第十二訓:髪型一つで人の印象は変わり過ぎ、だと思う
「あーもー・・・」
総悟(って呼んで良かったんだよね?)の所為で顔が熱いぃぃ・・・。
『かわいい』なんて、おじさんおばさんぐらいにしか言われた事ないよ、多分。
なのになのに・・・!真顔で同い年に『かわいい』!?調子狂うっつーの。
いや、褒められたから悪い気はしてないんだけども・・・(ごにょごにょ)
「あっ、ちゃん!」
突如、呼ばれた声に振り向くと山ちゃんが。
「もー、探し回って・・・あれ、顔赤いよ?熱あるの?」
「!、なんでもない!」
「そう・・・?まぁ、いいや。それよりちゃん。治ったんならコッチに来てよ」
「なに?」
「髪、ずっとそのままだから切らないと」
「あ、切られたんだった」
しかも刀でばっさりと(絶対、切れ毛だらけだよ)
チクショー、生まれて前髪しか切った記憶ないっつーのに、よくも・・・。
でも、心機一転するにはいいかもしれない。
シャキチョキ
「あ、そうだちゃん」
「んー?(髪がァァ)」
「『山ちゃん』ってーのやめてくれない?赤渕メガネ思い出しちゃうから」
「んじゃー、なんて呼べばいいの?」
「名前でいいよ」
「えー、あのネガティブな名前ー?」
「言っとくけど、うちの親はネガティブな理由で俺の名前決めた訳じゃないから」
「ネガティブネガティブー」
「・・・バリカンで剃るよ?」
「ぎゃー、すいませんっしたー」
退なんて、なんか本当にネガティブな事しか思い浮かばないよ。
親は一体、どういった由来で名付けたのかしら?
数十分後(チーン)
「・・・・・」
「ギャハハハハハ!モノホンのキノコヘアーだぜィ、こりゃ」
「ゴメン・・・。それが一番マシな形なんだ。・・・許してね」
「・・・まぁ、それはそれで可愛いんじゃねーか?」
気休めは止せよコノヤロー!!
チクショー!何がキノコヘアーだバカヤロー!
もうやってらんねー。
「ケッ」
「あ、拗ねちゃった・・・」
まぁ、チンピラ共に髪刈られた訳だし?切る前よりマシなんだし?別にいいんだけどさ〜、
なんつーか、腰まであった髪がキノコヘアーになったというのがショックと言うか。
「兎に角、明日からお前は総悟の隊の隊員だからな。俺達の仕事は絶対に気ィ抜けてはいけない。わかったな」
「質問でーす」
「なんだ」
「あそこで寝てんのとミントンやってるのは気ィ抜けてないんですか?」
「・・・テメー等ァ!ナメてんのかコラァァァ!!」
・・・一気に不安になっちゃった。
でも、ちゃん頑張るぞー(ファイ、オー)
+
じっくり思い出してみると、碌な始まり方じゃないな。
「・・・どーしてこう育っちまったかなぁ・・・」
「なんスか、取り返しつかないような言い方して」
「取り返しつかねーよ。俺か?俺の育て方が間違ってたか?」
「あっはっは。いいじゃないですかー、将来の子育てに役立って☆」
「役に立ってねーよ。つーか、嫌だっつの」
てかその前に、アンタに人生の生き方を教えてもらった事なんてないんだけど。
自分でもさ、こんな男勝りな性格に育ちたかぁなかったよ。
でも、あんな男の魔窟で3年も過ごしたら性格にも革命が起こっちゃうよ。
「けど、ちゃんもいい年頃なんだし、何かと興味あるものあるんじゃない?」
「!いたんだ、退」
「今来たとこ」
「興味かぁ・・・。・・・家庭菜園?」
「貧乏くさっ。つかそれ、趣味じゃないの?」
「どーせあたいは家庭菜園しなきゃ生きていけない環境で育ってたわ」
「そーいうのじゃなくて、もっとこう・・・。女の子なら服とかさ」
「・・・別に」
「うん、格好を見ただけでわかる」
「じゃー、・・・何?近頃の若者は戦国乱世並の乱れって聞いた事あるけど」
「何処で聞いたの。んじゃぁ、恋とかは?好きな人とか」
「好きな人ー?ゴメン、皆同じように見える」
「・・・色んな意味で大丈夫か?お前」
「俺、普通に俺と同じぐらいの年頃の娘は彼氏の一人や二人いると思ってやした」
「ほー、お前はいるのか。私はいないけどな」
「・・・最近、団子屋の娘が気になって―――― 」
「あれ、沖田さんでも人並みに異性(ひと)を好きになるんですね」
「なんでェ、それ」
あれ。
総悟、好きな人いるんだ、へぇー・・・。
・・・・・。
珍しい3人組が話しているのを見てると、私だけ取り残された感じ。
何よりも、総悟に好きな人がいるなんて意外で。
いや、年齢で見たら好きな人が一人二人いたって可笑しくない歳。
え、じゃぁ、異性(ひと)を好きになった事のない私は遅れてる?
『コイがしたい』と思ってた日があったが、一向に出来る様子がない。
そもそも、恋愛に早い遅いとかあるのかな?
もしあるとしたら、それが私よりもっと若い子がするのであれば、私は遅れてる事になる。
というか、このままだと異性を好きになる機会なんてない。
どうやったら人は他人(ひと)を好きになるんだろう。どうしたらいいんだろう。
あれ?ちょっと待て。それ以前に私、恋なんてした事なかったから、好きになるって何?
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恋を知らないちゃん。さぁ、どう転ぶのか(ベタベタ話注意)
(2007.8.22)