会場に行くかと誘われただったが、以外にも断った。
彼等と一緒にいたくないという訳ではなく、螢子と一緒にいたかったそうなのである。
残ったは今、螢子の隣にちょこんと座り込んでいる。


ちゃんは妖怪なの?」
「うん」
「どんな妖怪?」
「んっと・・・、氷を使うの」


ざっくりとした回答に螢子は首を少し傾げる。
は口で説明するより、実演して説明する事にした。
掌の上に妖気を集めて氷の塊を作り出し、螢子の前に差し出す。


「こんな感じ」
「凄い・・・。何も無いところで氷が出来てる」
「ついでに」


今度は右手に氷の剣を作り出す。
突然の剣の出現に螢子は驚きを隠せない。


「これ・・・、剣?」
「うん。あ、触っちゃダメだよ、怪我しちゃう」


思わず伸ばした手を螢子は引っ込める。
必要無くなった事ではすぐに剣を消し去らせた。




「幽助さん、起きないね」


は不意に螢子の膝の上で寝ている幽助に話題を切り替えた。
の問いかけに螢子は呆れながら溜息を吐く。


「ホントね。いつになったら起きるのかしら」
「幽助さん、気持ち良さそうだよね」
「全く・・・。おかげでコッチは身動きが出来ないわよ」


螢子は口で文句言いつつもまんざらでもない様子だ。
そんな様子の彼女に思わず笑みを零してしまう


「何か可笑しい?」
「ううん、羨ましいなって」
「え?」


思ってもない言葉が返って来、螢子はまたもや首を傾げる。
の表情が切なげに変わる。


「螢子ちゃんは幽助さんの事が好きなんだよね?」
「え!?あ、いや、私はそんなっ・・・!」
「あれ?違うの?」


からかう訳でもなく、素で聞いてくるに螢子はうっ、と言葉を詰まらせ、観念したかのように答える。


「・・・好きよ」
「だよねっ。それで、好きな人にそういう事してあげれるのがいいなぁって」
「・・・ん?という事は、ちゃんにも好きな人いてるの?」


螢子の問いには思わず『あっ』と言い、顔を赤くして俯いてしまった。
螢子はそこで確信し、わくわくしたような声でに問いかける。


「誰、誰?さっき一緒にいてた2人のどっちか?」
「あ、う・・・」


核心を突かれ、出す言葉が無くなってしまっている
螢子はそんな事なぞお構いなしにどっちの人?とに更に問いかけている。
誤魔化す事が出来ないと悟ったは素直に答える事にした。


「・・・背が低い方」








「・・・っくし」
「お?珍しいだな。凍矢がくしゃみするなんて」
「あぁ、・・・?」








「へー、そうなんだぁ。あの人がちゃんの好きな人ね」
「な、内緒にしてよっ」
「勿論よ」


パチッ、とにウィンクする螢子。
はホッと胸を撫で下ろしつつも、少し切なげな表情になった。


「どうしたの?」
「んー・・・。凍矢はね、私の事そういう風には見てくれてないんだ」
「そんなのわかんないじゃない!」
「わかっちゃうの。ずっと一緒にいてるんだもん。ちっちゃい頃からずっと」
「・・・そうね。その気持ち、わかるわ」


すっ、と螢子も目を細める。


「でもね、一生懸命護ってくれると『私の事大切に思ってるのかな?』っていう気持ちにならない?ちょっとだけでも」
「え?うーん・・・」


螢子に言われ、は思い当たる節が色々と思い浮かぶ。
確かに凍矢はいつだって自分を優先してくれた。
でもそれは凍矢が優しいだけであって、とすぐにそう考え、やはり無いと答えた。


「凍矢は優しいし、責任感強いから。・・・それだけだよ、きっと」
「そう・・・」


螢子はそれ以上何も言わなかった。



重たくなってしまった空気を変えようと、は話題を変え話始める。


「螢子ちゃんに借りた服、可愛かったよ。今まで着た事ないから不思議な感じだった」
「あらそう?ちゃんは着ないの?スカートとか」
「あのヒラヒラしたの?持ってないから着た事ないなー。私が着るのって大抵誰かのお下がりだから」
「もし気に入ったならあげるわよ?(最近、アレキツくなったし)」
「あ、いいよ。螢子ちゃんの物だからもらえないよ。それに」
「それに?」

「ここらへんが大きくて落ちそうになっちゃう」


の言葉には嫌味は含まれていない。ただ、本当の事を言っただけである。
だけど、その言葉に螢子は反応してしまい、


「あは、あははは・・・っ。こしょばいよ、螢子ちゃんっ」


の脇腹を掴もうとするが、それは出来なかった。


「どうしたの?」
「・・・う、羨ましい・・・」
「へ?」


は訳もわからず、ただ首を傾げる。
それから程なくして試合が終了するのだった。













掴めない腹が欲しいです←
(2013.11.5)