「桑原さん、大丈夫?」
とことこと桑原のところへ歩み寄る。
桑原は歩み寄ってくる少女を不思議そうな目で見ていた。
「ゴメンね。私、治癒能力持ってないの。だからせめて、あの人達のところまで連れていってあげる」
自分より遥かにデカイ図体を肩で支えながら、のろのろと幽助達のところへ連れて行く。
何処か健気な様子の彼女に悪いと思いながらも、支えられてるとは思えなかった。
石盤から降りたところで幽助と飛影が駆け寄る。
「大丈夫かオメー」
「おぅよ」
「全く、こんな女に情けかけられるとはな」
「あんだとテメ、あだッ!!」
嫌味を言った飛影に怒鳴ろうとしたところ、肋骨あたりに激痛が走り、蹲る。
その拍子にの体から離れた。
「すまねーな、嬢ちゃん」
「あ、いえ」
「オラ、今度は俺が肩貸してやるよ」
言いながら幽助は桑原の腕を自身の肩に回して脇に潜り込み、支えながら立ち上がる。
石盤にもたれるように座っていた蔵馬もなんとか自身で立ち上がり、歩を進めた。
浦飯チームが暗い廊下に入ったところで、は何かを思いついたかのように小走りで駆け寄る。
「あのっ、蔵馬さん!」
呼ばれた名前の主はその声に振り返る。
それに釣られて他のメンバーも足を止めた。
「あの・・・ありがとう御座いました」
ぺこり、とは蔵馬に頭を下げる。
その行動に蔵馬の脳内に疑問符が浮かび上がる。
「えっと、俺、君に感謝されるような事したかな?」
「・・・凍矢、殺してくれなくて」
「・・・あぁ」
「あと、ゴメンなさい。そんな大怪我してるのに、爆さんがあんな事・・・。桑原さんも吏将さんが・・・」
「フン、謝る必要なかろう。この大会はそういう物だ」
「飛影!・・・でも、確かに飛影の言うとおりだな。だから、気にしないで」
でも、と続いたの声を幽助が遮る。
「気にすんなったら気にすんな!確かに、あの筋肉ダルマが蔵馬ボコった時はムカッ腹立ったけどよ、そんなもん、アイツぶっ飛ばした時に発散したぜ。あと、陣との戦いでもな」
ニカ、と歯を見せながら笑う幽助に釣られてもはにかんだ。
「それに、コッチだって感謝しなきゃな。情けないかもしれないけど、本当にコイツ、アレ以上何かされようもんなら死んでたかもだし」
「うるせーよ。ていうか、さっきも言ったけど女の子相手に俺は戦えねーよ」
「ケッ、紳士気取りやがって」
「んだと。テメーみてーに節操無い男じゃねーんだよ」
「ハイハイ、二人ともそこまで」
目の前のやり取りを見ているはほんのりと心が温かくなるのを感じた。
殺していい人間なんかじゃない。
「それより、凍矢達を医務室に連れていかなくていいのかい?」
「あ、そうだった!」
蔵馬に言われ、凍矢達の事を放って置いてる事に気が付いた。
慌てて戻ろうとしたところで声がかかる。
「嬢ちゃん、名前は?」
「」
「、か。いい名前だな」
いい名前と言われて、えへへと照れながらも素直に喜ぶ。
「・・・あぁ、成る程」
「ん?蔵馬、何一人で納得してるんだよ」
「いや、別に?」
そう答えた彼の顔は何故か楽しそうだった。
一同は疑問に思いながらも、と別れた。
が再び会場に姿を見せた時には凍矢の姿は無かった。
先に戻っているのかと思い、最初に来た道を辿った。
程なくして見覚えのある後姿が目に入り、その人物に近付く。
腹を押さえながら壁伝いで這うように歩いているため、すぐに追いつく。
「凍矢、大丈夫?」
「・・・か」
なんとか顔を上げ、隣にいる人物を確認する凍矢。
心配そうに自分の顔を覗き込んでくる少女。
何かを言いたくても、腹部の痛みが邪魔して上手く発声出来ない。
「・・・医務室行こ」
の言葉に無言で頷いた。
自分がとても情けなく思う凍矢であった。
なーんかまとまりがいまいち、しっくり来ない。
(2013.11.5)
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