何をしても無駄なのに、感情が邪魔してしまう。
何もかも、
4 人を傷付けるこんな感情などなくなってしまえ
「コタ、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ」
嘘付けィ。・・・なんて思うところなんだろうけど、私から見ても大丈夫そうだ。
だって、私だってコレくらいの怪我、いつも負ってるし。
コタや銀に『傷跡が残ったらどうするんだ』っていつも怒られるけど、もう慣れちゃった。
あと、コタに『ヅラ』って呼ぶ時も怒られるけど。
いくら斬っても斬っても、出てくるのは血飛沫と死体だけで、何も得る事は無い。
寧ろ、変な錯覚を起きる。血の匂いなど特に。
たまに留守番などしていると、『皆は大丈夫かな』とか『誰が死んだのかな』なんて、余計な事を考えてしまう。
『死んだのかな』なんて、最も思っちゃいけない事なのに。皆を信じていないって事なのに。
でも、私達、戦争に行っている者は皆、そう思っている。
――― 夢にまで出てくる。
そう、今夜は眠れないのだ。
明日は私だって戦に参戦するから、十分な睡眠を取ってないといけないんだけど、夢見が悪すぎて寝付けられない。
ギシギシと音を鳴らしながら廊下を歩いていると、縁側に月の光に反射されて光っている銀髪の男が見えた。
あれは銀だ。
「ぎーん」
「お、。子供は寝る時間だぞ?」
「子供じゃないもん。銀より一個下だけだもん」
「どうした?眠れんのか?」
「ん、そんなとこ。銀はどして?」
「ん?月が綺麗だなー、て」
「それだけ?」
「・・・それだけ」
相変わらず、わかんないって言うより、掴めない奴。前も言ったけど。
確かに今宵の月は綺麗。満月、じゃないけど、それでもキラキラと光ってて綺麗。
真っ黒いところに輝く小さな星達よりも惹かれるのは、月。
まるで、星が私達で、月が何だろう・・・なんか、とてつもなく憧れているもの。例えば、明るい未来、とか。
「ねぇ、銀。明日、私とペアだよね」
「そーだなぁ。だから、早く寝ろよ、」
「だって・・・寝れないもん」
只でさえ暗い部屋なのに、更に暗くしちゃったら・・・怖いもん。
いや、今までその部屋で寝てた訳なんだけど、今日は何だか特別怖い。
何を・・・何を恐れてる?私は。
「ぎーん」
「何だ?」
「・・・ねぇ、いつまでこうしてなくちゃいけないの?」
「・・・・・」
「銀、銀・・・ッ」
今にも泣きじゃくりそうな私。
そんな私を抱き締めてくれる銀。昔から変わらない、体温。
「・・・いつもみたいに言いな。溜まってるもん、全て」
「怖いよ、銀。何が怖いって、天人でも斬るのが怖い、仲間を失うのが怖い、・・・何が怖いのか、もうわかんないくらい、」
銀は良く、幼い頃から私を抱き締めながら、私の中に溜まっているものを全て吐き出させてくれる。
それはもう、かれこれ十年以上は経つ。
十年間、私は銀の体温から離れた事なんて無い。
銀の体温に余計に泣きながら、私は弾丸トークのように喋り続けた。
「ねぇ、銀。どうして?どうして、私達生き物は皆、感情を持ってるの?なくしたいよ」
「バカヤロー。感情がなくなったらなァ・・・」
「なくなったら?」
「・・・誰がお前を止めるんだよ。今にも崩れ泣きそうなお前を」
「いや、私の感情をなくしたいの」
「もし、お前が感情をなくしたら、――― 」
聞こえない、聞こえない。
ねぇ、銀。何を話してるの?もう、聞きたくないよ。
だって、お説教なんてかったるいじゃん。している奴が銀でもさ。
あのね、マジで思ってる事なんだよ。願っている事なんだよ、感情をなくしたいってのは。
だってだって、あるだけでも無駄じゃん。人を傷付ける感情なんて。
ねぇ、誰か、助 け て よ 。