。幽助達の試合見に行くか?」
「行くー」


凍矢達が試合に負けてから二日経った今日は浦飯チームの準決勝が行われる日である。
準決勝からは会場が変わるという事もあり、陣を含めた一行は地図を頼りにその会場へと向かう。



時刻は既に準決勝戦が始まっている頃。
地図を持って先頭切って進んでいた陣がうーん、と声を上げ始めた。
その様子に気になった凍矢が陣に尋ねる。


「陣・・・。お前、まさかとは思うが」
「迷っちまった」


えへ、と舌を見せコツンと軽く自分の頭を叩いた陣の腹部に凍矢は蹴りを入れる。
予想以上なスピードであった為、陣は見事にヒットし、そのまま木にぶつかるまで飛ばされた。
その拍子に手から地図が離れ、ひらひらと舞い降りた地図をが空中でキャッチする。


「ごほ、ごほっ!いっつ〜・・・、ちょっとした冗談でやったのに」
「道に迷ったのは冗談じゃないだろう。お前に頼んだ俺がバカだった」
「バーカバーカ」


悪ノリしてきた陣に更に凍矢の怒りのボルテージが上がり、再び攻撃を始めた。
陣も陣で戦闘態勢に入り、バトルが勃発してしまう。
一方、蚊帳の外なは手に入れた地図を見ながら冷静に今自分等が何処にいるのかを考え始める。


「凍矢てば以外に短気なんだよね〜」


二人の乱闘を見ながら呑気にそんな事を呟く
そうこうしているうちに二人の乱闘はヒートアップしていった。
風で周辺にあった木は薙ぎ倒され、地面や植物達は氷付けにされてしまっている。




「よし、わかった」


どうやらは今自分等がいてる場所を把握したのか、地図を畳んで懐に入れる。
傍らでは未だ乱闘が続いていた。
それを見るなり、は掌の上に冷気を集め、ある程度でかくなった氷の塊を、


「えい」


二人に向かって投げ付けた。
三秒も経たないうちにその氷の塊は二人の脳天に命中。
ごんっ、と鈍い音が辺りに響き、二人は後頭部を押さえながら地面の上に転がる。
ざり、とは二人に近付く。


「っつぅ〜・・・。、何するべ!」
「こうでもしないと二人共止まらないでしょ」
「それにしたってやり方ってものがあるだろうがっ」
「間に入って巻き添え食らうとかマジ勘弁」


二人の訴えにはけんもほろろと言った感じだ。


「お宅のお弟子さん、加減っていう物を知らないべか」
「さぁな」
「把握してないし・・・。まぁ、行いの悪さは師匠譲りだべな」
「なんだと」


陣の嫌味に再び青筋立つ凍矢。
またもや臨戦態勢になりかけている二人にの表情がやや険しくなる。
そして、お互いの妖気が武器になった時、


ザクッ!


二人の間を氷の剣が遮り、地面を刺した。
勿論、凍矢の物ではない。


「あのさぁ、いい加減にしないと怒るよ?」


腕に対し垂直に氷の剣を作ったが言い放つ。
いつもは喜怒哀楽コロコロ変わる表情が珍しく無表情になってしまっている。
ギロリ、と睨みを利かせているに男二人は少し青ざめた。


「ゴメン、。怒らないでけろ」
「じゃ、行こっか(にこり)」
「行くって、お前わかってるのか?」
「アンタ達がケンカやってる最中にわかったよ」


ほらコッチ、と言って今度はが先頭に立つ。
後ろで陣が凍矢に話しかける。


も結構、短気だべな・・・」
「・・・だな」
「アンタ達に短気とか言われたくないんだけど!(くわっ)」
「やべ、聞こえちまっただ」


こうして短気三人組は改めて仲良く(?)新しく変わった会場へと向かって行った。











それから約一時間後、ようやく会場らしき建物が見えてきた。
ほっとする一行。すると、近くから女性の叫び声が聞こえた。
何事かと思い、三人は声のした方へ向かう。

声がした中心部に行けば、妖怪がヨーヨーで顎を打たれ、伸びていた。
残りの者が逃げようとした時、塞ぐように前に出れば、慌てて別方向へと逃げてしまった。
それを追いかける気はなく、三人は人間の男女に近付く。
そこには見覚えのある奴が眠りこけており、傍らにいる人間の女はヨーヨーで倒した子供に礼を言っている。
その後ですぐ、『あ』と女の声が二つ重なる。


「螢子ちゃんだ」
ちゃん」
「ん?二人とも知り合いだべか?」
「うん、昨日話した人」
「あぁ、が酒ぶっかけられた・・・」


その言葉に螢子は自分がした訳じゃないと少し否定する。
一方で陣が幽助に近付いている。


「陣、どうした?」
「また強くなっただな〜、コイツ」


陣の言葉に螢子と以外の妖怪三人が同意する。
ぷに〜と幽助の頬を引っ張る陣だが、寝惚けているのか、寝言を言いながら幽助がそれを払い退け、螢子の膝に突っ伏した。
一瞬の間が空き、笑い声がその場で響いた。


「(いいな、幽助さん・・・)」


二人の姿を見、羨ましく思う
自分も幽助みたいに甘える事はあるが、今の螢子のように相手が顔を赤らめる事なんて無いのだ。
それはつまり、自分の事をそういう風には思ってない訳で。
そんな事は前からわかってはいるのだが、やはり切ない気持ちになるのであった。













次は螢子と絡みます。
(2013.11.5)