「・・・え、」
第十九話:逆バージョンなんて当たり前
可笑しい、明らかに可笑しい。
昨日も可笑しな事が起こったってのに、また何かが起こっている。
その異変、違和感は私の体で感じる。
体というか、着ている着物がやけにデカイ。
・・・オイオイオイ、まさか・・・いやナイナイ。
わしわしわし
寝起きに頭を掻く。
が、またしても違和感。いや、今度はハッキリしている。
長い。何がって、髪が。
心ではずっと否定しつつ、鏡に向かう。
そこに映ったのはまさしく、
「あ゛ぁーッ!!?」
幼い頃の自分。
「今度というか、今日はアレか。いい加減にしてくれ」
「土方さん土方さん。今のアイツはいつになくデリケートなんだから、もちっと優しく」
「別に怒ってねェだろ。呆れてるだけだ」
「土方殺して私も死んでやるーッ!!(わぁーッ!)」
何かがプツンと切れ、少し我を失った私は土方さんに襲い掛かる。
けど、いつもはやられるか避けるかの土方さんが私の体ごとキャッチした。
「襲い掛かるのはいいが、自分の体型見てみろ、チビ」
「それ寺子屋時代の時の悪口なんですけど!苛められてたからデリケートなんですけど!」
「嘘だろ。苛めてただろ、絶対」
「九兵衛ェェェェ!!証人になれコラァァァァァァ!!」
「あーぁ、可哀想にちゃん・・・。すっかり混乱しちゃって」
暫く土方さんの腕の中で暴れて(当人は涼しい顔)、ようやく落ち着く。
薬の副作用なのか、情緒も不安定になるみたいだ。
「昨日は樹が15年成長して、今度は私が10年戻った訳ですか」
「10年?13年の間違いだろ」
「お前、元に戻ったらシめてやっから。今の背格好、私にとっては8歳!」
「8歳かー・・・。可愛いなぁー・・・(じりじり)」
「(ヒッ!)来るなロリコン!」
「だから俺は基本、なんでも好きって言ったでしょ」
「いやー!変態ー!!」
なんかキモい退を土方さんも感じ取ったのか、退から半径2メートル以上離れてくれた(久し振りに心が一つになった瞬間!)
副長までなんですかーなどとぼやいていたが、お前がなんですかという話。
「大体、副長だって12〜18歳くらいの女の子好きでしょーが。それもロリコンだし」
「なっ、何言ってんだゴルァァァ!!(顔真っ赤)」
「うぇー!近藤さーん!」
「おー、よしよし」
「局長だって10も年下の女の子の尻追っかけてるし」
「・・・もう誰も信じない」
ロリコン集団から離れて、総悟に抱き付く。
10歳以下の子供好きって言う人は確かに引くけど、12〜18も現実味があって生々しい。
どっちがタチ悪いかって聞きゃ、どっちもタチが悪い。
「呼ばれて来てみれば、懐かしいがいるじゃないの」
「お妙さァァ(ボゴッ!)ぁごォ!!」
「ゴメン、妙。諸事情でこんな事になってしまって・・・(デジャヴ)」
「別に私はいいわよ、いっちゃんに会えるなら。ハイ、着物」
「(だから、いつ限定なの?)」
とりあえず、着る服がないから妙に持って来てもらった。
昨日あってコレもかよと文句垂れてたが、気にしない。
ゴソゴソと中身を開ける。
「・・・妙。コレ、女物・・・」
「いいじゃない、別に」
「いや、いいじゃないじゃなくて・・・。あの、私、着方わかんないって言ったよね?」
「しょうがないわねェ。ほら、お姉さんがやってあげるからコッチいらっしゃい」
いや、楽しそうなんだけど、お姉ちゃん。
あの、嫌な予感がというか、行きたくないんだけど。
中々近付かない私に痺れを切らしたのか、腕を引っ張って部屋に入れさせられた。
最初は普通に着物着せられて、帯を締めてもらっていたんだが、
「ちょ、妙。な、なにするつも・・・ギャァァァァァァァ!!」
「ほら、大人しくなさい。私が一体何年、可愛い妹が欲しいと思ってたと思うの」
「新ちゃん女装させてたじゃん!私じゃ手遅れだってんで、新ちゃんを女装させてたじゃん!」
「だってしてたでしょ。それに、やっぱりこういうのは髪の長い子にしないと」
「イヤァァァァ!!こんなん絶対似合わない!コレ取って取って取ってェェ!」
無理矢理髪を綺麗に可愛らしく結い上げられてしまった。
「一体何が出来るんでしょうねェ(ちょっとドキドキ)」
「ところで、樹は寝てんのか?」
「えぇ、ぐーすかぴーと」
終わった後。
「私の傑作パート2!(興奮)」
「・・・(げんなり)」
「いいんじゃねーか(表情はアレだが)」
私は桜色の着物を着せられ、髪は二つに結い上げられ、髪飾りがいくつかつけられている。
こうした女子姿なんていつぶりではなく、初めてかもしれない。そりゃぁ、少しオシャレした事はあったが。
「やっぱりちゃん可愛い!」
「さ、さが・・・!(相変わらず足速い)」
「(山崎、後でシバく)(抱っこなんざしやがって)」
なんか総悟が殺気立ってる気がするけど、気にしないでいとこ。
離してもらおうと必死に暴れたら何かを蹴り上げてしまった。
途端、落とされる私(わゎっ!)
