移動要塞、百足。
その要塞の中でパタパタと走る一人の少年。
「、いる!?」
「あれ、修羅。こんなところまでどうしたの?」
「に会いに来たんだ」
走ってきた少年、修羅は嬉しそうに話す。
歯の浮くような台詞でも、修羅が言ったら微笑ましく思う。
「そう。でも、連絡してくれりゃ、私がそっちに行ったのに」
「僕が行った方が早いかなと思って。待ってると長く感じるじゃん」
そう思ってすぐ行動に移せるのはまだ子供だからであって。
その純粋さに心が震える。
先日、修羅に突然告白されただが、相手が子供だからか、平然と話をしている。
「ていうか、此処ってなんか趣味悪いー」
「そうだね。でも、見慣れれば平気なものよ」
「ふーん」
廊下を歩きながら喋ると修羅。
修羅は自分の国と大分違う造りをしている要塞をキョロキョロと見渡す。
「ねぇ、の部屋もこんな感じなの?」
「んー、最初来て部屋を渡される時に激しく抵抗したから、普通の造りの部屋だよ、多分」
「楽しみー」
修羅は心底楽しそうに話す。
自分の想い人の部屋にいけるんだから無理もないだろう。
「着いたよ、修羅。此処が私の部屋。まぁ、なんもないけど折角来たんだし、ゆっくりしてってね」
「うん!」
扉を開け、中へ招き入れる。
その部屋は先程が言った通り、極普通の造りをしている部屋であった。
一人部屋にしては十分すぎる広さに修羅は感心の声を上げる。
「凄い!僕の部屋より広いよ!」
「そうなの?黄泉も案外ケチね」
「躯に造ってもらったの?」
「つーか、普通の造りにしてとしか言ってないのに、無駄に広い部屋造っちゃってさ、躯ってば」
修羅は真正面にあるクイーンサイズのベッドに飛び込む。
ぼふっという音とともにベッドに沈む修羅の体。
「ふかふかー」
「そういえば、このベッドも躯が勝手に置いたんだっけ・・・」
「もコッチに来てー」
「はいはい」
は言われた通りベッドに近付き、腰掛ける。
すると、腰掛けたの膝に修羅は頭を乗せる。
「修羅?」
「僕、膝枕大好きなんだ」
「そう。でも、固くないかな?私って筋肉質だからさ」
「んーん、パパより柔らかいよ」
「アイツ(男)と比べられてもね・・・」
「でも、一番柔らかいのは螢子かな」
「あら、螢子ちゃんに会った事あるんだ?」
「うん。興味本位で人間界にいる幽助のところに遊びに行ったらいたんだ」
ごろごろとの膝の上で甘える修羅。
はそんな修羅の頭を撫でる。
修羅はその手を心地良く感じながら目を瞑る。
端から見れば、母親に甘えている息子、と言ったところか。
「ん、・・・。このまま寝てもいいかな?」
「ん?いいよ。ある程度経ったら起こしてあげるから」
「ありがと」
程なくして、安らかな寝息がの耳に届いた。
+
「で、黄泉があまりにも心配してたから探しに来てみれば・・・。何してんだ、そいつは」
「あ、黄泉に連絡するの忘れてた。何って、寝てるから静かにしてよ」
今頃癌陀羅では黄泉が息子の不在に心配で気が気でないだろう。
そんな黄泉を疎く思ったのか、渋々部下達(蔵馬含む)は修羅を探す羽目となった。
心当たりのあった凍矢がの部屋へ訪れると、案の定修羅がいたという事だ。
「つか、私も寝てた」
「よくそんな体勢で寝れるな」
「修羅。修羅、起きて。迎えが来たよ」
「(誰が好き好んで迎えに来るか)」
修羅の名を呼びながら軽く体を揺さぶる。
その柔らかい刺激を感じたのか、修羅の体が反応した。
「う、んん〜・・・?・・・?」
「起きた?修羅」
「ん〜、眠いよ・・・」
「なんか、黄泉・・・、パパが心配してるみたいよ。もうそれはうざいくらいに」
「え〜・・・。ともうちょっと一緒にいたいよ」
ぎゅぅ、とに抱き付き、胸に顔を埋める修羅。
そんな修羅の頭を撫でる。それを面白くなさそうな目で見る凍矢。
「(やっぱり柔らかい、の胸。小さいけど)」
「修羅。気持ちは嬉しいんだけど、やっぱり帰らないと」
「う〜」
「今度は私が(凍矢に会うついでに)行くからさ、ね」
「・・・わかった」
修羅は渋々から離れ、凍矢がいる事に気付いてないのか気付いてないフリしているのか(恐らく後者)、部屋を出る。
「やっぱ子供って可愛いね」
「そうか?」
「鈴駒はちょっとませてるからアレなんだけど、修羅は純粋で子供らしいわぁ」
「・・・・・」
あれを純粋な子供だと言うのならもう何も言うまい。凍矢はそう心の中で呟いた。
凍矢は気付かれぬよう、ひっそりと溜め息を吐いた。
修羅ばっかやんけ。
(2010.7.30)
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