「銀ー!!なんじゃこの部屋はァーッ!!」
ソファで呑気にジャンプを読んでた銀をフットスタンプを食らわし、部屋を片付けさせる。
私は見てるだけにしてやろかと思ったけど、銀一人では片付けられない酷さなので、手伝う。
ったく、どうやったら此処まで酷くなるのかしらッ。男って色んな意味で不潔。
時々、怠けようとするので、その時はシャイニングウィザードを食らわす。
「ちょっとちょっとさん。銀さんがいない間に何プロレス技極めてんの」
「最近、プロレスにハマってんの。総悟君が女子プロ好きだから」
「アイツはサディスティックな楽しみ方してんだぞ」
「承知してるっての」
続き、アイアンクロー、ジャイアントスイング。
「ギャァァァァァァァァ!!」
下では
「・・・朝っぱらからうるせぇんだよ」
「ッタク、近所メーワクモ考エテホシイデスネー」
「ホラ、さっさと手ェ動かす!ジャンプは捨てないんだったら隅っこ!捨てるんなら縛れ!エロ本も縛れ!」
「エロ本も隅っこ」
「捨てろ!!」
いや、男だから持っててもいいのよ。
でもね、普通、彼女の目に付く位置に放っておく?私が男だったらない。
せめて隠し持ってたんなら、そんな事言わないわよ。
「んだよ、ちゃんはいっちょ前にヤキモチかぁ?」
ニタニタとした顔で銀が私に尋ねる。
・・・確かにちょっとしたヤキモチだけど、それを奴には悟られたくない訳で。
「はぁ?何言ってんの。モテないからってエロ本の山に埋もれてるアホの坂田さん」
「いーたーいー!!てか、いつまでそのネタ引っ張るの!」
「大体、18歳未満のお子様が働いてるんでしょ?その子達に絶対、悪影響もたらすから」
「大丈夫だー。アイツ等は見た目は愛らしいかもしれんが、中身は腹黒だ。丁度、お前んとこのサド王子のような」
「総悟君くらいの腹黒さなら大丈夫よ〜」
「何、ってM?」
「アホか!」
張り手。バッチーン!といい音が室内に響いた。
「オイオイ、なんかこのままじゃ銀さんがMになっちゃうじゃないの」
「丁度いいんじゃない?Sにしごかれて精神的に鍛え直すってのも」
「SなんだかMなんだかわかんねーよ、お前」
「どっちでもないから!てか、アンタの脳内SM!?」
人をSと言ったりN・・・じゃなかった、Mと言ったり。私はSM嬢か。
ホンット、昔はこんなんじゃなかったのに。どうしてこう変わってしまったのだろ。
確かに昔もエロかったよ。エロかったけど・・・、
「おぉ、グラビア雑誌が大中小揃ってんじゃねーの。こんなん買ったか?新八か?」
・・・エロかったけど、こうなんていうの、発言・・・じゃないや、あからさまじゃなかったような気がする。
目の前で大中小のグラビア雑誌を読み返してる奴の背中に跳び蹴りしたいとこだけろ、耐える。
だって、此処で怒ったら変な誤解されそうだもん。ヤキモチ妬いてるっていう。
だから、私は黙々と部屋の片付けに専念する(裏腹な気持ちを紛らわす為に)
ガラッ
「ただいまー。って、ぉわ!いつものゴミ屋敷が小綺麗に!」
「あ、おかえり」
「うゎ!え、あ、ハイ、ただいま」
なんだぁ、そんなに私が珍しいかメガネっ子。
「ただいまアルー!」
「おかえり」
「おぉ!銀ちゃんの愛人アル!」
「愛人って神楽ちゃん・・・すみません。えーと、銀さんの恋人でしたよね、確か」
「肩書きではそう」
「ちょ、肩書きって何ー!?」
「二人とも若いわね〜。若いのに働いてるの?偉いね〜」
「はぁ、」
「名前教えてアル!私、神楽言うヨ!」
「オイ、三人して総無視ですかコノヤロー」
私のちょっとした失言(?)に銀は焦ったが、皆して無視。つか、最初から存在無しみたいな?
