はて、此処は何処、私は誰?
第十話:開
目が覚めて一番最初に目に入った光景は見慣れない天井。
上質な壁紙と、コレまた上質な照明が付いた天井。
視覚の次に触覚を確かめると、肌触りのいい感触。ふかふかしている。
一言で言うならば心地いい。うちのベッドもこうだといいのに。
むくりと起きるとそこは高級ホテルの一室と一目でわかるんだが・・・、
「すー・・・」
隣ですやすやと眠っているこの子を見ると何故だか頭痛を感じた。
そう、私がいる場所はホテルの一室のダブルベッドの上。隣には螢子。
隣のベッドを見るとぼたんと静流さんが寝ており、温子さんはソファーにておやすみ中(片手に酒瓶持って)
「・・・いやね、行こうとは思ってたさ。でも、アンタ等はいらんかった・・・」
深く溜息を吐く。
+
チッ、コエンマのヤローおせーな。
もう試合、始まってんじゃないの?さっき開会宣言聞こえたし。
おや、あそこに見える間抜けなおしゃぶり。
「コエンマ様ー。幽助達がもう出てますよ」
「ひゃー、モテるねダンナ。5人ともダンナの恋人ですかい?」
「ゲストの親族とガールフレンドだ。ドアホな部下と狐が口を滑らせてな。強引に同行させられたのだ」
「ひーん、アホって言われた」
「あぁん?誰がドアホな狐だと、この間抜けおしゃぶり」
全く、チケット持ってる奴が遅れる事ないじゃないのさ。
幽助達、1回戦から無茶な戦いしてないといいけど。
暫く進んで観客席の入り口まで来た私達。
耳をつんざくような声援。勿論というと複雑だが、浦飯チームの応援は一つも無い。
そんな中、私達の目に入って来た光景は、
「桑原君が凧みたいに飛ばされてるー!」
あれまー、眺め良さそうやねー。
「ちょっと。あんな高さから落ちたら死ぬじゃないの。シャレになってないわよ、これ!」
「だから、そーゆー大会なんだって」
何処か呑気な温子さんね。ま、それが温子さんか。
しかし、あげられてる桑原君も桑原君だけど、桑原君程の巨体をあんな天高くあげるなんて。
1回戦早々ヤバイ感じじゃぁ、この先思い知れる。
「幽助!友達が危ないって時に何呑気に寝てんのよ、薄情物!」
「け、螢子〜。もちっと声の音量落として欲しいな」
螢子が寝ている幽助に向かってワーワー言うもんだから来ちゃったよ、めんどいのが。
「なんだこの女、ウラメシ側の人間か?」
「クソして帰んな。此処は妖怪のための大会だぜ」
「妖怪が何よ!うちの幽助は一回死んで生き返ったのよ!」
「ケケケ、喰ったろか!?」
ジュ
「あじゃじゃじゃじゃ!!」
・・・一時はどうなるかと思ったが、この人達に至ってはきっと何が起こっても大丈夫そうね。
でも無事に帰れるかな〜?
んな事言ってる間に試合はクライマックスを迎えていた。
霊気の剣が妙に曲がってるけど、確かに鈴駆とか言う奴の腹を貫いた。
けど、桑原君も鈴駆の武器を顔面で受けていた。
「うむ、天晴れ」
実の姉の静流さんは顔色一つ変えずにそう言った。
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ヒロイン(螢子)目線って、意外と出番が無かったりする。
(2009.5.30)