「・・・なんだ、その格好」
「話せば長くな・・・らないか。んっとね、お酒をぶち撒かれた」
「は?」
いつもと違う格好で現れたに凍矢がそのまま質問してみたところ、またもや疑問が生まれる回答が返ってきた。
ちなみそんなの格好はと言うと、白のふんわりとしたブラウスに薄茶のプリーツが入ったスカート。人間の女が着る様な格好である。
「出会い頭にね、人間の女の人とぶつかって、その人が持っていたお酒がまぁ見事に私の頭からぶっかかった訳・・・あ、その目やめて」
向こうから人が来るなぞ、気配で察せるようなものを・・・とでも言いそうな感じの呆れの目をに向ける凍矢。
その視線の意味をわかって、は泣きそうな気持ちになった。
でね、その後・・・と、は話を続ける。
+
「あらやだ〜!ゴメンなさいねぇ、いきなり現れるから」
謝罪している割りには、まるでこちらが悪いようではないか、とは思った。
ただ、今はそんな事よりも鼻に付く日本酒独特の匂いが気になって仕方無い。
こちらもさっさと謝ってさっさと退散してさっさとシャワー浴びて着替えよう、と思って口を開く。
「いえ、こちらこそゴメンなさ」
「温子さん、どうしたんですかー?」
折角の謝罪が第三者によって遮られてしまった。
相手の女性の後ろから、別の女性が尋ねながらこちらに向かって来ている。
近寄って来た女性は、の出で立ちを見て驚愕したような声を上げる。
「ちょ、どうしたんですか、その子!」
「ん〜?ちょっとそこの角でぶつかっちゃってね〜。持ってたお酒がかかっちゃった☆」
「いや、お酒がかかっちゃった☆じゃありませんよ!びしょ濡れじゃないですか!」
ぶつかってきた女性、温子より幼く見える女が頭から酒を被り、ぐっしょり濡れたを心配する。
「兎に角、貴女はシャワー浴びないと!」
「あ、いえ、お構いなく」
「何言ってるの!私の部屋が近いから行きましょう!温子さんは先に行ってて下さい」
「わかった〜」
じゃぁね〜、と手を振りながら去っていく女性を余所に、の手を引いて自分の部屋へと向かう。
は未だショックが抜けてなかったのか、更なる事態に多少混乱していた。
そのまま成す術なく見ず知らずの少女に付いて行く形となってしまったのだった。
「ハイ、これ着替えね!」
「は、はぁ・・・」
「じゃ、ごゆっくり〜」
パタン、と脱衣所のドアを閉められ、はというと未だ困惑していた。
しかし、素性の知らない相手に人間はここまで親切にするものか、と僅かに感心もしている。
とりあえず、シャワーを浴びたかったのもあり、その人間の言葉に甘え、纏っている衣服を脱ぎ始める。
全部脱ぎ終えたところで浴室へ入り、シャワーのお湯を頭から被った。
20分程度で上がり、備え付けのタオルで体や髪を拭いてから渡された衣服に腕を通す。
自分の服はこのまま持って返って自室で洗おう、と考えた。
「・・・(少し大きいな)」
ウエストの部分が緩いスカートを押さえながら、は脱衣所から出る。
出ると、先程の少女がソファに腰掛けており、読書をしていた。
出てきたの存在を確認する否や手に持っていた本をテーブルの上に置き、の元へ歩み寄る。
「どう?少し大きいかな」
「うん」
「ゴメンね、お酒かけちゃって」
「ううん」
この人に謝られるのは何か違うような、とは疑問に思ったが何も言わない事にした。
「貴女、桑原君と戦わないって言ってた子でしょ」
「見てたの?」
「うん、その時だけね。他の試合は見てなかったんだけど」
「ふーん」
「あ、私、雪村螢子って言うの。貴女は?」
「」
「そう、ちゃん。よろしくね」
「うん。えっと・・・、螢子ちゃんって呼んでもいいかな?」
「勿論」
その言葉にの表情は明るくなる。
「螢子ちゃんって人間だよね?幽助さんと知り合い?」
「あー・・・うん、まぁね。腐れ縁よ」
ふーん、とは頷き、そこではたと思い出したかのような声を上げる。
「螢子ちゃん、何か袋ある?」
「どうして?」
「私の着ていた服、持って帰ろうかなって」
「そんなの、コッチが悪いんだからコッチが洗ってあげるよ!責任持って」
「あ、いや、そこまでしてもらわなくてもい」
「いいから!」
の台詞を遮り、有無を言わせない螢子の言動には頷く事しか出来なかった。
乾いたら届けに行くから、何号室か教えてねと言われ、素直に自分の泊まっている部屋番号を言ってから自室へ戻って行ったのであった。
+
「・・・と言う訳なの」
「成る程な」
事の経緯を知り、改めての着ている服へ視線を移す凍矢。
いつも着ている鎖帷子も普段着ている服も自分のお下がりであるが故、自然と男の格好ばかりしていたが人間の女物の服を着ている。
その普段と全く違う格好に新鮮さを感じた。
傍から見れば普通の女の子だ。
本人はいつもと違う服で落ち着かないのか、妙にそわそわしているが。
「人間の女の子って、可愛い服着てるのね」
人間妖怪関係ないと思うが、という突っ込みは心の内で留めておいた。
普段からそういう格好すればいいのに、なんて口が裂けても言えない凍矢。
はその日ずっと螢子から借りた服で過ごしたとさ。
「うお、どうしたべその格好」
「ちょっといざこざがあってね、人間の女の子に借りてるの。・・・変かな」
「いや、可愛いべよ。普段からそういう格好すればいいのに」
「・・・・・」
正直に言える陣の事を少し羨ましく思った凍矢なのであった。
とりあえず、女の子との絡みをしとかないと、てな訳で。時期は準決勝の前の日の昼間で。
この話は接続語を凄く悩みながら打ってました。日本語難しい・・・。
他の女性達と絡むのはもうちょっと後の話でしようかなと。
(2013.11.5)
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