第四話:告





飛影から降魔の剣を取り返し、柄に入っていた解毒剤を螢子に飲ませたら額の目は消えていった。
ふと、隣を見ると腹に怪我を負った男が。というか、蔵馬が。


「ところで、お前は一体なんなんだ?飛影の弟とか?」
「そろそろ変身を解いたらどうだ」
「あれま。やっぱり蔵馬には敵わないな〜。ふ、まぁいいさ(ぽんっ)」
「あ、あ、あ〜!?〜!?お、お前、なんで・・・」
「やーやーやー、ぼたん、久しぶり〜♪」
「ほんと、久しぶりやね〜」
「オイそこォ!」
「なんだい。助けに来てやったのに」
「なっんで、が飛影だったんだよ!えぇ!?」
「ゴメンね、幽助。私、実は人間じゃなかったんだ、てへ☆」


ちょっとふざけてみたら、キモいとか言われて拳骨が振ってきた。


「いたーい。殴る事ないじゃないのさ」
「テメー、今更『人間じゃない』だ?じゃぁ、お前はなんなんだよ!」
「え、妖怪☆ちなみに蔵馬と同じ妖狐。ま、化け狐ってところさ☆」
「☆はいらん!」


ちょっとふざけたら、また幽助から拳骨が振ってきた。


「化け狐でも化け猫でもどっちでもいいわ!」
「いーたーいー」
「するってーとなんだ?お前、妖怪・・・なのか?」
「さっき言ったじゃん」


そう言ったら、幽助は全ての力を吐き出すかのような溜息を吐いた。


「8年間ずっと腐れ縁みたいに続いてたが、まさかが妖怪だったなんて・・・」
「あらヤダ何?妖怪の私とはもう付き合いたくないって言うの?」
「そうじゃねーけどよ、なんつーか・・・、どうも信じられないというか」
「アンタが死んだ時の方がよっぽど信じられないわ」










でだ。


「オイコエンマ。いい加減にするのも程々にしとけっつっただろ」
『キレるなキレるな』
「コレでキレなかった方がおかしいと思うよ!?」
『まぁまぁ。孤児を引き取るつもりで』
「私も人間界で言うところの孤児ですが!?」


えー、何故私がキレているかと言うと、コエンマが私に飛影の面倒を見てやってくれとの事。
いや、ホントふっざけんじゃないわよというか、呆れるというか。


『仕方ないだろう。今、霊界も人手不足で監視役がいないのだから』
「いや、知らねーよ。私、霊界の使い手じゃないし」
『飛影とお前の生活費、コッチから出してもいいんだぞ。月50万で』
「喜んで引き受けさせていただきます(キラン)」


この世は全て金さ。




「ほれ、飛影。ご飯作るから、その間にお風呂に入ってなさいな」
「・・・わかった」


あら、意外に素直に従う子ね。
てっきり『貴様の飯なんぞいらん』とか言われるかと思ったのに。
そんな事言ったら追い出されて、行く宛がないから飯に辿り着けんという方程式が頭の中で出来たのだろうか。間があったし。

飛影が風呂に入った事を確認し、脱衣所にタオルとさっき適当に買った男物の服を棚の上に置いておく。
台所に戻り、さぁ料理開始。
よし、今日はもんじゃ焼きにしよう。冷蔵庫にある材料で作れるし。
お好み焼きとかは家で作るより外の方が美味いんだよな〜とか思いつつ、フライパンで焼いていく。
一人分が出来上がったところで飛影があがってきたみたいだ。(頭ぺたんこだ)(かわいい)


「あ、飛影。どう?服の着心地は」
「・・・でかい」
「あらら、アンタ見た目より結構細身なのねぇ。とりあえず飯食いなさい、飯」
「ふん、余計なお世話だ」
「まぁまぁ、もんじゃ焼きでも食べて」
「もんじゃ焼き?」
「あら、知らない?この辺でよく食べられているのよ」
「人間界の事なんぞ知らん」
「それもそうか。ま、いいから食べてみなさいよ。丁度出来上がったとこだから」


そう言って、飛影をテーブルの椅子に座らせ、前にもんじゃ焼きが乗っかった皿と箸を出してやる。
・・・箸、使えるかな?
と思ったが、使えるみたいで、何の戸惑いもなく箸を持った。


「・・・(もぐもぐ)」
「どぅ?」
「悪くない」
「そう。それは少なくても不味くは無いって事ね。良かった」
「・・・(すっ)」


お、なんか無言で空になった皿を差し出してきたぞ。
おかわりって事なのか?ごちそうさまなのかどっちだ?


「もう無いのか?」
「え、あ、おかわりだったの。食べ終わったのかどっちかなと思っちゃったよ」


どうやらすこぶる気に入ってくれたようで、結局4枚も食べちゃった。
言葉に出さないけど、結構嬉しかったりする。
いやだって、人様にご飯作るって事、なかったし・・・。


「食い終わったぞ」
「人間界ではそれをごちそうさま≠チて言うんだよ」
「知るか」
「あー、そうですか。じゃ、食べ終わったお皿はあそこの流しに置いてちょうだい」


と言ったら、コレもまた意外。素直に従ってくれたじゃないか。
なんかもっと自己中というか、オレ様的な奴かと思ってたけど、案外いい子みたいだ。
もしかしたら、家事の仕事の一部を与えたら本当にやってくれるんじゃないかと思うぐらい。
・・・よし、試しにやってみるか。


「ひ、飛影〜。出来ればそのまま皿も洗って欲しいな、なんて」
「わかった。・・・が、どうすればいいんだ?」


うわ、マジで聞いてくれた!
だが、どうやら飛影さん、皿洗いという物が知らないみたいだ。
よし、此処は私が教えて覚えさせよう。


「いい?まず、このスポンジにこの洗剤を染み込ませて、泡立てて・・・」




後に飛影から『世話になるからには何かはしないとな』と意外にも律儀な言葉を聞く事になるのでした。









  





飛影がもんじゃ焼きを好きになった理由。
(2009.4.10)