「〜〜〜〜〜ッッッ!!」
「あ、ゴメン。そこ当たっちゃった?」
退を見ると、彼は股間を抑えて蹲っていた。
周りを見ると、男共は痛そうな表情で退を見ている(近藤さんも股間抑えてる)
そんな痛みを女の私達は知らないからキョトンとするだけ。
「さっ・・・再起不能になっちゃうかも・・・」
「えー、そんなに痛いの?」
「痛いよ!!(クワッ!)」
「!(ビクッ)」
いきなり怖い表情したから竦み上がってしまった。
「土方さん土方さん。骨折るのとどっちが痛いんですか?」
「骨の方がマシかもな」
「あ、試しに折ってみます?」
「今のお前にそんな力、」
ボキッ
「折れたァァァァ!!テメッ、ガキのくせにどんな力してだァァァァァァ!!怪力を越してるよ!」
「で、どっちが痛かったんです?」
「どうでもいいわそんな事!それより、どうしてくれんだコレ!」
どっちが痛いのか聞こうと思ったのに(そしたら共感出来るのかなぁって)
「ぁー・・・」
「あ、いつが起きちゃったじゃないですか」
「誰の所為だ、誰の」
「うーわー、子供に罪をなすり付けるんですか、ひっどー」
「いるよな、こういう時だけ子供の特権を使うガキっつのが」
「ぁー!vv」
いつは目が覚めたばかりなのに、コッチに猪突猛進して来た(なんてスピード!)
「うぉ!いつ!?」
「あっ、ぅ、あ〜vv」
「な、何・・・っででででで!ちょ、いつ!ハゲちゃう!ママハゲちゃうから!!」
いつはあろう事か、人の頭に上って、髪飾りを取ってしまった。
妙は『私の傑作がぁ〜・・・』等と嘆いているが、この際無視だ。
いつは取ったキラキラ光っている髪飾りを手にとって見ては嬉しそうな顔をしている。
「・・・樹、光モンが好きなんか?」
「知りませんけど・・・」
「光ってない奴なんてほら、捨ててますぜ」
「・・・・・」
ますます某アニメに出てくる主人公の妹と似るようになってきたな・・・。
頭フェチだったり、光物好きだったり、猛スピードのはいはいだったり、樹は色んな意味で希望のある赤ちゃんだな。
「俺が刀の手入れする時なんて大変でさァ。光物好きの樹が寄ってくんだから」
「そういや、妙に興味があったね」
「あらあらいっちゃん。今から育てたら立派な女になるんじゃないかしら」
「そうだね。女の広辞苑を教える日は近いね」
「樹。あの魔性の双子に何も教わる事はねェからな」
「ぱぁ?」
「随分な言い方ね、沖田さん」
「大丈夫ですお妙さん!俺は魔性でも何でも・・・というか、なんでも言い付けてください!」
「わかりました。・・・消え去りなさい、ゴリラ」
「いや、そーじゃなくてね」
「この世に一片のDNAも残さず、全財産だけ残して消え去りなさい、ゴリラ」
「いや、そーじゃなくてね」
相変わらずだな、この二人。
+
で、
「戻んないんだけど・・・。つーか、何故縮んだの?あたいは」
「仕返しにとばかりに天人製のチョコ置いておいた」
「やっぱりお前か!なんか地球製(日本製)のチョコの味しないなと思ったらー!」
「チビになったもいいが、やっぱし元のがいいなー」
「(あ、ロリコンじゃなかった)(ほっ)」
「ちぃっとキツかったからなァ。でも、そろそろ戻ってもいい頃だと・・・」
ボンッ! ビリッ、
「お」
「戻った・・・って、アレーッ!?」
「なんでィ、サービスか?」
「んな訳ないでしょ!破れたの見えてたでしょ!?(隠し隠し)」
「そう言われてもねィ・・・今、どういう状況というか、何処にいるかわかってんのかィ?」
「う・・・、総悟の・・・膝の上(腕の中)」
「そ。っつー事で(スクッ)」
「・・・あの、この先に起こる展開がめちゃめちゃ想像出来るんですけど・・・」
「へぇー、それは期待してると取ってもいいんだねィ」
「言っとらんわァ!離せコラァ!」
「いやいや、久し振りのの裸に据え膳。コレを食わねば男の恥ってもんだィ」
「その恥は私は見なかった事にしてやるから降ろせ」
「ぶっちゃけ、食いてェ」
「お前の我が侭じゃねェかァァァ!!」
「ぱー、ぱぁ」
「い、いいいいつ!見ちゃダメダメダメダメェェェ!」
「なんでィ、樹。お前も一緒に学ぶってか?」
「んな事言ってないでしょ!」
「ぱー、めー!(ドドドドドド!)」
「え゛ぇ゛!!なんか速ェんだけど!」
「めんめー!!(ドンッ!)」
「がふっ!」
「・・・いつ。助かったけど、アンタ一体何者なの」
「まーぅv」
← ■ →
樹ちゃんはパパに嫉妬して撃退しちゃった的な(笑)
(2009.6.1)