった。


「っと、前向いて歩けよ、お嬢ちゃん」
「ご、ごめんなさい」


入り口にいたのは男の人と髪の長い女の人。
私とぶつかった人は髪を後ろにまとめている男の人(凍矢のと少し似てるけど違う)
女の人は何も言わなかったけど、優しそうな顔で私を見ていた。
すると、後ろにいた陣が声をあげた。


「あー!幽助!と蔵馬」
「よぉ、陣。この部屋だったのか。探したぜ」
「という事は凍矢も一緒ですか?」
「んだ。あ、。コッチ来るだ」
「え、うん」


手招きされ、素直に陣のとこに行く。
近くまで来ると、ぐい、と肩を引っ張られ、体を反転された。


「その子、知り合いか?」
「んーまぁ、妹みたいな」
「みたいなってなんだよ」
「正確に言うと弟子」
「え、貴方の?」
「んにゃ、凍矢の」
「「え?」」
「だから、凍矢の弟子だべ」


陣が繰り返し言うと、二人とも少し驚いた様子。
あれ、そんなに以外なのかな。ていうか、この二人、凍矢の事も知っているんだ。


「凍矢って、お前が二番目に戦ってた奴だよな?」
「あぁ」
「・・・マジで?」
「マジだべ。雰囲気とかちっとも似てねーだろ?同じ呪氷使いなのに」
「・・・まぁ、それはともかく、オメー、名前は?」
「・・・・・」
「?どうした?」
「あ、わりぃ。コイツ、知らん男とは話すなって言われてっから。、コイツ等は大丈夫べよ」
「そうなの?えっと、って言います」
か、いい名前だな。俺は浦飯幽助。幽助でいいから。んで、コイツは蔵馬」


そう言って、男の人(幽助さん)はわしわしと私の頭を撫で回した。
なんか、感じが陣に似てる。


「にしても、男と話すなとかどんだけだよ。そんなにコイツの親、うるせーのか?(ま、確かに可愛いけどよ)」
「違う違う。凍矢に言われてんもんなー、
「うん」
「凍矢にぃ?弟子にそこまで言うか?」
「いやー、もうこれが呆れるぐらいの過保護っぷりでさ。ま、でも、大半の理由は」
「いい加減にしろ、陣」


低くドスの利いた声が私達の耳に届いた。
そういえば、いたんだっけ、凍矢。


「あ、ゴメン凍矢!まだ包帯もらってないから行ってくる」
「あぁ、それならここにあるよ。俺自身は凍矢の傷を診に来たから」
「本当?でも、なんで?」
「凍矢の腹の傷、あれ負わせたの俺なんだ」
「そうだったんだ・・・(・・・俺?)」


じゃぁ、もしかしてこの人達が凍矢達に勝ったっていう、人間?
でも、この女の人(蔵馬さん)は人間のナリしてるけど、妖気を感じる。
・・・ま、いっか。いい人達みたいだし。

蔵馬さんが凍矢の治療をしている傍で私達三人は談笑する。
特に陣と幽助さんはよほど話が合うらしく、凄く楽しそうにしている。


「にしても、は凍矢の弟子っつーより陣の弟子みたいな感じだな」
「魔忍の中でもよく言われたよ」
「んでもって、最初はやっぱ皆驚いたべ。が凍矢の弟子になったー!?って」
「そうだっけ?」
「まぁ、女が魔忍になるっつーのも初めてだし、それもあったと思うべよ」
「ふーん。で、話が少し戻るようでわりーけど、なんであの師匠でこれが出来るんだ?全く正反対じゃねーか」
「んな事聞かれてもなー。多分、生まれ付きだべ?お互い」
「そうそう。それに、凍矢って全然笑わないでしょ?だから、私が凍矢の分も笑ってあげてるの(にこー)」
「へー」

「楽しそうだね」
「やかましいだけだ」
「やっぱり殺さなくて良かったな」
「・・・どういう意味だ」
「貴方の言う光をあの子に与えたかったんでしょう?」
「・・・・・」
「可愛らしい子だね。魔界の、それも最強の忍とは思えないな」
「・・・・・」
「・・・大変そうだね、凍矢」
「・・・煩い」


何話してるのかなー、あの二人。
若干、蔵馬さんが楽しそうに見えるし、凍矢の顔が僅かに赤い気もするけど。
私は凍矢のところに行き、少し顔を覗き込む(あ、やっぱり赤い)


「どうしたの?凍矢。顔、赤いけど」
「!な、なんでもない」
「?(なんか、更に赤くなっちゃった?)」


蔵馬さんはにこにことした顔で私と凍矢を見ている。


「・・・ははーん。陣、これはもしや」
「お、気付いたべか?」
「ちょっとくさいなとは思ったが、確信に変わったぜ」
「な?過保護の意味、わかったけろ?」
「あぁ。いやー、案外凍矢は純だなー、オイ」
「黙れ!」
「ちょっと凍矢、本当に大丈夫なの?傷が膿んで熱出てるんじゃ・・・」
「あー、。少し離れてやったら熱引くと思うぞ」
「え?私が原因!?なんで!?」
「いらん事をに言うな!」
「事実だべ」
「まぁまぁ、凍矢をからかうのも程々に、ね?」
「とか言って、蔵馬だって顔がにやけてるくせによー」
「・・・ねぇ皆、さっきから何の話してるの?私も混ぜてよ」
「いやいや、コレは男同士の話だからなー、悪いけどは女の子だし、諦めろ」

「え、蔵馬さんって女の人じゃないの?」



ピシッ




瞬間、空気が凍り付いたような音を立てた。
陣と幽助さんは引きつった顔をし、蔵馬さんは一瞬で無表情になり、凍矢は元より無表情(でも、赤かった顔が今度は青ざめている)


「え、え?私、何か悪い事言った?」
「恐いもの知らずってこえーよな、陣」
「んだ」
「あはは、は面白い子だねー」
「オイ蔵馬!他意も故意でもない純粋な間違いだぞ!?」
「・・・それって、普通に女に見えたって事じゃないのか?」
「へーぇ・・・」
「バッ、凍矢!そんな解釈いらねーんだよ!地雷じゃねーか!」
「・・・俺をあまり怒らすなよ」


本当に別にバカにして言ったんじゃないのに、どうも蔵馬さんを凄く怒らせてしまったらしい。
蔵馬さん、と呼ぶと、何、と冷たく返された。


「あの・・・、蔵馬さん、綺麗で髪長いから女の人かなって勝手に思っちゃったの。間違えた私が言うのもなんだけど、まさか、そんなに気にしてるなんて思わなかったし・・・。ごめんなさい(しゅん)」
「・・・いいよ、もう怒ってないから」
「本当?(ぱぁ)」


本当だよ、と答えて蔵馬さんは頭を撫でてくれた。
なんか、いつも凍矢にされてるのと似ていて、思わず顔が緩んでしまった。


「・・・やべー、なんか急にが可愛く見えた」
「俺は結構見慣れてっけどなー。凍矢に怒られてる時とかで」
「んで、最終的には凍矢が折れる訳だ」
「そうそう」
「お前等な・・・」









変な終わり方ですけど、書いた方は満足です。
勝気で強気なヒロインもいいですけど、純粋で素直なヒロインっていいですね、やっぱり。
要するに雑食って事で。
(2010.7.30)



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