「ひーえーいー!(ガバッ)」
「抱きつくな、離れろ」
「ひっどい!折角、パトロール一緒なんだからさ!」
「凍矢にしとけ」
「や、飛影の方が抱き付きやすい。子供に抱き付く感じで」
「貴様、燃やすぞ」
「上等だコラァ。いっちょやるかコラァ」








って、飛影に勝てる訳ないじゃん(私って学習能力無いのかしら)


「とうや〜」
「見るからに酷い有様だな。何があった」
「パトロール中に飛影とケンカ」


あ、溜め息吐かれてしまった。
何さ、凍矢だってたまにボロボロになるくせに。


「アレは修行してるんだ」
「あれ、声に出てた?」


それ言ったら、私も修行みたいなもんだもん!飛影に鍛えてもらってるもん!
よし、今度は声に出てなかったらしい。
全身に火傷や怪我を負っている私に、手当てしてやるから来いと言う凍矢。
それに素直に従う。






「いだだだだ!ちょ、沁みる!ていうか、痛い!?」
「大人しくしてろ(ぐりぐり)」
「いやいやいや!なんか悪意持ってやってる!?ぐりぐりって何!」


普通、消毒は優しくするもんなのに、めっちゃ荒い扱いされてるんだけど!?
そういえば、人から手当てしてもらえるのって久し振りだな(最近じゃ、カプセルだもん)



手当てなのに、何故か激しい攻防が続いたが、やっと終わった(凍矢って意外と荒い?)
チクショー、同じ氷系統妖怪の雪菜ちゃんとえらい違いだよ(飛影とも全然似てないしね!)
未だ痛みが残っているところをさすりながら、軽く凍矢を睨む。
本人は気付いてないのか、気付いてないフリしているのか、黙々と片付けをしている。


「負けるケンカは売るな、そして買うな」
「その時はなんか勝てそうな気がするんだもん」
「結果、負けてるだろ」


図星を的確につかれ、黙り込んでしまう。


「凍矢のイケズー」
「訳わからん事ほざいてる暇があれば少しは鍛錬しろ。もうじき魔界統一トーナメントが始まるんだからな」
「いーっ、だ。飛影に相手してもらってるからいいもん」
「(飛影飛影、て)」


チクショー、奴の事を思い出したら闘志が燃えてきたわ。
勝てないってわかってるんだけど、負ける気にもなれない。
生まれ持った才能の差なのかね、コレが。
ていうか、私、凍矢と戦った事ないけど、どっちが強いのかな?やっぱ凍矢?
ぶっちゃけ、男より強い女ってどうなんだろ?
あ、でも、鈴駒より流石ちゃんの方が強かったよね。


「何の話だ」
「!いや、独り言!(また声に出てた)」


あと、酎より棗さんの方が強いし、飛影より躯の方が強いし、幽助よりも螢子ちゃんの方が強い。
結構アレだねー・・・。なんつーか、男が情けないのかな?
そういえば、凍矢も剣技出来るんだったよね。氷の剣だけど。
接近戦も遠距離戦も出来ちゃうなんて凄いよねー。
ほっそい体してんのに。






凍矢にしとけ






ふと、何気なく言った飛影の言葉を思い出した。
飛影に抱き付くのは、本当に子供に抱き付く感じで心地良い。
相手はウザかったのか、矛先を変えさせようと思って言ったんだと思う。
てか、凍矢にしとけって、そ、そんなの無理無理無理無理!
だって、凍矢は飛影と違うんだもん!(背丈は同じぐらいだけど)
そりゃぁ、抱き付きたくないって言ったら嘘になるけどさ・・・。
でも、飛影と同じ感じに抱き付けないよ〜。

ちら、と凍矢に視線を移す。何やら怪訝そうな顔でコッチを見ている。
え、何、その顔。


「何、その顔」
「一人百面相しているお前の考えている事が全くわからなくてな。どうかしたのか?」
「ん、なんでもない」


そう言ったら、ポンポンと頭を叩くように撫でられた。
なんだか嬉しくなって、思わず顔が綻んでしまった。
それに、とても凍矢が愛しくなってきて、さっきまであんなに悩んでたのに、思わず抱き付いてしまった。
凍矢は驚いたのか、少し体を強張らせている。
細いけど、程よい筋肉を持っていて、冷たい体。
胸に耳を当てると、ドクドクと速く打っている鼓動が聴こえる。
私も負けないくらいなんだけどね。もう、心臓がヤバイ。


、そろそろ離れろ」
「うん」


本当はもうちょっと抱き付いてたかったけど、私も心臓がヤバイし、素直に離れた。
我ながらなんつー行動を、と少し後悔。
離れた後に見た凍矢の顔は、彼らしくもなく赤くなっている(私も、かな)
それがちょっぴりおかしくて、思わず笑ってしまうと、照れ隠しなのか、デコピンされた。

体も言葉も冷たいけど、優しくて照れ屋な凍矢がとても大好き。







奥手な凍矢はまだまだ先に進めそうにありません。
ちなみに、手当てシーンで扱いが荒いと勘違いされた彼ですが、実は無性にイライラしていたからなんです。
飛影にヤキモチ妬いて。
(2010.3.24)