魔金太郎の時から一転、かなりハラハラさせる試合だったが、飛影の勝利に終わった。
さて、次は蔵馬の番だ。
第十四話:狐
どんな卑怯な手口を使ったかは知らんが、敵の罠にはまった蔵馬。
アレ、蔵馬らしくないなぁ、などと呑気に思っていたら、裏浦島が逆玉出箱なるものを開け、円闘場を煙が覆った。
段々小さくなる蔵馬の妖気。完全になくなった時は流石に焦ったが、すぐにその焦りはなくなった。
「し、信じられねぇ。一体、このどぎつい妖気はどっちのもんなんだ!?」
「蔵馬の妖気さ、決まっているだろ?」
「多分、あの間抜けが闇アイテムとやらで呼び出してしまったんだろう。南野秀一とひとつになる前の蔵馬をな」
「あ、あれが蔵馬の本来の妖気だってのか?」
「まさか、これほどのモノだったとはな。一度、手合わせ願いたいもんだぜ」
「私は遠慮したいねぇ」
蔵馬とは随分昔からの縁だった。
私がまだ魔界にいた頃、盗賊として名を馳せ、恐れられていた。
同じ妖狐で、能力まで同じだからそれなりに話は合い、打ち解けていた。
そんな折、私が人間界で生活するようになって、蔵馬とは数百年も会っていなかった。
「ちょいと待ちな、アンタ!」
「・・・(俺?)」
「アンタ、人間じゃないね」
「な、何を」
「なんてね。というか、どしたの蔵馬。そんな人間になっちゃって」
「え?」
「あ、私も人間に変化してるからわからないかなぁ。数百年ぶりだし。私だよ、」
「え、?・・・全く気付かなかった。人間に憑依してる訳でもなさそうなのに、妖気が感じられない」
「長い事、人間に化けて人間と生活してたおかげか、すっかり人間臭くなっちゃってね」
「・・・中学生?」
「うん。中々似合ってるだろ?この服。中学入りたてなんだ」
「・・・はで上手くやってるみたいだね」
「・・・色々あったけどね、今はそれなりに」
「そうか。じゃ、また会えるといいね、」
「そうだね。いつかはわかんないけど、また会おうね」
不思議なもんだ。
蔵馬とは中学も違ったし、何処の高校行ったかもわかんなかったから、本当にまた会えるのかなと頭の片隅で思っていたら、幽助が死んでしまって、生き返ったと思ったら霊界探偵に任命されちゃって、コエンマに手助けしてくれって言われたら蔵馬がいて。
不思議な繋がりだ、人も妖怪も。
世界も魔界も広いのに、ね。
結界が破れ、煙が退いていく。
そこに現れたのは幻魔獣と妖狐だった時の蔵馬。
ほどなくして、今の姿である南野秀一に戻ったけど。
次に出た目は死々若丸と自由。
あれま、次はあの美青年が相手なの。
死々若丸が出てからというもの、女の黄色い声援が鳴り響く。
「うるせーな、浮かれ女どもが。闘いの場をなんと心得てやがるんだ、全く」
「結構イケてると思うんだけどな。いや〜、コレが一目惚れって奴かぃねぇ〜」
なんて言ったら、3人して一気に私を見てきた。なんか、以外そうな目で。
「・・・冗談じゃん。ちょっと乙女の気持ちになりたかっただけじゃん」
「そうだね、に限ってそんな事」
「え、蔵馬、言い過ぎじゃね?やべ、泣きそう」
「ところで、そこの失敗ヅラ。お前はどうだ?ただ立っているだけでは暇だろう」
「な、誰が失敗ヅラだコラァ!」
「うまいな」
「敵ながら的確な表現だ」
「右に同じく」
なんか、それからというものの、3人して出たがっちゃって、どちらも一歩も譲らない感じ。各々、理由は別みたいだけど。
味方なのに火花が散ってるってどういう事よ。
「ハイハイハイハイ、ここは平和的にジャンケンで」
「・・・そうですね」
「望むところだ」
「ジャンケン?なんだそれは」
あれま、飛影、ジャンケン知らないんだ。
そんな飛影に蔵馬がジャンケンのルールを説明する。
「初心者はグーしか出せねーんだ」
「桑原君!嘘を教えないよーに」
まぁ、何はともあれ、ジャンケン開始。
数十回のあいこの結果、最初の指名通り、桑原君が出る事となった。
女性群によると桑原君は殺してもいいんだとか(見た目なのかねぇ)
というか、あの子達、まだ来てないのかね。応援が聞こえないし。
ちょっくら、見てこようかな。
「私、ちょっと外出るね」
「大丈夫?一人で」
「大丈夫大丈夫。子供扱いしないでよ」
「いや、だって・・・」
「ほいじゃ」
適当に流しながらさっさと行く(全く、蔵馬も心配性ねー)
まさか、前の闘技場に行ってるとか、そんなオチないよね?
+
で、
「迷った」
つくづく、自分の方向音痴を呪った。
そっか、蔵馬はこの事を心配していたんだね。付いてきてもらったらよかった。
というか、不親切なのよ。出口はこちら、とかそういう看板や張り紙ぐらいしとけばいいのに(ぶつぶつ)
さっき、妖怪どもがたくさん出てきて、もみくちゃにされてしまったから余計にわからんなってしまったし(出口まで流れるかなと思ったら、違うとこだったし)
あーあ、出口は何処かねぇー。
「キャー!!」
!今の声、
「螢子?」
← ■ →
なんとかペースに乗ってきました。
(2010.5.22)