此処いらでちょいと昔話でもしませんかえ?
第八訓:思い出話には茶菓子と共に
最近、かぶき町で多い放火事件。
が、警察と言えども私達は対テロ組織のようなもの(たまに・・・いや、しょっちゅう上から面倒な仕事を押し付けられてくるが)
だから、この放火事件は管轄外だ。そりゃ、犯人が目の前にいたら捕まえなきゃいけないが。
『かぶき町で起こっていた連続放火事件の犯人が本日昼頃逮捕されました』
草野アナと花野アナが司会をしているニュース、『THE EDO』(捻りのねータイトル)
「あー、放火犯捕まったんですってー」
「そーか。そりゃ良かったな」
「うゎー、なんか見るからにオタクっぽい」
「燃えると萌えるをかけたんじゃねぇかィ?」
「えー、なんかベタ過ぎー」
煎餅片手にマヨネ王子(あ、年齢的に王子はキツイかな)とサド王子と一緒にニュースを見る。
放火犯の犯人の顔は四角型に四角いメガネ。目は虚ろだ(銀さんといい勝負かも)(なんの勝負かはわからないが)
次から次へと流れるニュースをボケッ見ていると、土方さんの口が開いた。
「そういや。もう3年経ったな、此処(真選組)に来てから」
「あー・・・、アンタにとっては『もう』かもしれませんけど、私にとっては『やっと』ですね」
「そうか?やっぱ年重ねると一年が短くなって仕方ねーな」
「おやおや、自分が年寄りだと認めたって発言ですねィ、今の」
「別にそれほど年取ってねーよ。お前等も若いからって調子に乗ってたらF1カー並の速さで一年が過ぎっからな」
「そうですかー?あんま変わんない気がしますけど」
「だから、それが調子に乗ってる証拠だよ。20過ぎたらヤバイからな、全てにおいて」
「アンタの犯罪履歴が?」
「うわー、軽蔑しますよ、土方さん」
「18の時点でお前等はやばかったな、全てにおいて」
ヤバイからって・・・成人しちゃうから?
そりゃぁ、成人しちゃったら飲酒喫煙出来る反面、犯罪面でも厳しく見られるし、完璧社会人だ(私はもう社会人だけど)
でもなんかわかんないんだよなー、そこんとこ。子供と大人の境界線っての?
成人はさっき言った通りだけど、18過ぎたらエロ本とかそういう類のもん読めるようになるし、普通免許も取れるようになる。
18,19が10代半ばの思春期の次くらいに難しいかもね。
んー・・・、飲酒もした事あるし、今更っちゃぁ今更か。
「3年かー。ある意味で長く、ある意味で短かかったです」
「ほー」
3年前、私は目の前にいる二人に拾われた。
+
父上は厳しかった。剣の稽古に置いては。
ツメが甘かったら竹刀でそのまま叩き付かれ、娘だの息子だの子供だのと容赦しなかった。
厳しい反面、優しい面もあるんじゃないかと思われるが、そりゃ無い。
優しいや厳しいどころではなかった。だって、オセロしかやってくれなかったもん。
けど、そこまで子供に無関心な訳ではない。本当に無関心だったら、私達は今頃死んでいるし。
たまに抱き締めてくれる、食事も食べさせてくれる、危ない事から護ろうとしてくれる。
只、遊びはあんましてくれなかったなぁ・・・って。それこそ、さっき言ったオセロぐらいしか。
接し方がわからないのか・・・と、私は勝手に思っていた。
口数は・・・多かった。
「(ちょいちょい)」
「なぁに?父上」
「こないだ家に来た九兵衛君?妙とはどういう関係?ベタベタしてたけど」
「えーと・・・こ、こんにゃく者」
「こんにゃく?」
父上は微妙な汗を流した(あれ?変な事言った?)
