四聖獣の奴等を最初は蔵馬が倒し、次に桑原君が倒して、飛影が圧勝。
前者2人がかなりの深手を負ったが、残り2人は元気満タン。
さて、あと残るは1匹。それまで街は大丈夫なのかしら・・・?
第七話:苦
桑原君のおかげで入り組んでいる迷宮城を何の罠にかかる事もなく進んでいける。
途中、幽助のポケットに入ってるコンパクトから呼び出し音が鳴った。
『今螢子ちゃんと学校にいるよ。魔回虫にとりつかれた人間に囲まれてる!』
「!」
『奴等明らかに螢子ちゃんを探してる。狙ってきてるんだ』
「なにィ!」
『早く虫笛を奪って・・・』
『あっ!』
『貴様ァ、学校に私服で来るとはァ、何事だァ!』
『危ない!』
ゴッ
ザー・・・
「あ!オイ!ぼたん、どうした!?オイ!・・・くそぉ!」
螢子が狙われている?
どうやら敵さんは幽助の決定的弱点なるものを掴もうとしているんだね。性格悪い。
時間稼ぎかどうか知らんが、養殖人間出てきたしさぁ。
とことん性格悪い。
「面倒くせー!俺のショットガン式霊丸百連発でコナゴナにしてやらぁ!」
「ちょちょちょ!落ち着きな幽助!今焦って無駄に霊力消耗したら朱雀の思うツボよ」
「だが、そうして突破するしか方法めーだろ!」
「ある」
なぬ。
「奴等の上を見ろ。あの窓から行ける」
え。
オイオイオイ、あんな高いところに一発で行けというのか、コヤツは。
や、確かに方法としては可能だが、此処にいる奴等は人間2人に飛ぶ能力ない妖怪3人だべよ。
なに、名案??
「まぁ、見事なこって」
「なんで俺が・・・。ヤロー、いつかシメる」
いや、ホント見事な人間タワー。あ、2人は妖怪か。
何が凄いって、一番下で2人も上に乗せてる桑原君が凄いわ。重いだろうな〜。
「うおお!いくぜェー!」
ダム、ダム、ダム
「うおりゃぁああ!」
ガシッ
おしっ、コレでなんとか朱雀の元まで行けそうだな。
しかし、幽助も気になるが、何より人間界・・・螢子とぼたんが気になる。
コレはアレだったね、私はコイツ等と一緒に魔界に行かず人間界で滞ってた方が良かったね。ぼたんだけじゃ不安だもの。
結局私が此処に来てやった事といえば、今こうやって養殖人間を片付けているという事だけ。
幽助の力になれるばこそと思って行ったのに、結果コレだ。
コレだったら、コエンマの要求を断って人間界に残っておけば良かった。
そしたら、螢子を護れたもの。
「、何を考えているんです?こんな奴等でも油断したらやられますよ。数多いんだから」
「うん・・・、わかってる」
幽助、頑張って。コイツ等片付けたらそっちに行くから。
+
「あぁ!浦飯!」
養殖人間を全部片し、最上階に向かったはいいが、決着ついたようだ。
・・・相打ちという形で。
「まずい。霊力をほとんど使い果たし、心臓が止まりかけている」
「俺が霊気を送る!」
「自殺行為だ。貴方も白虎との戦いでのダメージが全く回復されていない」
「そんじゃ、くたばんの黙って見てろってのか!霊気送れんのは俺しかいねーんだ!四の五の言ってられっか!」
・・・マジで送ってる。後先考えないなァ。
「どうやら二人とも人間界まで運ばなければならないようだな」
「ふん・・・、我が幼馴染ながら情けないね」
「全く不可解だな。何故、自分を削ってまで他人に尽くすんだ」
しかし、だからこそ朱雀に勝てたんだ。
自分より大切な人を護る為だったらどんな方法を使ってでも護る。
だからこそ、勝てたんだ。
幽助は螢子を護りたい一心で。螢子が殺されないようにって。
ただ、それだけなんだ。ただ、それだけ・・・。
だけど、でも・・・。
+
「あーっ、疲れたーっと」
「お前は何もしてないだろう」
「うるっさいよ。学校帰りで着替えもせずに行ったんだ。こちとら色々神経削れたんだよ」
幽助達を桑原君の家まで運んだ後、飛影と一緒に我が家へ帰宅。
私は帰宅早々、通学鞄を階段のところに投げ、ソファで一休み。
「ひえーさんひえーさん。なんか食べたいんでっしゃったら、あるもん適当に食べておくれ。さんは疲りた」
「・・・本当はそんなに疲れてないだろう」
「なんでそう思うのさ」
「本当に疲れてるのなら、妖力がなくなり、元に戻ってるはずだろ。その姿が貴様の本当の姿じゃない」
「・・・妙に勘が鋭いねェ。ま、別に解いてもいいんだけどさ、元の姿が嫌なだけよ」
あと、人間の姿ってのも結構気に入ってるしね。
長年、この姿で幽助や螢子達を騙してきたんだ。そう簡単に戻りたくないしね。
「それと」
おや、まだあるのかい。
「幽助の事が好きなのか」
あー、もうやだ、このクソガキ。
「ナマ言ってんじゃないよ、ガキが」
「図星か」
「うるっさいなー・・・。私の方がアンタより千年以上生きてるっていうのに・・・」
そんなガキに気付かれる私も私か。
それより、気付くはいいが、どうして黙っててくれんかね。
何度も押さえ込もうとしてた感情なのに。
「おかしい?妖怪が人間を好きになるなんて。でも私は好きになってしまったんだ、アイツを、幽助を。妖怪の私が、人間の幽助を。おかしいよね、笑いたきゃ笑いなよ。アイツには螢子がいるのに。私の事なんて気にもしてないのに、それでも。・・・それでも好きなんだ、アイツが、幽助が」
届かない想い、叶わない想い。
妖怪が人間を好きになるなんて、どういう事だろうか。
気付くまでは苦しかった。けど、気付いてからはもっと苦しかった。
だって、幽助の事が好きなのは私だけじゃなくて、親友の螢子も幽助が好きで、幽助も螢子が好きで。
魔界に帰る事はいつだって出来た。でも、離れられなかった。
300年、人間界にいたけどこんな事は初めてで、どうしようもなくて。
そんな風にダラダラ過ごして、結果コレだ。
「飛影。私、千年以上生きてきたけど、初めてだよ、こんなの。どうしよう、どうしたらいいの・・・」
終わりの見えない恋が私を苦しめていた。
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(2009.5.30)