「だー!ていうか普通、湖全部凍らす!?」
「お前は少しでも水があれば襲い掛かってくるだろ(ザクッザクッ)」
「そりゃもちろん!ていうか、アンタ何してんの?」
「何って、お前、自分の力でそこから出れないだろ」


凍矢は持っていたクナイでの周りの氷を削っていく。


「えぇまぁ、誰かさんが全部氷にしてしまったから水で削る事も出来ないけども」
「悪いが、俺は氷にする事は出来ても、溶かす事は出来ないからな」
「は!?いや、何それ、意味不明!」
「動くな。一緒に削るぞ」


むぅと言って、は大人しくなった。
凍矢は変わらず氷を削っていく。


「だから苦手なのよ、戦いづらいから」
「何?」
「凍矢と陣は戦いにくいから苦手だったの!」


突然の告白にキョトンとする凍矢。


「陣は風で水返してくるし、凍矢は水固めてしまうしで!」
「・・・そういう事か」
「え!?なんだって!?」
「い、いや、なんでも」


実はというと凍矢、あの日が蔵馬に零した愚痴を偶然聞こえてしまい、そのまま立ち聞きしていたのだった。
少し動揺したのか、気配を上手く消せず、蔵馬にはバレてしまうという失態を犯したが。


「最近は飛影も危ないのよねー、蒸発してしまうから。今までは水の量増やして、逆に消して解決してたけど、アイツまた妖力上がったからさ」


ペラペラと自分の能力の弱点を喋るのは天然か。





そうこうしているうちにの周りの氷はほぼ削り取られている状態となった。


、もうそろそろ・・・」


凍矢の言葉が途切れた。の様子がおかしい事に気付いたからだ。
先ほどまでぎゃんぎゃん騒いでた奴が急に大人しくなったんだ。おかしく思わない奴はあまりいないだろう。
心なしか、顔色も悪い。


「お前、まさか・・・」


凍矢はの顔、首、手などに触れる。
今まで氷の中にいたの体温は大分低くなっている。
凍矢自身、氷などの冷たいものは平気なものだから、ついも自分と一緒のように考えてしまったらしい。
氷系統の妖怪ならいざ知れず、は水系統妖怪。
更に、足や腕には凍傷がところどころあった。


「(少しやり過ぎたか)、動けるか?」
「・・・体が冷たくて動けない・・・」
「そうか」


の言葉を聞いて、凍矢は彼女を担ぎ上げた。
いや、正確には抱き上げただが、普段ならぎゃんぎゃん言うも流石にそこまで力が残ってないらしい。
素直にか、動けないからか、凍矢に身を任せている状態だ。











闘技場から凍矢にそのまま医務室まで運ばれた
凍傷してたところは治療してもらい、あとは体をあっためて安静にするだけなのだが、


「・・・凍矢ぁ、布団が多いよ・・・」


凍矢に布団を十数枚被らされていた。


「そ、そうか。俺は布団なんて被らないからわからなくてな・・・」
「1枚で十分です。ていうか、どっから持ってきたの。こんなにたくさん」


今度は布団の重さと熱さでダウンしそうなである。


「ていうか、布団被った事ないんだ」
「熱いのは苦手でな」
「あら、いいの?自分の弱点言っちゃって」
「わかってるだろ」
「まぁね」


徐々に回復してきたのか、口数が多くなっていった。
ちなみに凍矢は次の試合まで大分時間があるため、の話し相手に。
次第に眠くなってきたのか、うとうとしてきた頃。


「とーやは次の試合何時から?」
「今のところ10時間後だな、予定では」
「じゃぁ、凍矢も一緒に寝よ?この際だから、布団デビューでもしてさ」
「・・・・・」


なんだそれはという疑問の前に凍矢は一瞬、頭が重くなる感じがした。
何がどうなって女が男と一緒に寝ようなどとは。
いや、変に意識するのもバカらしくなってきた、と凍矢は思う。


「あぁ、そうだな。俺も重たいもの運んだから少し疲れたところだ」
「アンタがやり過ぎなかったらちゃんと自分の足で歩いたわ」


嫌味を嫌味で返す。それがのモットー。
だが、内心は少し緊張している。
半分冗談で言ったつもりが、相手はどうとったか知らぬが、本当に自分と一緒に寝ようとしている。
狭いベッドの上で男女2人、布団の中。
特にその相手が好意を抱いている人物であるのだから、余計緊張して。


「(でも、断らなかったって事は、私の事、女として見てくれてなかったのかな)」
「・・・あつい」
「いや、早くね?布団に入ったばっかりでしょうが」
「お前の体温が熱いからだろうが」
「んー、そういえば凍矢ってひんやりしてて気持ちいい(ぎゅ)」
「あつい、抱きつくな」
「えー」


ハッキリと拒絶され、は渋々凍矢の体を離す。


「襲われたくなかったら大人しく寝てろ」


そう言って、に軽くデコピンをお見舞いする。


「・・・え?」


まだ少し残る痛みを手で押さえ、凍矢がさっき言った言葉を思い出す。


「凍矢さーん。さっきの、ご冗談ですよね・・・?」
「冗談言っているように見えるか?」


くるりとの方に向き直す凍矢。
その顔は僅かに笑みを浮かんでいるものの、少し赤い。
布団の中が熱いからか、それとも照れなのか。


「・・・らしくない事言わない方がいいよ」
「うるさい」


暫くして、部屋には2人分の寝息が響いた。













凍矢はオクテっぽい。それを目指して書いたつもりだが、無理だったのか・・・。
(2009.5.30)



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