「陣と凍矢は苦手。特に凍矢!」
魔界、旧癌陀羅。
そこのとある建物の一室にて、ふてくされてる少女一人とそれを聞く男一人。
「まぁ、凍矢はアレとして、陣はどうして?」
「苦手なものは苦手」
「幽助と飛影は好きなのに?」
「幽助と飛影はいいの!」
少女の名は。因みに聞き手の男の名は蔵馬。
彼女は廊下を歩いていた蔵馬をとっ捕まえ、話し相手にしている。
それに付き合わされる蔵馬もいい迷惑だと最初は思ったが、今となってはどうでも良くなってきてるようだ。
寧ろ、今の状況を楽しんでいるようにも見える。
「滅茶苦茶だね、」
「だって苦手なんだもん・・・」
「ふーん」
ちらりと、蔵馬は不意に扉に視線を移した。
は疑問に思ったが、一瞬にして消え去った。
今日は第2回魔界統一トーナメントの抽選と予選が行われるのであった。
主催者の幽助はもちろん、他、3年前に出てた注目人物はほぼ全員今大会も出場する。
もちろん、も。
「っひゃ〜。今年もまたえらい集まったわねぇ」
「そうだな。ま、俺としては嬉しい限りだな」
「バトルマニア」
「うるせ」
今回の出場者は3年前より1.5倍ほど増えている。
己の強さを知りえないD級以下妖怪〜S級妖怪まで出場する。
因みにの強さはA級の上位といったところか。
「せめて!せめて予選だけは通過しますように!」
運も実力のうちである。
『選手、予選通過です!』
「ふ〜」
見事は予選を突破。トーナメント戦出場の切符を手に入れたのだ。
此処で前大会優勝者の煙鬼から開催の挨拶があり、トーナメント戦の日程も出場者に伝える。
出場者みんな万全の状態で戦えるように、2日後に第1回戦を行う事に。
今回も前回同様、自然式円闘場で試合する事となった。
ちなみに抽選のクジは今から引く事に。
「うぞ・・・」
抽選結果が出たトーナメント表を見ては唖然とする。
1回戦の相手が凍矢だったからだ。
よりによって苦手な凍矢が・・・。はそう思わずにはいられなかった。
「・・・・・」
一人沈んでるは、自分が見られている事に全く気付きはしなかった。
と、そんなのところに飛影が。
「ひ〜え〜い〜・・・。初っ端から凍矢とあたったんだけど・・・」
「それがどうした」
「S級妖怪にA級妖怪が敵うと思いますか!?」
「思わんな」
「ちょ!もうちっと優しい言葉かけてくれないの!?」
「俺に求めるな、蔵馬に求めろ」
「蔵馬いない!ついでに幽助も躯もいない!アンタだけでも慰めて〜」
「知るか」
服にしがみ付いていたを引っぺがし、飛影はさっさと行ってしまった。
一人残されたはただただ沈んでるしかなかった。
「でも、やるしかないか」
はようやく重たい腰をあげ、闘技場へ向かった。
『第1回戦第4試合、始め!』
「(あ〜、とうとう始まっちゃった!)」
が、お互い様子見なのか、開始されてから5分経っても動こうとはしなかった。
そのうち、が痺れを切らし、湖の方へと向かう。
もちろん、それを凍矢が追う。
「(・・・アイツに技を使われると厄介だな)」
凍矢は先回りをしようとしたがしかし、は湖の中へとダイブした。
「なっ」
瞬間、湖の水が一気に弾けたかのように波打った。
湖では波は起こらないはず。そう、それはの能力(ちから)だ。
は水の使い手。形の無い水で相手を攻撃する事や、自分を守る事も出来るのだ。
まさににとっての水は攻防一体の武器。
「もうこうなったら先手必勝!」
湖の水は溢れ、勢いを増して凍矢にぶつかる。
その半端無い水の量に凍矢は呑み込まれてしまった。
バシャッ
「え!」
呑み込まれた筈の凍矢が地上(空中)にいた。
どういう事かと、はあたりを見回した。
「(・・・凍矢め)」
が見つけだしたものは、水の一部が氷となってしまっているもの。
凍矢はどうやら、その氷を踏み台にし、跳んで水中から脱した模様。
水の勢いも治まりつつあった。
「ぷはっ・・・、凍矢!?」
敵を見つけようとするが、ところどころに氷が張ってあるものの、凍矢自身の姿がない。
「いいのか、そんなところにいて」
「え・・・?」
声のした方へ顔を向けると、妖気を放出している凍矢の姿があった。
そんな凍矢を見て、の血の気が引く。
「ちょ、ちょっと待って、凍矢・・・!」
「待たん」
ピキィ・・・ッ
の制止もお構いなしに、凍矢は湖の水を全て氷にしてしまった。
ただ氷を張らすだけではなく、水全部を氷に。
「ちょ、やだコレ、抜けない・・・!」
水の中にはいた。
その水を全部凍らせてしまったらは身動きが取れない状態となる。
「終わりだな」
「・・・ッ」
スッ、と凍矢はの首に手を回した。
ひんやりとした感じには思わず身震いする。
そのまま力を込めれば殺せるが、もちろん凍矢はを殺す気など毛頭無い。
首にかかってる手を払う事をが出来るはずもなく。
「ま・・・、参りました」
敗北を認めた。
『選手が負けを認めたため、凍矢選手の勝利です!』
審判が凍矢の勝利を宣言した。
次→
なんか長くなったんで、一旦切ります。
(2009.5.30)