第十訓:怖い時は泣き叫んだっていいんです





「よっ、はっほっ」
「・・・何してるのォォォ!!ちゃんんんん!?」
「あ、山ちゃん、おはよう」
「おはようじゃなくてェェェ!」


柔軟体操やら逆立ちやらしてたら、山ちゃんが入って来た。


「昨日まではあんなに痛がってたのに!何!何が起きたの!?というか、大丈夫!?」
「質問は一つだけにしてよー」
「あ、うん・・・。とりあえず、身体は大丈夫なの?」
「うん、ほら(トタタタタ)」


部屋内を小走りでグルグル回る。
ある意味奇怪な行為に山ちゃんは目を丸くしたまんま。


「治ったよ、山ちゃん!」
「・・・御飯にボンドかけて食べてるの?君」
「んー、コレのおかげだと思う」


懐から取り出したものを山ちゃんに見せる。


「・・・ニボシ?」
「貧乏生活で御飯も食べれないよ。毎日ニボシポリポリ当たり前だった」
「(単純な身体・・・)の割には背伸びてない、ねごっ!!」
「うるせェなチクショー」


人が気にしてる事をさらりと言った山ちゃんを一殴りし、このでっかい屯所とやらを歩き回る。





途中、山ちゃん達と同じ黒い珍しい服を着た人達が物珍しそうに私を見ていた。
そして、なんかあれよあれよと言う間に十数人に囲まれてしまっていた。
怖そうな人もいるけど、ちゃんはもっと怖い体験をしたんだ(負けない!)


「誰、この子」
「知らね」
「(負けないもん、負けないもん、負けないもん、負けないもん)」
「つか、男?女?女の子だったら嬉しい」
「ロリコンだったのか、お前。俺的には男に見えるけどなー」
「(負けない、も・・・)うぇ・・・」


やっぱり怖いものは怖いんだよバカー!!


「え゛え゛!泣き出しちゃったよオイィィィ!!」
「お前だろ!お前がそんな厳つい顔してっから・・・!」
「な、何をォゥ!」
「ふぇぇー・・・」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!お前がロリコン発言すっから怯え切っちまってんじゃねーか!」
「素直に認めて何が悪い!」
「思いっきり引くわァァァ!!」
「わぁぁぁああぁあぁぁぁぁ!!」
「!やべっ、本格的に泣き出しちゃった!」
「お前がデケー声出すから!」
「お前がロリコン発言すっから!」
「お前が厳つい顔するから!」
「お前が!」
「お前が!」
「お前が!」


次々と聞こえてくる男達の声。
ちょっとだけ見上げると、厳つい顔でケンカしている。
それが更に怖くなって、不安になって、大声を上げて泣いてしまう。
こんな事なら、勝手に部屋出てうろつくんじゃなかったよ・・・。




「なんの騒ぎだ、オイ」
「あっ、副長ォ!ちょっと子供がいて、泣き出して・・・」
「子供?・・・あ、」
「ぎゃあぁぁあぁぁぁぁああぁん!!」
「・・・どうした、オイ」
「っぶえぇぇー・・・」


ちょっとだけ聞き覚えのある声に顔をあげると、昨日お話した瞳孔のおにーさんが。
昨日だけとはいえ、会った事ある人に会った私は少しだけ落ち着いて、涙を止めようとする。
周りの人達は気まずいような表情をしているが、私にとってはまだ怖かった。


「どうした、コイツ等になんかされたか?」
「そんな!言いがかりですよ、副長!」
「明らかにお前等見て怯えてんじゃねーか」
「だから、それはコイツがロリコン発言を・・・!」
「いや、お前の厳つい顔がだな・・・!」
「コイツ等がデケー声出したから・・・!」
「煩ェんだよ。黙っとけ、テメー等は。で、何があったんだ」
「っく・・・、あの、いきなり囲まれて・・・怖くなって・・・っ」
「・・・あー、確かにお前の目線から見たら怖いよな。よりによって顔の濃い集団だし」
「アンタに言われたくないんだけど!」


この人達、顔濃いんだ。
いや、爽やかフェイスでも数十人に囲まれても怖いよ、きっと。
っかしいなー。グラサン黒スーツには慣れてるはずなのに・・・山ちゃんぐらいしか顔見てないからかな。


「・・・(抱っこして、抱っこ抱っこ)」
「本当に15か、お前(とか言いつつ抱き上げ)」
「つか副長。その子誰ですか。それに、男ですか女ですか」
「コレでも一応女らしい」
「・・・(コレでも?一応?らしい?)」
「へぇー、女の子ですかー」
「出た、ロリコン」
「うるせェェェ!!」
「てか副長。アンタ抱っこしてますけど、ロリコンッスか、もしかして」
「違うわァァァァァ!!」
「・・・ポリゴンってなに?」
「お前は知らなくていい」
「兎に角、あのおっさんに近付いたら食われちまうから気を付けなって事だよ」
「食われ・・・!人間食べるの!?てか、美味しくない筈だよ、私のお肉は!」
『・・・・・』




純粋過ぎて眩しい・・・!!(←その場にいる人達の心の声)




「うん、ゴメンね、おじさん達が悪かったね・・・(なでなで)」
「いつまでもその心キープしといてね(なでこなでこ)」
「知らなくていい事は聞いちゃダメだからね(わしわし)」
「?は、はい」
「お前等近付くんじゃねーよ。臭ェ」
「ひどっ!!オアシスに近付きたいのに、自分だけ一人占めか!」
「臭いってんなら、お前の煙草とマヨの方が臭いわァァ!」
「よーし、今言った奴、そこに直れ。介錯してやる」
「・・・臭い(ぎゅぅ)」
『!!(ガーン!)』


なんか、父上と同じ匂いがいっぱいあって、耐え切れず瞳孔の肩に顔(鼻)を押し付ける。
押し付けた時に匂った煙草もアレだったが、父上の匂いよりはマシだった。


「あ、なんスか、その勝ち誇った顔。めっちゃ腹立つんですけど」
「嫌がられたな、テメー等」
「うわー、調子付いてね?まだ加齢臭してないからって」
「あと5年の命なのにねー」
「え、死ぬんですかっ?」
「あ、ゴメン、そういう意味じゃないんだ」
「?」



「てかお前、昨日までリハビリして痛がってたくせに、こんなところまで一人で来て大丈夫なのか?」
「(ポリポリ)大丈夫です、治りました」
「どっから出て来た、そのニボシ」












  





土方がロリコンになったきっかけは此処です。
(2007.8.15)