こんな事、誰に言えばいいの?





第二話:妊娠中にストレスは良くありません





紹介された産婦人科に行って、本格的に検査を行った。
そしたら、やっぱり妊娠していて、今は丁度6週目だとか(どうりで来ない筈だよ、生理)
検査をし終え、『ミニ四駆』に跨って走らせてると、医者の言葉が頭の中に響く。







『コレが貴女のお腹の中の赤ちゃんです。ほら、此処に小さな点が見えるでしょう』

『今は流産しやすい時期です。無理な運動はしないで下さい』

『お酒煙草薬レントゲンは一切やめて下さい』

『定期的に此処に通院して下さいね』







「・・・(流産、いやだ)」


帰りに大江戸スーパーで買い物する。
重い荷物も無理な運動になるからダメかな?と用心深い事を考え、私の欲しいものだけを買う。
今、欲しいものというか食べたいものは何故か果物類。
妊婦は何かをたくさん食べたくなるとは聞いた事ある(特にすっぱいもの)
林檎、蜜柑、苺、梨。
まだ持てるという重さになるまで果物を籠に入れた。
妙な感じだ。今、私がちゃんと立ってるかさえわからない。
あ、酒と煙草と薬とレントゲンはダメだって言ってたな。
・・・酒は控える事出来ても問題は煙草だ。
土方さんは超ヘビースモーカーだし、それに隊士の一部の人も吸っている。
極力避けるとするか(はぁ、)
薬は風邪引かないようにして、レントゲンは骨折らないようにしとかないと。
あぁ、どれも条件悪いじゃないか。仕方の無い事だけど。

『無理な運動はしないで下さい』

あ、コレが一番悪い条件じゃないか。
そんな、コッチの職柄、いつだって無理な運動だ。命の取り合いなんだから。
かと言って、長い間休暇取れるのか?・・・無理な話だ。
全てを近藤さんや皆に打ち明けたら済む事なのに、恐くて出来ない。
特に総悟に知られるのが嫌。だって、妊娠したって聞いた時の総悟の顔を見れる自信が無い。
愛してくれている事は知っている。でも、子供が出来たのでは話が違う。
経済的は大丈夫だと思うけど、総悟も私も若い。
育てる自信なんてあるかわかんない。まず、総悟が望んでなかったらと思うと、それが恐くて打ち明けられない。
こんな恐い事は初めてだ。借金取りや死とは違う恐怖。
思い返せば、私は楽しく生きて来たつもりだけど、端から見れば結構、不幸だ。
借金や両親の死、苦しい生活の日々だった。
でも、楽しい事は楽しんで、戦ってる時は戦ってたから、そんな人生も満更ではなかった。
といっても、私はまだ若い。人生80年のたった18年しか生きてない。
このくらいでグズグズしてても仕方ないのだ。
けど、やっぱり恐いのよ・・・。

『精神的なストレスも流産の原因に・・・』

・・・だったら、どうすればいいのよ。
話しても話さなくてもストレスは溜まっていっちゃうのよ。
どうすれば、いい・・・?
お腹をそっと擦って、『ミニ四駆』で屯所に帰る。











原チャリを置くと、中庭でミントンしていたのであろう、退がコッチに来た(今日もいい汗ね)


ちゃん、大丈夫?風邪だって聞いたけど・・・」
「うん、大丈夫。休暇貰ったし」
「そう。で、それ何?」
「果物。水分はいっぱい取らないと」
「ふーん」


退は私の頭を一回撫で、またミントンしに行った。
皆には風邪という事にしておかないと。
誰にもいえない私の臆病な心がそう告げる。
・・・無表情じゃなかった、かな。





台所で林檎の皮を剥き、皿に並べて持っていく。
自室に戻ると、今すぐ倒れ込みたいが、そんな事したら一発でアウトだ、と理性が止める。
静かに座り込むと、さっきから食べたかった林檎を食べる。
シャリシャリシャリ、林檎を食べる音が響く。
お腹の子も食べてくれるかな、と私にしては珍しい理論を思い浮かべる(林檎じゃなくて、栄養だけが行くのに)


「・・・お前は産まれたいかい?」


私は産みたい。総悟との出来た子供をどうして産みたくないと思うだろうか。
なのに、涙が出て来ちゃう(おかしいよ、私)
産みたいのに苦しいよ。
突然、吐き気が襲い掛かってくる。



バタバタバタッ!!

先生から無理な運動はするなとは言われたけど、コレばかりは仕方ない(その場で吐く訳にはいかないのだから)
辿り着いた先は厠(男でも女でも関係あるかァ)


「い゛!ちゃん!?此処男子便所ォォォ!!」
「ぅ、お゛え゛ぇ゛・・・!」
「え、何、吐いてるの!?」


私が切羽詰った様子で走ってたからか、厠にぞろぞろと人が集まった。
なんだなんだ、と騒いでる隊士や驚いた隊士など様々。
誰かが背中を擦ってくれている。
目の前にはさっき食べた消化されてない林檎が流れて行ってる。


「どーしたちゃん!」
「まさかつわり!?」
「おまっ、それは無いだろ!(パン!)」
「・・・・・」


つわり
まさにそれだ。熱っぽい、胸が張る、極め付けにつわり。どれも妊娠初期症状だ。


「・・・そんな訳ないじゃん。只の風邪よー」
「そうか・・・。大丈夫か?」
「うん、ちょっと熱があるだけ。心配かけてゴメンね、皆」
「本当にびびったよー」


恐ろしいくらいに演技が上手いみたいだ、私は(監察としては当然の事、かな)(監察じゃないけど、見習い)









  





沖田がまだ出ない・・・!(どうなっとるんだ)
(2007.3.1)