「すみません。あの、ちゃんはおられるか?」





二十話:やっと出てきましたよ、このお方が!





「遅くなったが、おめでとう、ちゃん」
「ホント遅いよね。もう20話目よ」
「すまない。まさか修行している間にそんな事が起こってるとは思ってもなかった。帰って来て妙ちゃんに知らされた」
「また修行?飽きないわねー」


九兵衛が突然、屯所に訪れた。
暫く見なかったと思えばまた修行してたよ、この嬢ちゃんは。
九兵衛からの祝いの言葉は無いのかー、つか知ってるのかな的な感じで寂しかったのに。


「ゴメンね、びっくりしたでしょう?」
「あんな知らせ、びっくりを通り越して言葉にも出来ない」






「え゛っ!ちゃんが妊娠して、もう子供が産まれたァ!?」
「そうなの。びっくりしたでしょう?でも本当なの」
ちゃんが・・・そんな、僕が修行に出てる間にそんな・・・」
「若っ!若も子孫を残すために私の子を、げふっ!!」
「何故お前の子を僕が産まなきゃいけない。鬱陶しい、どっか行け。二度と柳生家の敷居を跨ぐな」
「いいのですか若!私がいなくなればいちご・・・柳生100%は成り立たな、」
「代わりの『東』を探して来てやる。安心しろ」







「・・・なんか、途中から別のもんが入ってんだけど、いっか(代わりの『東』って・・・なんじゃそら)」
「ところでちゃん。その赤ん坊・・・樹ちゃんって言ったっけ?は何処?(そわそわ)」
「何そわそわしちゃってんの?」
「だって、ちゃんの子供、早く見たいし」
「(可愛い事言ってくれちゃって)アンタの後ろにいるんだけど、さっきから」
「え!」


九兵衛は慌てて振り返り、後ろにあるベッドを見る。
来た時は寝てて、布団被ってたから気付かなかったかな?
いつは九兵衛に向かって手を伸ばしている(あぁ、長いもんね、髪)


「かっ・・・」
「ぁぶ?」
「かわいぃーっ!!」


興奮した九兵衛はいつを抱き上げてしまった(落とさないでくれよ、頼むから)
いつは元々人懐っこい性格。抱っこされて凄く嬉しそうだ。


「ほっぺぷにぷにー!手も足もちっちゃくって可愛いー!なんかもう全体的にふわふわー!」
「あぁ〜vv」


というかあの子、最近キャラ崩れてない?(ま、可愛いいつの前でキャラを崩さない者などいないが)
ちょいと冷ややかな眼差しを送れば、それに気付き、気恥ずかしそうにいつを抱いたまま座った。


「コホン・・・。すまない、取り乱して」
「いや、別にいいよ。コレまで何人もキャラ壊れて来たとこ見たから」
「にゅ〜v」
「かーわーいーいー!!(女子高生風に)」


完璧乱れちゃったよ、あの子(いや、そういう意味ではなくてね)
九兵衛は正気に戻るため、何回か咳払いして、やっと収まった。
いつは九兵衛の腕の中で遊んでいる。


「樹ちゃんほら、クッキー買って来たよ」
「ぁ〜vばぶ〜vv」
「あ、大丈夫、たまごクッキーだ。アレルギーとかあるか?」
「今んとこ、いつにアレルギーはないよ」
「そうか」
「まぅまぅv(はむはむ)」
「・・・(きゅん)」


歯が生え揃ってないいつは口に含めて溶かしながら食べてる。
その咥えてる姿が可愛いからか、九兵衛の表情が緩みっ放しだ。ついでに言うと私も。
ボロボロ零すいつの口周りをタオルで拭く九兵衛。この光景も和む。


「流石ちゃんの子。可愛くてしゃーないんです」
「(しゃーないんです?)いや、その子どっちかっていうと父親に似ているんだけど」
「いや、ちゃんにも似てる。でも、ちゃんの髪は黒いのに、樹ちゃんは茶色いんだな。ミルクチョコみたい」
「髪の色と質は父親譲りよ」
「旦那さんは誰なんだ?前、僕の道場に来た連中の中にいたか?」
「いたよ。アンタにとっては一番パッとしなかった筈(あんまり関わってないもん)」
「えっと、あの時いたのは新八君と白髪の天パとゴリラと瞳孔開いた大皿持った男と・・・そういえばもう一人いたな」
「そう、その人。アンタが一番パッと来てない、茶髪の男(ハッキリゴリラって言っちゃったね、今)」
「髪に目が行く男だな。なるほど、あの人が父親ならこの子の髪の色も納得いける」
「アレ以外だったら納得いかなかったのか」
「だって、遺伝子組換えだったら・・・」
「アンタ、意味わかって言ってる?」


