飛影に何もかも話して、その翌日の事。





第八話:妹





「おんや?どないしたっと、そのビデオ」
「・・・コエンマから預かった。幽助の次の指令だそうだ」
「朱雀と戦ったばかりだってのに?コエンマもキツイ事させるね」
「見るぞ」
「え?今回は助力とかそんなん頼まれてないんでしょ?だったらいいんじゃ・・・」
「いいから見るぞ」
「・・・・・」


軽く睨まれ、渋々ビデオを再生する。






『今回の任務は、一人の少女を救出する事だ』


少女救出?


『その少女は骨爛村という今は村人のいない廃村のある屋敷に幽閉されている』


ビデオの内容は、心無い人間が金儲けの為に少女を監禁しているとの事。
その少女は人間じゃなくて、氷女という妖怪。
氷女が生み出す氷泪石。確かにアレは闇値で数億円は軽くする宝石だ。


『そして、コレが使い羽達が念信してきた少女の映像だ』


・・・あんれまぁー・・・美少女。
見るからにまだ子供ね。可哀相に・・・。


ガタッ


「ん。・・・、オォォイィィィ!飛影ィィ!?」


飛影がビデオの途中だってのに、出て行こうとする。








『娘の名は雪菜。飛影の妹だ』


え。
なんと、この美少女が飛影の妹。
・・・・・。
・・・いけない、思考停止してる場合じゃなかった。


「ひーえーいぃー!アンタ、このビデオ幽助に届けるんでしょーが!(すぅ・・・)戻って来い!!!」


ビリビリ・・・ッ


息を大きく吸い込み、腹の底からでかい声を出してやった。
案の定、木々を渡ってた飛影が驚いたのか、踏み外し、落ちてしまった。
私も窓から出、飛影の元に行き、飛影を回収した。


「ったく。妹が心配で仕方ないのはわかるけど、幽助にビデオ届けるって言われてんでしょーが(ずるずる)」
「・・・チッ」


ちょくちょく寝言で『ユキナ』って言ってたのはこういう事だったのね。
前からわかってたけど、飛影の邪眼、妖気の感じからして最近身に付けたものみたいだし。
邪眼を付けるには万倍もの痛みに耐えないといけないし、妖力も最下級まで落ちる。
そうまでして邪眼を付けたかった理由が、行方不明の妹を見つける為か。
はて、雪菜ちゃんは氷女。氷女が生まれるのは同じ種族の氷女のみ。
しかし、氷女は確か女児しか産まなかったはず。
・・・腹違いの兄妹か。いや、それだったら父親が一緒で、母親が違うって事になる。
けれど、氷女は男とは交じってはいけないという掟があったはず。
じゃぁ、もしかして飛影は・・・、忌み子。


「・・・雪菜ちゃん、見つかったね。あとは助けるだけだね」


飛影はただ黙って聞いていた。











「飛影。雪菜ちゃんの妖気、わかる?」
「・・・いや、呪符の結界で断ち切られている」
「陰湿ねー。中から出られない、外からもわからないなんて」
「・・・!」
「ん、どった」
「雪菜」
「あ!ちょいと!」


何かに気付いたかのように飛影は屋敷内に入ってしまった。
何があったか知らんが、とりあえずついて行く事に。
途中、倒れてる警備員とか見えたが、コレ等は幽助が片付けたのだろうか。










「呪符の結界に閉じ込めていたとはな。邪眼でいくら探しても見つからなかったわけだぜ。しかし、そこから出したのが運の尽きだな」
「ひ、わ、た、助け・・・」
「雪菜ちゃん、コッチ」


ドゴォッ!


・・・わぉ、一撃必殺。
ま、所詮人間。少し力入れたらすぐ気絶するからね。・・・脆い。


「あ、ありがとう御座います。あの・・・、あなた達は・・・?」


そうか。雪菜ちゃんは飛影が兄だって事知らないのね。


「・・・仲間さ。あいつ等のな」
「は!そうだわ、大変!」





「・・・いいのかい?自分が兄だって事、あの子に告げなくて」
「その必要が何処にある」
「さぁ。それはアンタ次第じゃない?」
「だったら、必要ない」


飛影は飛影なりに事情あっての事か。
それなら、無理に私が催促するまでもない。




「あ!飛影、!」
「あれまぁ、どうしたの幽助。えらい傷負って」
「・・・テメーの素っ頓狂な声と口調聞いたらなんか腹立ってきた」
「ちょいと!声と口調はどうしようもないじゃないのさ」
「なんかぼたんみてーだな」
「ったく。あーあー、折角傷の手当てしてやろうかと思ったのにー」
「ケッ、余計なお世話だよ、・・・貧乳女(ボソッ)」
「(ぴく)ほぉー・・・。どうやら浦飯さんは傷の手当てではなく、広げて欲しいのがお望みのようで(バキッ、ゴキッ)」
「げ、聞こえちゃった?(さー・・・)」
「狐は耳がいいっつっただろーがァァ!!」


バシィ!バシィ!ガゴォォ!!


「・・・(チーン)」
「・・・・・」
「行こ、飛影」


伸びてる幽助を放っといて、私達は部屋から出る。
と、そこへ桑原君と雪菜ちゃんが。


「飛影、ちゃん・・・!垂金は何処だ!?」
「え、片した。暫くは起きないと思うよ」
「そうか。・・・チッ、同じ人間かと思うと反吐が出るぜ」
「!・・・雪菜ちゃん、ちょっと腕出して」
「え?は、はい・・・」


おずおずと火傷を負ってる片腕を私に向かって伸ばす。
私はそれを手に取り、妖力を集中させる。


「ゴメン、氷女にとってはちょっと熱いかもだけど」
「いえ、大丈夫です」


人間に酷い目合わされたのに、この子はなんて健気というか優しい子なんだろう。
両腕に火傷の跡を見ながら人間に対する憎しみとこの子の優しさが複雑に絡み合ってる。
同時に理解し難い。私も同じような事されたらきっと人間を憎しんだだろう。
・・・でも、雪菜ちゃんは助けようとしてきた人達を見て、人間は皆悪い人じゃないとわかってたのかもしれない。


「すっげ・・・、火傷の跡がみるみる消えていく」
「・・・よし、終了。バカ幽助は放っといて、桑原君は・・・雪菜ちゃんに治療してもらったから大丈夫そうね」
「あぁ。ところで、浦飯は何してんだぁ?」
「さぁ。勝手に転んだんじゃないの?」


この時、私達はまだ知らなかった。
戸愚呂がわざと負けていたという事を。









  





基本、ヒロイン目線なんで飛び飛びです。
(2009.5.30)