特に、この感情だけはなくしたいと、何度思ったか。
けど、それは無理に近くて、私じゃ、もう手遅れで―――
6 あの時の気持ち、嘘じゃなかった
「ぎーん、すきー」
「おれもだー」
「ホント?だったら、けっこんしようよ、ぎん」
「いいぜ。おとなになったらな」
「やくそく。やぶったら、いっしょう、あまいものなんてたべさせないからねッ」
「じょうとうだァ。そっちこそやぶったら――― 」
パチ
・・・夢、というより、過去の私と銀。
銀にふざけて告白して、ふざけてプロポーズしたのは何歳だ。・・・七歳あたりか。
忘れていたのに、今になって夢に出てくるとか・・・
本当、覚えてなかった。いや、覚えてたけど、凄く曖昧で薄っすらとしか。
ハッキリ言っちゃえば、ふざけてプロポーズした事ぐらいしか。
当時の銀は、私が結婚の約束を破ったら何をするつもりだったのか、思い出せない。
でも、凄く怖かった気がする。泣いた気がする。――― 覚えてない。
今もし、試しにプロポーズして、残酷な言葉を言われたら絶対、泣く。この世の終わりと思わせるほどに。
だって、まだ好きなんだもん。わからない奴だけど、好きだもん。
けど、銀はきっと私の事、なんとも思ってないよね。
「銀」
「ん?何だ、沙知。今、刀の手入れ中なんですけど」
「手入れ中でも話、聞けるでしょ」
「まぁな。で、何」
「昔さぁ、銀にふざけて告白した事あったよね。七歳あたり」
「ん・・・?あ、そうだったな。そんな事があったっけ」
思い出したかのような口調だ(忘れてたのか)
「『結婚しよう』とか言ってたね。でも、無理だよね」
「じゃぁ、アレか。俺は甘い物食べられないのか?うわー、拷問だぜ」
「・・・銀は?銀はあの時、なんて言ったの?もし、破ったら・・・」
「確かなァ・・・ 」
・・・・・
そう、だったんだぁ。
『おまえのこと、きらいになって、えんをきってやる』
「こう言ったら、お前泣いたしな。あの時はホント、慌て、た――― 」
「・・・(ボロボロ)」
「って、オイィィ!!何泣いてんの、何泣いてんの!銀さん、悪い事言った!?」
銀が慌ててる。涙、止めなきゃ。
何さ、昔の事じゃん。今は関係ないじゃん。
なのに、止まらない。怖くて怖くて、止める術を知らない。
「ゴメ・・・、んでもない、か・・・ら・・・」
「なんでもなくないだろ?俺、何か言ったか?」
「ち、が・・・」
違うよ、銀。私が勝手に傷付いて、泣いてるだけ。
決して悪くないから、大丈夫だよ。
・・・ううん、大丈夫じゃない。
もし、銀が私を嫌いになったら、それだけで世界の滅亡、私の滅亡。
ヤダよ、嫌いにならないで。
私の中で叫んでいる、私が叫んでいる。
ゴメン、銀。なんでもないから、なんでもないから――― 。
・・・思えば、この戦争が終わったら、私達はどうなっちゃうんだろ。離れ離れになっちゃうのかな。
ヤダよ、ヤダよ。皆といたいよ。変わらないでよ。
銀、銀。いなくならないで。ねぇ、お願い。我が侭な私のいう事を聞いて、お願い。
だって、あの時の気持ち、嘘じゃなくて本当だから。