それより、九兵衛は・・・ま、いいや。
「うん、こんにゃくしちゃったんだよ。美味しそうだよね」
「あぁ、こんにゃくは美味いな。低カロリーだし。・・・って、違う違う」
「何が?」
「もしかしてちゃん。こんにゃく≠カゃなくてこんやく(婚約)≠カゃないの?」
「あ、それそれ」
「そっかー。嫁の貰い手が無さそうな妙に婚約者とは安心したぞ。も新八も相手が見つかると安心していけるんだけどなァ」
「いく≠チて何処に?」
「さぁな。・・・それより、妙ちゃんと九兵衛君はどうなのよ、上手く行ってんのか?」
この通り、決して無口ではなかった(特に人の恋には人一倍興味があるじゃじゃ馬)
「父上は母上をどーやってくだいたの?」
「くだく≠カゃなくてくどく(口説く)≠セから。つか、何処で覚えて来たの」
「で、どうやってくだ・・・口説いたの?」
「んー、まぁ、アレだアレ、ハハハ。も大きくなったら金持ちと結婚するんだぞー」
「(はぐらかされた・・・)金持ちってどんな人?」
「背がちっちゃい男がデカイ会社の社長とかになる可能性大だ」
「ちっちゃくて社長だけど、会社もちっちゃかったら?」
「ダメだダメだ。ちっちゃくっても金持ちな社長じゃないとな。そういう人の玉の輿になれよ」
「(またのたま・・・?)うん、がんばる」
またのたま(股の玉)になる・・・。なんか嫌だな、すっごく。
父上にも新ちゃんにも股の玉付いてるけど金持ちじゃないな。どうやって見極めつけるんだろ。やっぱり身長?
股の玉より私、コイがしたいな。・・・でも、
「コイ≠チてなぁに?」
わからなかった。
ある日、父上が倒れた。
病院行く金も無い、医者を呼ぶ金も無い、薬を買う金も無い。
ずっとずっと寝たきりの父上。それに構わずやってくる借金取り(アレも社長らしいよ)(確かにちっちゃい)
もう、長くない。
「ゲホッ、ガハッ!!」
「「「父上!」」」
最後に言葉を吐いて、父上はそのまま静かに亡くなった。
それは本当に静かに眠りに就くような深い深い眠り。
『父上が死んだ』だなんて、幼い私達に受け入れるにはあまりにも大きかった。
大き過ぎて、妙は無理矢理笑い、新ちゃんは泣く一方。私は悲しみを越えて涙も流せないと言った状況か。
「コラ志村ァァァ!!いい加減、金払わんかィ!」
「ちょっと待ってください!・・・父上は亡くなりました」
「なんやくたばったんかィ。まぁ、ええわ。親父が払えないなら子供が払うっつーのが義理やろ?」
「しかし・・・!」
「それか、この道場売っ払うかやな」
「ッ・・・わかりました、働いて返します。それまでお待ちください」
「妙。私達に出来るの・・・?」
「・・・仕方ないでしょう。なんとか働けるのは私達2人だけだもの」
「・・・うん」
「・・・(僕は無力、か)」
出来る限りバイトを掛け持ちして、その少ない給料で借金返しつつ、3人で生活した。
とても苦しかった。屋根のある家があるだけマシだが、本当に苦しかった。
生活費も苦しかったが、何よりスケジュールギチギチに詰め込んだバイトが身体に応えた。
寝る間も惜しんで、ひたすら働き続けた。
酷く寝不足が続いて、私も妙も不眠症になってしまい、もう生きたデク人形みたいな感じだった。
新ちゃんも九兵衛も休め休めと言っていたが、もはや体が働く事に執着していた。
・・・いや、働く事より、
「泥棒ォォォ!!」
金に執着していたな。
恐喝、援交などはしなかったが、スリはやっていた。
純粋に金が欲しいと言えばいいじゃない。悪い事は悪い。それくらい、わかる。
なのに、なんでやってしまってるんだろうねェ・・・。
誰、か、止めて、助け――――。
「こんクソガキャァァ!!」
「新ちゃん!!」
嗚呼、ダメだ。眠い。
頭を踏みつけられてるにも関わらず、目は虚ろになっていって、眠くなっていく。
目の前が霞んで行く。隣で新ちゃんが踏みつけられてるのが僅かに見えるのがやっと。
姉の声さえ雑音で耳が痛いし、頭に響く。
「そのうっとーしい髪、刈り取ってしまえ!」
やめて、助けて、やめてやめてやめてやめてやめてやめろ。
ドカッ!!
助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助け、・・・。
← ■ →
思ったよりも長くなったので区切りを。
(2007.7.8)