「・・・ん」
長く感じた接吻から開放され、深く息を吐く。
なんか、頭がふわふわしてる。
けど、そんな意識でもはっきりと視界に映る凍矢の姿。ただ、いつもと違うのは凍矢の更に後ろに見えるのが天井である事。
どうしてこうなったかはわかんないけど、気付いた時にはこうなってて、あまつさえ接吻されていた。
そして、今に至る。
「凍矢・・・」
呼びかけてみたが、いまいち声が出せてない気がする。
なんだろう、なんか違和感がある。
けど、凍矢はそんな私にお構いなしに、薄く笑みを浮かべてから行為を続ける。
・・・そういう行為はあるって事は知っていたけど、いざ自分が、それも好きな人にやられると思うと羞恥心が脳いっぱいに広がる。
思わず抵抗しようとして伸ばした手を難なく掴まれ、頭上に縫い付けられた。
見上げた顔は相変わらず笑っていたけど、悪い気はしない。寧ろ、安心する。
怖くない訳じゃない、不安がない訳じゃないけど、凍矢だから安心して身を委ねられる。
とは言っても、やはり羞恥の方が大きくて、不安で泣きそうになる。
すると、そんな私に気付いたのか、また接吻してくれた。
「(・・・あれ?)」
その時感じた違和感。上手く言葉に表せないけど、いつもの接吻と違う感じ。
でも、よくよく意識してみたら、接吻だけじゃなく、至る所に違和感を感じる。
なんだろ、と考えながらも、凍矢が空いてるもう片方の手で体をなぞっていくのがわかる。
・・・わかってるんだけど、またしても違和感。
いや、違和感と言うより・・・、そうだ、何も感じない。
なんと言うんだろ、されてる事は頭では理解出来てるのに、それを感じる事が出来ない。
接吻されてる感触も、凍矢が触れてる手の感触も何も感じない。
あれ、なんだろこれ。
な、んだ・・・ろ・・・。
「・・・ろ。・・・い、・・・きろ」
ん・・・、何。
「いい加減起きないか、」
「ぅ、ん・・・?」
「やっとお目覚めか」
「むくろ・・・。・・・えっ、何、夢・・・?」
「オイオイ、まだ寝ぼけてんのか?」
え、さっきまでのって全部夢?
・・・確かに、触られてるはずなのに何も感じないってのはおかしいよね。
うそ・・・、私があんな夢・・・。そう思うと、一気に顔中に熱が広がった。
「一体どんな夢見てたんだ?」
躯が少しにやついた顔で聞いてくる。
「ど、どんなって・・・」
思い出すだけでも凄く恥ずかしくて、ホント穴があったら入っていたい。
躯が聞いてくるから、更に思い出しちゃって、尚更恥ずかしい。
かぁっと更に顔が熱くなる。火が吹きそうなくらい。
いやでも、正直言って残念な気もするけど・・・。
「欲求不満か」
「えっ?欲求不満・・・?」
「夢で見た事がされたくてそんな夢見たんだろ?」
「えぇ!?ち、ちが・・・!」
言葉では否定してるけど、図星だった。
まだそういうのした事ないけど、それが普通なんだよね?凍矢もそういうの、する気配ないし。
「ところで、お前達が付き合ってどのくらい経つ?」
「え?えーと・・・、一年と半年経ったかな?」
「・・・真面目通り越して堅物だな」
「何?なんか言った?」
「いや。・・・ちょっと不憫に思ってな(どっちにも)」
躯は少し呆れながらため息を吐いた。
どうしたんだろ、躯ってば。
「、忠告しとくぜ。あーいうタイプの男はな、急にプッツンと来るんだ」
「何それ」
なんか訳のわからない忠告を言い残して、躯は部屋から出て行った。
急にプッツンって・・・どういう事なんだろ。
いや、今はそんな事よりも、
「・・・ダメだ」
凍矢に会いたくてもさっきの事がぶわっと浮かんできて、恥ずかしくて会えそうにない。
落ち着いたら・・・って、落ち着けるのかな、私。
でも、いつになったら現実に起こるんだろう、と心の隅で思っている事が否定出来ない私がいた。
いつの間にか一年半経ってたらしいんです、この世界では。
(2010.11.1)
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