それは一枚の紙が事の発展を及ぼした。



「・・・銀」

「あ?」



相変わらずやる気の無い目が此方を向いている。

因みに銀はソファーの上でジャンプ読みながら鼻クソほじくってる(ほじりながら本読むんじゃねェェェ)

でも、それはどうだっていい。それより、



「何食べてるの」

「何って、チョコに決まってんだろーが」

「あのね、銀」

「んだよ、さっきから」

「アンタ、かなり重症だってね」



そういったら、銀が顔を上げた。



「おぉよ。なんたって、銀さんはが厭らしい格好で誘ってる夢を毎晩毎晩、」

「何それェ!!」



アンタどんだけ溜まってんのォ!

ハッ!・・・いや、此処は冷静に冷静に。



「じゃなくて、糖尿病よ糖尿病!」

「寸前ですー。決して重症じゃありません!」

「この紙に書かれた血糖値は糖尿病予備軍では重症だー!」

「何処で拾った、んなもん!」



そこらへんはホニャラララ。

全く、銀は只でさえ血糖値が高いのに、更に甘い物とってるんだからっ。

いや、甘党だから血糖値高いんだろうけど。

でもさ、御飯にまで小豆かけて食べる事はないじゃないのォ!?(こないだ、一緒に定食屋に行ったら小豆丼が出て来た)

今なんて、チョコだけならまだしも、更にいちご牛乳飲んでるし!オーシット!!

もー、此処まで来たら重症だ。土方さんと同じ、味覚の方で(この二人、何気に似てる)

大体、私もなんでこんなに低落してった銀を再び好きになったのかな。

昔の銀と比べすぎだけど、比べざるを得ないほど、銀は落ちぶれたというか、変わった。マイナスの方へ。

だって、この年でプーで糖尿病寸前でジャンプに夢中って・・・おっさんなんだかダメな少年なんだかはっきりしろってんだ。







「いや、甘い物を食べたいっていう気持ちはわかるよ。でもね、限度というものが――――



言い終わらないうちに銀は耳を塞いだ。

何故か目も瞑っているので、それよしに飛び蹴りを食らわした。



「いでェッ!!ちょっ、今のは強烈!なんか出てない?口からなんか内臓的なもの出てない?」

「こんぐらいで出るか!つか、何その内臓的なものって!」



銀はソファーごと倒れている。

大丈夫だよ、白夜叉はこんな技、屁とも感じないでしょ。

それとも何?此処数年間、だらけた生活を送ったから弱くなったとでも?

いや、昔鍛えた筋肉があるから大丈夫だろう(自問自答)











「お前、神楽といい勝負なんじゃねーの?(むぐごくむぐごく)」

「アンタはチョコ食べるかいちご牛乳飲むかどっちかにしな」

「いーや、両方取る(ごくむぐごく)」

「・・・ねェ、お願いだからさ、甘い物とるなとは言わないけど・・・控えてよ」

「あ?何、突然」

「・・・別に。知らないんなら私も知ーらない」

「オイオイ、気になるじゃねーか。なんなんだよ」

「銀ってさ、鈍いよね」

「は?」



鈍い以前に糖尿病がどれほど恐ろしいのかわからないだけなのかな。

私がいくら言ったって、結局は変わらないのかな。

銀のためだけじゃない、遠回しに私のためでもあるのに、なんでわかってくれないのかな。

・・・ヤバ、泣きそう。



「〜〜〜ッ、もうヤダ!こんな男とは別れてやるー!」

「え゛え゛え゛え゛!!爆弾発言んん!?」

「もういい!じゃなくて嫌!土方さんとヨリ戻してやるー!!」

「ちょちょちょ、ちょっと待てェェェ!!」



銀が私の腕を掴む。

きつく、きつく。慌てている言動とは裏腹に。



「ちょっとちょっと、爆弾発言もいい加減にしなさいよ?何があったの」

「過去形じゃなくて、現在進行形で起こってます」

「わかんねーな、お前って」

「わかんねーのはお前の頭だバカヤロー」

「いや、ホント訳わかんねーから。何、銀さんが悪い事した?」

「・・・微妙に」

「何よ」



あ、そろそろ苛つき始めてるな。



「・・・糖分、」

「は?」

「銀、私がいくら言っても糖分、控えてくれない」

「んだよ、それだけの事で別れるなんて・・・」

「それだけの事じゃない!」



思わず大声を出してしまった。銀は軽く怯んだ。



「それだけの事じゃないよ、銀・・・だって、」

「だって、何?」

「・・・目、見えなくなるんでしょ?」

「は?」

「知らなかった?糖尿病って、酷くなると目が見えなくなるの。失明よ」



力が緩んだのを見計らって、腕を静かに振り解く。

あぁ、ダメだ。こんなしみったれた話、好きじゃないのに。

昔はしみしみしてたけどさ。



「目、見えなくなったら、私も見えなくなるでしょ?・・・それが嫌なの」

、」

「銀だって嫌でしょ?今まで色があった世界から急に真っ暗な世界になるのは」

「・・・悪かった」



そう言って、銀はいちご牛乳とチョコを閉まった。



「コレからは気を付けるし、の言う事もなるだけ聞く」

「なるだけって何」



ふふ、と笑ったら銀の大きな手が私の頭を覆った。そのまま撫でられる。

うん、なんでかは未だ知らないけど、私は銀が好き。それがハッキリしていればいいや。

でも、



「銀さんね、恋の病ではもう重症なの。薬も効かないの。でも、ちゃんの体で癒されそう」

「癒されるのは別の場所だろォォォ!」

「いや、もう無理。ちょっと暴れん坊将軍になっちゃってるから。足軽じゃないから、銀さんのナニは」

「バカーッ!変態ーッ!公然わいせつ罪で逮捕ーッ!!」

「うお、何っ?拘束?手錠で拘束プレイ!?」

「何わくわくしてんだー!!」



・・・でもやっぱり、コイツの何処が好きなんだろうと思って、また好きになって、何で好きになったかの繰り返しが続く。

それにね、銀。私も重症なんだからなコノヤロー。











3.重症、つける薬なし