いい天気ー。
絵にも描いたような綺麗な青空に白い雲、鳥まで飛んでいる。
心地良い風に思わずうとうとしてしまう(仕事しなきゃ)
でも、昨日あんまし寝てないしなー。
このまま寝てしまおうか、どうしよう?
けど、やっぱり働かないとと思い、んーっと背伸びすると、後ろから声をかけられた。
「なんや。こないなとこでサボりか?」
「違います、ちょっと気持ちよくてうとうとしてただけで」
「確かに今日は気持ちのえぇくらいえぇ天気や。その気持ちわかるで」
「でも、寝てしまったら店長にどやされるんで、今ちょっと喝入れてたとこです」
そうやなぁ、ワイなんてこないだ・・・と話し始める河内さん。
私は関西に対して悪いイメージしかなかったから、最初は河内さんを警戒していた。
昔、関西弁で怒鳴られた事があって、それでかもしれない。
けど、同じ関西弁でもなんか柔らかく感じるようになってからは段々と打ち解け始めた。
今では河内さんのおかげで関西の人に対して悪いイメージはつかなくなった。
「と河内〜。こんなとこでサボってちゃダメなんじゃよ」
「東君」
「サボってんちゃうで、休憩や」
「そうか」
東和馬君。新潟の魚沼郡出身で米農家の息子。
最初、なんで米農家の子がパン職人に?と思っていたが、次第にそんな事はどうでもよくなった。
東君とは年が同じだからか、話しやすくて好き。あの独特な喋り方も。
でも、恋愛で一番好きなのは茂君だけどね。
「せや。前からず〜っと聞きたいなと思ってた事があんねんけど」
「なんでしょう?」
「冠とは何処までいったん?」
一瞬、体が震える。
質問してきた本人はにやにやと厭らしい笑みを浮かべている。
「え、えーっとそうですねぇ、近くのショッピングモールまで行きましたよ、デートで」
「ちゃう!ワイが聞きたいんはそないなストレートな意味ちゃうで!?なぁ、東!」
「え、違うんか?」
私はわざとだったが、東君はストレートな意味で取ってしまったらしい。
「えぇか。ワイが聞きたいんはそういうのやのーて、あの冠がどないプレイするか聞きたいんや!」
「いやぁ!東君助けて!河内さんがエロい事聞いてくる!」
「なんじゃと!」
に何するんじゃ河内ー!とか言って、東君は河内さんに飛び掛る。
「何すんねん、東!」
「は冠のものなんじゃから、手を出したらダメじゃー!」
「(ものって、アンタ・・・)」
東君の言葉に苦笑する。
ていうか、河内さんがさっき言ってたプレイって、ふ、普通だと思うんだけど・・・(って、何言ってんの私!)
「なんか、面白そうな話してますね」
「し、茂く」
「河内さん。そんなに聞きたいですか?」
「聞かせてもらえるんやったら、聞かせてもらおうやないか」
そう言われた茂君は、そうですねー、と右手を顎に持っていき、考える素振りを見せた。
「じゃぁ、最近の話、というか昨日のでいいですか?」
「何やっとんねん!」
「何って、河内さんの想像しているものですよ」
「茂君!」
私は必死に彼を止めようとする。
けど、茂君はお構いなしに話し続ける。
「えーっと、昨夜は確か・・・、ピーをピーピーして、ピピーやって、ピィーという感じにでしたかね」
その可愛らしい顔からは想像付かない程の言葉を出した所為か、制限かかっちゃったみたい。
あらら、固まってますね、河内さん、なんていう声が聞こえたが、そんなのどうでもよかった。
東君はひよこの口になっちゃってるし・・・。
「いやぁ、改めて言うのもアレですが、昨日も可愛かったですよ、」
「も、もう知らない!」
両手で顔を覆い隠して逃げるように飛び出した。
顔に触れている手はとても熱く感じた。きっと真っ赤だろう。
恥ずかしさのあまり、目頭まで熱くなってきちゃった。
さっき茂君が言ったからか、昨日の事がフラッシュバックのように思い出してしまった。
蘇る記憶は鮮明で、頭から離れない。
次第に激しくなるキスに敏感なところを触れてくる茂君の指先と舌。
それに、あの華奢で引き締まった体と真剣な表情・・・、
いやぁ〜!!何思い出しているの私!
さっきよりもっと熱くなった顔冷まそうと、冷たい手を再び頬にあてる。
仕事どころじゃなくなった私は、そうこうしているうちに自室に着き、ベッドにダイブする。
ひんやりとしたシーツが心地良い。
さっきから頭を占めている昨日の茂君とのエッチな思い出を消すかの如く、別の事を思い浮かべようと必死である。
顔を更にシーツに深く埋め、火照った顔を冷ます。
「無防備ですよ、」
顔と頭の中が冷めかけ、油断していた時に頭上から声が降って来た。
驚き、うつ伏せにしていた体を反転させると、茂君の顔、が。
「しし、茂くん!ていうか、いつの間に・・・!」
「が部屋に入って十数秒後ぐらいですかね」
さっきの事があってか、茂君の顔がなんかエロく見えてしまう(うぅ、可愛いけどカッコいいよ)
ていうか、あ、あれ?
「あの、茂君。こ、コレは一体どういうこ、と?気の所為じゃなかったら押し倒されているような格好なんだけど・・・」
「気の所為じゃなく、事実そうなんですがね」
「ど、退いて退いてっ(心臓に悪い!)」
「・・・に一つ問題です」
「は、はい?(もしかして、正解したら退いてくれるのかな?)」
淡い期待を持ちながら、茂君の言う事に耳を傾ける。
「狼が羊を狙ってるとこを想像してくださいね」
「うん(ていうか、顔が近いから息かかる・・・!)」
「羊が食べないでって言ったとしても、狼はすんなり諦めますか?」
「あ、諦めない、と思う」
あれ、なんかコレって・・・、
「正解。で、今の状況、僕が狼で、が羊かな?」
「し、茂君がオオカミ・・・?」
「そうそう。だから、やめてって言っても無駄ですよ」
やだ、本当に狼に見えてきたよ、茂君が。
こんな可愛い顔で狼って、ギャップありすぎだよ、茂君。
「の所為で僕は仕事どころじゃなくなったんですから、責任取ってくださいね」
「・・・そ、それはコッチの台詞ですっ」
茂君に言葉攻めされたいと思い出来上がった代物。
ヒロインちゃんが超照れるっていうところも書きたかったんです。
で、コレを書く前に書いた奴があったんですが、没にしました。
けど、それはそれで載せないっていうのも寂しいので、良かったらコチラから御覧なってください。
(2010.2.21)
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