血は不味い。







5 さんきゅ、





ぬちゃ、



気持ちワルい。

今日は怪我してないから、早いとこシャワーでも浴びたい。

刀の血も拭わないと錆びてしまうし。



目の下に付いた血が重力に従って下に流れ、口の中に入る。

・・・不味い、とてつもなく不味い。

人間の血なら耐えれるけど、天人の血はとてつもなく不味い。変な色した血液を持っている奴もいる。

見てるだけで吐き気がしそうなのに、その血を口に含んでしまったとなると尚更、だ。

天人でも中には賢い奴もいて、自分の血液を毒にしてしまう奴だっている。

今、私の顔や体に付いてる血は違うと思うけど(匂いでわかる)











――― ・・・」



もう、ポロポロ落ちていく。

天人の命も、仲間の命も、私の希望も、色んなものが落ちていく。

ポロポロと落ちていく。ポロポロポロポロ・・・

既に死んでいる敵に刀を振り上げたが、突然の絶望感に力なく下ろしてしてしまった。

カラン、と乾いた音が響く。刀を落としてしまった。

空から察して、夕刻から晩ってところか。

それが余計に私を失望感で満たす。

私と一緒だった人達は、そこら辺にいる天人と一緒に寝ている。もう、起きない。

所々、地面から黒い煙が出ている。焼かれてしまった、かつての仲間がそこにいる。灰の姿で。

周りには誰もいなくて、生き残っているのは私だけ。

あぁ、何でこんなに強いんだろう。

それを誇りに思った事は一度だってない。その強さに思う事は虚しさ。



「・・・晋助」



怪我してる。大怪我だ。

今、この場に晋助はいない。彼は別の隊を率いているんだ。

なのに、何故わかるって?何故だか、私には他人が重症を負っている事がわかってしまう。

でも、それは極稀であって、特別な意味などないし、予言者でも、予知能力者でもない。

兎に角、晋助が怪我してる。片目がもう使えないだろう。

私は刀を拾って、その刀に付いている血を軽く払った後、彼等のいるところへ駆け出す。























「・・・晋助は?」



帰って最初に辰馬に会ったので、とりあえず聞いた。



「左目が負傷じゃ。・・・もう、使えんぜよ」

「そ」



我ながら淡白していると思う。

けど、仕方ないと思う。だって、仲間の死をさっきまで見ていたんだから。

――― 見殺し。

そんな言葉が横切るけど、不可抗力だ。あんだけの数、どうにもならない。

・・・そう思う私は何処か、間違っているのだろうか?





























「晋ちゃ〜ん、あ〜ん」

「・・・・・」



何、その目。何だ、その蔑んだ目は。

明らかにコイツ、私を『バカの中のバカだ』ってな目で見てきてるよ。

銀と辰馬だったら悪ノリしてくれんのに、コッチはノリの悪い男だ。




ちゃん特製卵粥にケチつけようっての?」

「いや、卵粥自体どうでもいいが、テメーの存在は否定する」

「酷ッ!!」

「大体、手足は動くんだから、食わせてもらわなくても自力で食べれる」

「可愛く無いよ〜、晋ちゃ〜ん・・・」

「・・・(パクパク)」



あ、無視られた。粥、取られた(ブロークンマイハート)

でも、こうして素直(?)に私の作ってくれたお粥を食べてくれる事は嬉しいけどね(ニヘ〜)



「・・・何笑ってやがる。気色悪ィ」

「晋助は私を苛めて楽しいか。お前、私が傷付かないとでも思ってるのか」

「思ってる」



ハッキリ言われちゃったよ。どうしてくれるんだ(いや、私の問題なんだけどね)

粥を作ったのが間違いだったのか、えぇ?



「晋助は二週間、私の家事の手伝い」

「マジかよ」























「まじィ」

「血の味が美味いって言う奴なんているかよ」

「正論を言われるとなんかバカらしくなってくるよ。特に銀に言われると」

「テメッ、俺が傷付かないとでも思ってるのか」



昨日、私が晋助に言った台詞とそのまんまだよ。



「ぎ〜ん〜、気持ち悪い〜、痛い〜」

「お前、俺が気持ち悪い奴や痛い奴みたいな言い方すんなよ」

「え、そのつもりだったんだけど」

「え、何この子。反抗期?反抗期?」



嘘だよ。

勿論、返り血が気持ち悪くて、負った傷が痛い。

口直しにアレが食べたいなァ。



。手ェ出してみろ」

「?」



唐突な事を言って来た銀を不思議に思いつつ、素直に手を出す。

すると、ころん、と手の平の上に少し白く濁った透明でいびつな形をした玉が五つほど。

コレって・・・



「好きだろ、氷飴」

「・・・覚えてたの?」

「んなもん、忘れる方がどうかしてるって(ゴリゴリ)」



あ、もう食べてるんだ。

でも、丁度食べたいと思ってたんだよね。昔、銀がよくくれた氷飴を。



「銀」

「ん?」

「さんきゅ、」