第六話:虫
幽助が山篭りと聞いて半月。
温子さんによると連絡は来てるみていだから生きてはいるとの事。
でもって、螢子はというと最近ご機嫌ナナメ。
だが、なんか今日は機嫌がいい。
なんでかなと思ったところで幽助が久々に学校に来た(遅刻だけど)
「よぉ幽助。久しぶりじゃん。何してたの」
「山篭りで修行」
「へぇ、どんな?」
「やめてくれ。思い出すだけで地獄が甦ってくる」
本当に嫌そうな顔したのでこれ以上聞くのはよした。
『、蔵馬と飛影と一緒に魔界の妖魔街に行ってくれんか』
「何、突然」
『今度の霊界探偵の指令だ』
「いや、指令の内容言いなよ。それともアレか、今朝から妙な虫飛んでたけど、それに関係するの?」
『その通り。妖魔街の四聖獣が人間界の移住権を叩きつけてきてな。結界を解けば虫を操っている虫笛を渡すと言っているが』
「結界なんて解いたら最後じゃない。で、幽助にその虫笛を壊しに行けと」
『左様。幽助一人じゃ太刀打ち出来んからな。蔵馬と飛影にも免罪を可能という事で幽助に協力するように言ってある』
「道理で朝から飛影がいない訳だ。うん、わかった。私も行くよ。行ってやろうじゃん」
『頼んだぞ』
「了解」
確かに四聖獣となれば幽助には荷が重いだろうな。悪名高いし。
+
「という事で来てやったよ、幽助」
「・・・狐は神出鬼没と良く聞くが、お前もその類か?何が『という事』だよ」
「あらやだよ。そんな冷たくしなくてもいいじゃないか」
「蔵馬と飛影の登場に驚いたのにコレ以上驚かさないでくれ、頼むから」
あら酷いねぇ。折角協力してやろうかと思ったのに。
それに、コエンマから指令受けたのさっきだもん。急いで駆けつけたさ。
・・・む。
「あなた誰?」
「お?俺か?」
「あぁ、そういえばは知らなかったな。コイツは桑原。桑原、コイツは俺の幼馴染のだ」
「よろしく」
「おぉ。・・・浦飯、ちょっと」
「ん?」
およ、どっか行ってしまったぞ。
なんだ、二人して。
「オメーの周り、なんかかわい子ちゃんばっかじゃねーか。この野郎」
「はぁ?アイツの何処が可愛いんだよ。平気で男子トイレに入ってくる奴だぞ。それには妖怪だし」
「あのー、私、狐だから耳いいんだけど。幽助、アンタ後で便所裏来い」
「な、こえーだろ」
何が怖いよ。螢子の方が怖いっつーの。
「此処が入り口か」
えらい物々しい入り口さねー。門というよりトンネルじゃない。
虎穴に入らずんば虎児を得ず。幽助の言う通り、此処で警戒したところで何も進みゃーしないね。
だけど、幽助が言うと竹を割ったような無策に聞こえるのは何故だろう?
飛影のおかげで裏切りの門とか言う奴は突破出来た(あー、手が痛い)
全く、幽助の寛大さというか、あほさにはほとほと呆れるもんだね。
普通、前に殺されそうになった奴を頼んだり信じたりするもんじゃないよ。少なくても私はそうだね。
・・・ま、飛影を信じてたというのは私もそうなんだけどね。
「あ、そういや。お前も蔵馬みたいに人間としての名前や妖怪としての名前があるのか?」
「いや、蔵馬は南野秀一っていう子に憑依してしまったから2つ名前あるだけだよ。私の場合、名前に苗字が付いただけさね」
「ほー、よくわからんが、兎に角、はでいいんだな?」
「うん」
とても今から妖怪退治しに行くっていう緊張感がない会話。
ま、コイツに緊張感なんてあった方がちゃんちゃら可笑しいがね。
幽助の事は螢子を除けば誰よりも私がよくわかっている。
だって、
ずっと一緒にいて、
ずっと見てきて、
ずっと想って、
ずっとずっと、好きなのだから。
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まさかの幽助寄り。
(2009.4.10)