無事、私も樹ちゃんも退院。
第七話:おかえり
なんかパトカーで赤ん坊抱えて帰るのって妙な感じ・・・(でも仕方ない)
私の家に向かうのかなーなんて思ってたら、着いた先は屯所(・・・あれ?)
「?、・・・?」
「まぁ、わかんないのも無理ないだろう」
「百聞は一見に如かず。行くぞ、」
「え、あ、ハイ(何、何?)」
疑問が残ってるけど、慌てて後をついていく。
着いた先には、
「あれー!?」
10ヶ月前までは絶対無かった真新しい建物が出来てる。
えー!ちょっと、そこ私が趣味でやってたガーデニング用の花壇あったんだけど!
何処行った花壇!とか思っていたら、退が花壇ならあっちに移したから安心してだと。
あ、なんだ良かったと思い、次にこの建物について疑問が浮かび上がる。
「なんですか、コレ」
「何って、ちゃんと総悟と樹ちゃんの家!」
「え」
軽く驚いてる私に近藤さんは続けて話し続ける。
産まれたら家族3人で暮らした方がいいんじゃないかと。総悟も仕事上、屯所に泊り込みで働かないといけないと。
で、考案した結果、離れの家を建てようという結論が出たらしい。
え、ちょっと待ってくださいよ。そんな、私達のために建てたの?この離れは。
嬉しいんだけど、いいのかなという気持ちが交差する。
「遠慮する必要はないぞ。てか、コレはとっつぁんが勝手に建てたようなもんだし」
「そうなんですか」
「夫婦の寝室は別にしてやるー!とか言ってたけど、俺達が止めておいたから」
「はぁ」
「ま、そういう事だ。お前の部屋にあった家具も荷物も此処に移動したから」
「マジですか」
てか、なんで寝室を別々にしたがるんだ?
あとは家族でごゆっくりーと、3人は屯所に戻ってしまった。
うわ、なんか妙に緊張してきたぞ(あ゛ー)
総悟に促されて、妙な緊張しつつも中に入る。
入ると、優しい木の香りが匂う。
うわ、大分いい素材使ってるな・・・。
総悟に案内されるまま、樹ちゃんを抱えて歩く(眠っている)
台所とか風呂とか物置とか色々案内され、最後に着いた部屋の襖を開ける。
そこには一つのベビーベッドがあった。
「コレ、樹ちゃんの・・・?」
「樹以外に誰がいるってんでェ」
「だよね。・・・ね、寝かせてもいいかな」
「大丈夫だって。さっきから落ち着きねーなァ」
だって、総悟と樹ちゃんと暮らせるなんて正直言って思ってなかったし。
だから嬉しくて、幸せでもうどうしよう的な。
樹ちゃんを寝かせて、一息吐く。
総悟もコッチに来て、樹ちゃんの顔を見ながら微笑む。
「樹ちゃんはお父さん似だよね」
「いや、に似てる」
「えー、総悟だって。じゃ、今度皆に聞いてみようよ」
「ヘィヘィ」
どっかりとその場に座る総悟。私もその横に座り込む。
あぁ、不思議な気持ち。
場所は屯所なのに、全然違う空間。実際、此処は離れなのだけど。
でも、なんかホント、近くには皆いるってのに、もう私達しかいないって感じ。
この空間の中にいる事自体、凄く幸せ。もうコレ以上にはないっていう。
「」
「ん?」
「あんさ・・・、順番違うけど」
ゴソゴソと懐を漁る総悟。
そして、取り出したそれは小さくて四角い形をしている。
その箱を開けて、更に中にあった布の箱を開ける。
そう、それは、
「結婚、してくれますか?」
「・・・喜んで」
その言葉の後、銀色の小さいダイヤの付いた指輪を私の指に嵌めてくれた。
「ちと小ぶりだが」
「ううん、充分」
嬉しさのあまり、総悟に抱き付く。
好きな人がいて、その人と結婚して子供が出来る。コレ以上の幸せは本当に無いのかもしれない。
そんな漫画みたいな言葉、今があってこそ信じられる。
本当に幸せで、後が恐くなるほど幸せで。
「樹がもうちょっとでかくなったら式あげような」
「うん」
半年後、私達は結婚しました。
← ■ →
こんな甘くていいのかな・・・。
(2007.3.12)