「んで?正直なところ、お前等どこまでいったんだ?」


とある部屋の一室で珍しい二人組が茶を飲んで寛いでた時、幽助がなんの前触れもなく問うた。
不意に問われた言葉に茶を飲んでいた凍矢は、一旦湯飲みから口を離し、二、三度瞬きをしながら幽助の方へ向いた。
その眼差しからして、あまり理解が出来てないように見える。
少し呆れながらも、幽助は笑い混じりに言葉を言い直す。


「だからよ、お前と、どこまでいったんだよ。付き合って大分経つだろ」


あぁ、その事か、と凍矢は理解した。
と同時に幽助をまるで汚らわしいものを見るような目で見る。
そんな凍矢の態度に少しムッとはしたものの、負けじと更に問い出す。


「なぁ、どうなんだよ〜」
「教える義理はないな」
「いいじゃねーか、内容まで詳しく聞く訳じゃないんだからさ」


少ししつこい幽助を不快に思ったのか、それ以上凍矢は口を開かなかった。
開くとすれば、茶を啜るために湯飲みに口付けるだけで。
場所を変えるかと思ったが、変えようとしたとこでこのしつこさならば付いてくるだろうと思い、その場から動かなかった。
短気な幽助は凍矢が無視しているのに腹を立て、藪から棒に言い放つ。


「まさか、何もしてねーなんて事ねーわな」


ぴく、と凍矢の体が震えた。
それはとても小さな反応だったが、彼は見逃さなかった。


「え・・・、マジ?」


カマをかけたつもりで言った事が嘘から出た真になってしまった。

それからというもの、何故か部屋全体に少し重苦しい空気が漂っていた。
こんなはずじゃなかったのに、と幽助は思った。

恋愛経験なんて皆無に等しい二人が付き合って、いざやるとなったらどんななのかが興味あっただけなのに。あわよくば、それをネタにしてからかってやろうかと思っただけなのに、なんなんだ、この妙に重苦しい空気は。地雷を踏んじまった俺が悪かったのか?大体、なんでそういう進展ねーんだよ、コイツ等。それに、心無しか、凍矢の背中に哀愁が漂っているようにも見えるのは気の所為か?いや、気の所為じゃないよな。
・・・とりあえず、謝っておこう。


「い、いや、悪かったよ凍矢。聞いたりなんかしてよ」
「・・・別に、なんとも思ってない」


じゃぁ、なんなんだその悲壮感は。
男は背中で語れと言うけれど、こういうのは語って欲しくなかったよ。
幽助はもうどうすればいいのかわからず、ヤケっぱちになって叫んだ。


「だーっ、もう!テメーそれでも男か!なんでスパッとやっちまわねーんだよ!女みてーな面してねーでよぉ!」
「・・・・・」




しばらくおまちください。




「マジすんませんでした。凍矢君は立派な男です。女顔とか言ってマジスイマセンデシタ」
「フン」


最大級の地雷を踏んでしまった幽助は血みどろになりながらも、畳の床に頭を擦り付けるような勢いで土下座をして精一杯詫びる。
凍矢は氷の剣を仕舞い込んで、不機嫌を露にしながら再び座布団の上に座る。
そして、おもむろに口を開く。


「・・・邪魔が入るんだよ」
「あ?」
「お前も含めて何か裏工作でもしているんじゃないかってほど邪魔が入るんだよっ」
「ええ?俺、邪魔したっけ?」


それから、凍矢は実際に邪魔されたケースをいくつか述べ上げる。
その中には確かに幽助も入っており、顔を青ざめながらすまん、と再三謝った。


「ここでは主に陣と修羅に邪魔され、向こうでは主に躯に邪魔され・・・散々だな」
「あぁ」
「それにしてもお前、一年半もの間キス以上してないとか・・・、俺だったら我慢ならねぇ」
「お前と一緒にするな」
「へーへー。紳士気取ってんのはいいけどよ、はなんも言って来ねーのか?」
「は?」
「いや、は?じゃねーから。オメー、そんなんだとマジで取られるぞ、陣あたりによ」


どういう意味だ、という視線を軽く受け流し、幽助は言葉を紡ぐ。


「邪魔邪魔って、結局逃げてんじゃねーか。を傷付けると思って、それを怖がって逃げてるだけじゃねーか」
「黙れ・・・」
「大切に大切に想うのはいい事だけど、ここいらでシルシでも付けとけよ。繋ぎ止めとくためにもな」
「・・・・・」


言うだけなら簡単だろうが、凍矢の呟きは幽助の耳に届いたかはわからない。
顔を若干赤らめながら俯いてしまった凍矢を見、ふぅ、と息を吐いた。
真面目というか、堅物というか、うぶというか・・・。


「まぁ、は一筋縄じゃいかねーだろうな。なんせ、超が付く程のド天然だから」
「幽助・・・。俺はどうしたらいいんだ」
「だから、スパッとやっちまえよ」


いやだから、言うだけなら簡単だろうがっ。
そんな空しい心の呟きを知ってか知らずか、下品な笑い声上げている幽助を恨めしく睨む。


「・・・ま、少しは協力してやっか」
「なんか言ったか?」
「いや、コッチの事だ。ま、その時のためにしっかりとイメージトレーニングでもしておくんだな。ケケケ」


その言葉に思わず想像してしまい、顔を真っ赤に染め上げてから八つ当たり半分、幽助に湯飲みを投げ付けた。
鈍い音が響き、呻き声をあげながら額を押さえて蹲っている幽助を尻目に逃げるように凍矢は立ち去っていったのであった。







彼女が例の夢を見ていた頃の男達の会話ってとこです。
しかし、ことごとく私は男キャラに対して純情さを求めてるようです。
いや、そんな事よりも夜のテンションって恐いですね・・・。前の話を書き上げたその夜にコレを書き上げましたもん。
(2010.11.1)