大会は浦飯チームの勝利で幕を下ろした。
死んだと思われてた桑原だが、実は死んでいなくて、幽助にボコボコに殴られてた。
そんな様子を眺めながら、が安堵の息を吐いた時、


ゴゴゴゴゴ・・・ッ!


激しい揺れが起き、ドーム全体が崩れ始めた。
左京が試合前にしてた賭けに負けたという事で、自分の命をこのドームもろとも消そうとしていた。
私達巻き込まなくてもいいじゃん!と、は心の中で強く呟いた。


「と、兎に角逃げねーと!」
「あぁ!」
「ちょ、待って・・・ッ」


生き残った妖怪達は、幽助が霊丸で開けた穴に向かって駆け出していた。
達もそこしか脱出するところがないので、同じ方向に向かう。
揺れに耐え、上から落ちてくる物を避けながら走る。
だがしかし、先程まで生死の間を彷徨ってたは陣や凍矢のように早く走る事なんて出来ず、


「どけっ!」
「あ・・・ッ!」


誰かとぶつかって、はそのまま転がり落ちてしまった。
止まった先で痛みに耐えながら立ち上がろうとした途端、崩れ落ちて来た物がに容赦無く降りかかった。
なんとか避けて潰される事はなかったのだが、中に閉じ込められてしまった。
真っ暗で何も見えない中、はどうする事も出来ない。


「(私、こんなところで死んじゃうの・・・?)」





















、これだけは約束する


俺はお前を必ず護る


だがもし、何か起こったとしても、必ず助ける





















「とうや、あのと・・・の、や・・・そく、本当か・・・な・・・」








「(ハ・・・ッ)陣!は!?」
「はっ!?いないべか?」


が他の観客とぶつかって転がり落ちた数分後、二人はがいない事に気が付いた。
いくら周りを見渡しても我先にと言わんばかりに形相を変えた妖怪の姿しかなかった。
すると、そのうちの一人が運悪くも落ちてきたコンクリート片に押し潰され、絶命した。
その光景を目の当たりにした凍矢に悪寒が走る。


「凍矢!」


嫌な予感を振り払うべく、凍矢は来た方向へと戻って行く。陣も後についていく。
向かってくる妖怪達を避けたり払ったりしながら、凍矢は懸命にの姿を探す。





一方、はなんとか上に覆い被さっている物を退けようとするが身動きが取れないでいた。
痛みと圧迫感で精神的にもかなりキている。


「たく・・・い、死にた、ないよ・・・ッ、・・・や、凍矢・・・!」


恐怖と悲しみが一気に込み上がり、は思わず涙を流す。
死にたくないという一心で凍矢の名を口にする。






!」


視界が明るくなり、瞳に映ったのは紛れも無く想い人の姿。
しかし、は言葉を話す事も出来ないくらい弱っていた。
陣と共に今までの自由を奪っていた物を退かし、完全に退かしたとこで彼女の身体を抱きあげる。
このままを抱えて脱出しようと思ったが、ドームはほとんど崩れ落ちており、とても進める状態ではなくなっていた。
それでもなんとか脱出しようと、足を動かそうとした凍矢を陣が止める。


「陣・・・?」
「凍矢、オメ、の事しっかり持っとくだべよ!」


そう言い放った途端、陣はを抱えている凍矢の身体を持ち上げ、そのまま急上昇し始めた。
いまいち状況が掴めなかった凍矢だったが、兎に角が落ちないよう、しっかりと抱き締める。
ぐんぐん空に向かって上昇していく陣。すると、程なくしてドームが爆発し、黒煙が立ち昇った。


「ハァー・・・、ギリギリだったべ・・・」


跡形も無くなったドームを見下ろしながら陣は呟いた。
此処で漸く、凍矢も今の状況を掴んだのであった。













この話が一番書きたかった筈なのに。・・・筈なのに。
(2013.11.5)