だって、この子達にゴミ屋敷呼ばわりされた事からダメだよ、色々と。
あぁ、ついでに神楽ちゃんって言ったっけ?銀の愛人には絶対ならないから☆
「そうだね、こないだはドサマギだったもんね。私、。まぁ、見ての通り真選組で働いてるの」
「僕は志村新八です」
「え、何、志村けん?」
「新八です!」
「もう、めんどくさいからけんで」
「めんどくさいっつーか、覚えようともしませんよね。流石、銀さんの恋人」
「いや、うちの二番隊隊長と名前被るんだよね」
「それだけかよ!」
まぁまぁ、只単におちょくってみたかっただけだよ、新八君。
私は銀みたいに適当じゃないからさ。
「それより、御飯出来てるよ」
「え!コレ、さんが作ってくれたんですか!?」
「一応ね」
「っほーい!御飯アル!やっぱり、日本人は米に限るヨー!」
「たんと召し上がれ」
おや、この家の主が先程から姿が見えないゾ。
何処行った、あのダメ男。
二人がパクパクと御飯を食べてる間に寝室の襖を開ける。
・・・その部屋はどよ〜んとか何かの効果音が付きそうなくらい、暗い。真っ暗。総悟君の腹より。
そんなに皆から無視されたのがキツかったのかな。
「銀。銀の分の御飯もあるからさ、食べてよ」
「・・・ケッ、どうせ俺はダメ人間代表だよーだ」
「何捻くれてんの。そんなの皆わかってる事だよ☆」
「否定しないどころか、後ろに☆を付けたな」
『肩書き』がよっぽど効いちゃったのかな。
でも、アレは冗談で言ったんだって、銀だってわかってる筈なのに。
まぁ、真には受けてないと思うけど、軽くショック受けたのかな。
銀ってコレほどのネガティブだっけ?
「でも、本当に不思議なんだよなー。昔の俺ならともかく、今の俺と恋人になるがさー」
「微妙に自惚れだ、この人。『昔の俺ならともかく』って(ププー)」
「真剣に聞けって。なぁ、。何で俺な訳?なら選り取り見取りじゃん」
「なんで・・・」
って聞かれても困るなぁ。だって、私は正直に銀が好きなんだもん。
それは昔の恋を引き摺ってたからかはわかんないけど、好きには変わり無い。
何処を好きになったかと同じ質問だよ、コレは。・・・わかんない。
銀の全てが好き、だなんて言えるほど、私はそこまで銀の事知らないし。
昔から掴み所がなくて――――
「スキアリ」
「――――」
静かに触れたもの。銀の唇。
銀が、私にキスしてる。
そう、それは本当に音もなく、極自然に、ゆっくりと重ねられた。
襖を開けたまま、二人は御飯に夢中(な筈)
見られたか見られてないかわからない状況でキスしてる私達。
それは何分、いや何秒か後、離れた。
目の前に映ったのは悪戯大成功っ的な感じの銀のニタリとした笑顔。
・・・昔から、掴み所の無い男の笑顔。
「銀ちゃーん!ー!何してるネ?早く御飯食べるヨロシ!(モゴモゴ)」
「神楽ちゃん!口に物入れたまま喋らないって何回言わすの!」
「煩い!黙れメガネ」
「何をををを!!」
「・・・ったく、オイコラテメー等。その飯は全部銀さんのだ」
「何アルかそれー!」
「の作ったもんは俺のもんっていう鉄則があんだよ」
「いや、それいつ掲げたんだよアンタ!」
「今」
・・・掴み所がない、言い換えればわからない男、それが銀。
そして、その人は私の恋人。
私は寝室から出て、居間に戻る。
「、顔赤いネ。風邪アルか?」
「ホントですね。仕事厳しいんじゃないんですか?」
「!あんチキショーに何もされてないアルネ!?」
「(あんチキショーって誰)うん、誰にも何もされてないよ。でも、疲れが溜まってんのかな」
嘘だけどね。思いっきり、サボってるからね。
この赤い顔は勿論、銀と先程交わした口付けの所為。
当の本人はコッチを見るなり、例のニタリとした顔で見てくる。・・・してやったりな顔だ。
「ちゃーん、動悸・息切れ・微熱だったら風邪じゃない別の病だから銀さんのところで一緒に寝なさい(ニタニタ)」
「ヤダ。何されるか知れた事じゃない(この野郎)」
「そうですよ。こんなダメ人間のところで一晩だけでも寝たらさんまでダメになってしまいます」
「オイ、そこのダメガネ。本当にメガネ取って只のダメにしてやろーか?」
何されるか知れた事じゃないってのも本当だけど、それ以外に銀と一緒に寝たら、
「微熱が何だってんだ!こちとら、真選組副長補佐してんだかんな!」
「ゲッ、副長ってあのマヨラーの事でしょ?それの補佐してんのォォォ!?」
「給料いいんだかんな!」
「何!補佐って事は○○したり、ピーしたり、×××したり色々するんでしょ!?」
「なんか勘違いしてるゥゥ!あと新八君!神楽ちゃんの耳塞ぐのもいいけど、出来れば君の耳もォォォ!!」
私は新八君の耳を腕で塞ぐ。
塞ぐ、というか顔を抱き締める感じ。
「オイィィィ!!それ、新八の頭にお前の胸当たってんじゃねェのォ!?」
「ギャァァァ!なんか汚染された人がいるゥ!この子達未成年んん!!(ギリリリ・・・!!)」
「あだだだだ!!メガネ!メガネが割れるゥゥゥ!!」
「新八ィィィィィ!!後で俺と場所チェンジ!」
「お前!後でまたアイアンクローしてやっからな!」
下に住んでいる大家さんが怒鳴りに来るのはあと数分後。
銀と寝たら、微熱が高熱になるよ。
2.動悸・息切れ・微熱