遺伝子革命じゃなくて遺伝子組換えって言っちゃったよ。恥ずかしい、凄く恥ずかしいよ、この子。
あ、決して遺伝子革命でもなんでもないから。総悟の髪質を受け継いじゃったから、いつは。
誰の目から見ても可愛い樹。親である私達はもとより、皆から愛される。
今日初めて見た九兵衛だって、もう樹にメロメロだ。


「名前とか・・・まだ覚えられないよな」
「いんやー、案外呼んでくれるよ?」
「本当か!でも、九兵衛はちょっとアレかなぁ・・・」
「九ちゃんでいいじゃん。いつー、このお姉ちゃん、きゅうちゃんって言うんだよー」
「ゅ?」
「きゅ・う・ちゃ・ん」
「ちゃ・・・きぅ、ちゃーvv」
「コレが限界かな」
「・・・・・」
「ん?」
「・・・(ふるふる)」
「どったの、九兵衛」
「樹ちゃァァァァァァん!!めっちゃ可愛いィィィィィィィ!!(メロメロ〜ン)」
「!(御乱心!)」
「決めた!今日は僕、此処に泊まるから!」
「えぇ!?」


お泊り宣言しちゃったよ、この嬢ちゃんは。
九兵衛は周りにハートをばらつかせながら、いつと遊んでいる。
マジで泊まる気だな、こりゃ。
しゃーない。部屋は余裕あるんだし、布団さえなんとかなりゃ。
あとはそうだな・・・。総悟が九兵衛に触れないようにしないと(だって、九兵衛は)














「おや、珍しい客人で」
「樹ちゃ〜んvv」
「くぅちゃーv」
「おかえり。皆以上にいつにメロメロんなっちゃって、終いにゃ泊まるって」
「いいんかィ?アイツ、実は女なんだろ?親父とか許さねェ筈だろ。俺だったら許さねェ」
「お前の意見はどうでもえぇわ。それに、案外あっさりと許してくれたよ」
「マジでか。どんな父親だ」
「少なくともお前みたいな父親じゃないってのは確か」


ふと向こうを見ると、もう男ではなく女の顔の九兵衛がガラガラを振っている。
いつもすっかり九兵衛を気に入っちゃって、九兵衛にベッタリ(ママ寂しい)


「あ、邪魔しているぞ(キリッ)」
「安心しなァ。アンタのキャラが崩れたとこはしかと、この目ん玉に焼き付けたから」
「樹ちゃんがいて今の僕がいる」
「アンタ何キャラ?」


いつがいてって・・・お前、いつより18年も先に生まれてるくせに何言っとんじゃぃ。
それとも何か?今の僕とは母性本能に目覚めた僕か?


「樹返せィ」
「ぱー(じたばた)」
「・・・樹ちゃんがこう言うなら仕方あるまい(すっ)」
「どうも」
「あ、総悟ダメ」
「は?(ピト)」
「(樹置く)・・・うがあああぁぁぁぁぁぁ!!」

ドォン!!

「あーv(パチパチ)」
「・・・はっ。お、オイ!」


いや、『オイ』じゃなくてね。屯所まで飛んでったんだけど、私の旦那。
穴が開いた屯所の屋根から隊士達の混乱の声が聞こえる。
何故隊長が空からー!ギャー、止血止血!医療室に運べー!などなど。






就寝(同時に沖田帰宅)


「(あー、酷い目にあった・・・)」
「おかえり。九兵衛はね、ムサい男に触れられると我を失って投げ飛ばしてしまうの」
「それ早く言えィ(ん?俺はムサい男だってか?)」
「すまない事をした、本当・・・」
「いんや、何も知らず触れたんだから仕方ねェだろィ」
「あ、寝る時は間に私入るから大丈夫」
「(一緒に寝るんかィ)」



「樹ちゃん寝てしまったな」
「寝付くの早いけど、起きるのも早い」
「はは、ちゃんそっくりだな」
「何よそれ」
「授業中、しょっちゅう寝てたではないか。何回先生に起こされて・・・起きた試し無かったけど」
「私を起こすのにあんな生ぬるい起こし方じゃダメよ」
「って、なんで生ぬるいって知ってるんだ」
「それは勿論・・・」

きゃいきゃい

「・・・(ポツン)」←沖田









  





お待たせ致しました、九ちゃん登場です(キャラ思いっきり壊しましたが)
(2009.6.1)