みーんみーん。
梅雨が明け、猛暑日。
耳につんざくほど響く蝉の鳴き声を聞くとより一層に暑さが増す。
今日もいつものごとく修行に明け暮れていた七人。
ただ、いつもと違ったのは、終わった時間が大分早かったという事。
暑さによって体力の減りが加速していったのだ。
「あ、づ、い」
は自室でごろごろと転がっている。
けど、この暑さはどうにもならなくて。
「凍矢ー、人間界も暑いのってあるんだね」
「そうだな」
相槌を打った彼もと同じく倒れこんでいる。
寒いところでも薄着で平気でいられる彼等にとって、この猛暑は耐えられないものである。
自分達の妖気を使えばなんて事はないが、放出し続けるのも体力がいる。
要は、どうにもならないって事である。
のそのそと這いながらは凍矢の傍に移動し、寝込んでる凍矢の上に自身の体を乗せる。
暑い暑いと体感で感じていても、呪氷使いであるからか、二人の体温は低い。
「・・・重い、どけ」
「えー」
上にのしかかったの体を押し返すように退かすと、その体は横へゴロンと転がった。
反論する気も起こらず、代わりにゴロゴロと体を転がす。
どうやら、冷たい畳が心地良いらしい。
「・・・(ゴロゴロゴロ)」
「・・・・・」
「(ゴロンゴロンゴロン)」
「・・・(イラ)」
「(ゴロゴロゴロゴロゴロゴドスッ)へぶっ」
「転がるな、鬱陶しい」
痛みが残る後頭部をさすりながら睨みを効かせる。
ふと、何かを思いついたのか、凍矢は部屋を出て行く。
突然な彼の行動に戸惑いながらも、再び畳みの上に横になる。
眠い訳ではない(寧ろ、暑過ぎて眠れない)が、気持ちを落ち着かせようと目を閉じる。
その数分後、頬に異常に冷たい物が当たる。
思わず変な声を上げ、ガバッと起き上がる。
そこに立っていたのは水色のアイスの棒を持って立っている凍矢の姿。
「〜っ、気配消すなんて趣味悪いよっ」
の言葉に凍矢はふっと笑い、にアイスキャンディー(ソーダ味)を手渡す。
は素直にそれを受け取り、嬉しそうに封を開ける。
ついさっきまで機嫌斜めであったのに、単純なものである。
「どうしたの、コレ」
「前に蔵馬から貰ったのを思い出してな。好きだろ?こういうの」
「うんー♪」
しゃり、と噛み砕き口の中で堪能する。
少し食べたところでが問う。
「凍矢は食べないの?冷たいよー」
「いや、俺はいい」
「んー、一口だけでも食べてみたら?ほら」
ずい、と口元までアイスを寄せられる。
食べかけのアイスなぞ(別の意味で)食べられるか、と反論しようとの方へ向いたが、
「ん?」
不信も疑いも穢れも無い目で見つめられ、凍矢は心の中で溜息を吐いた。
「(気にしてないとか、そういうレベルではないな、もはや)」
ふぅ、と息を吐くと、の手に自分の手を添え、口元まで持ってくると、少し大きめにかじり取った。
水色の味が口の中で広がった後、自身の喉を潤すのを感じた。
美味し?と問われ、短い返事を返した。
その後も平然とはアイスを食べていったのであった。
凍矢はの後ろに回り、座り込んで自分の足の間に体を入れ、肩に手を回す。
ひやりとした体が心地よく、自分より少し低い頭に額を乗せる。
はで背中から感じる冷気を心地良く感じ、凍矢に体を預けるかのように後ろにもたれかかる。
そんな暑い夏の日の出来事であった。
「つか、見てる方が暑苦しいっての」
「本人達が無自覚でやってんのがまたムカつくべ?しかも毎年毎年目の前でやられて」
「同情するぜ」
「アイツ等は涼しそうでいいんだがな・・・」
「只でさえ暑くてどうにかなりそうなのに、アレ見てると怒りを通り越してぐったり来るな」
「まぁ、考えをまとめるとこうだべ。・・・もっと別のところでやるか消え失せろよってな」
「後者のは陣だけしか思ってないから」
「いや、同感だぞ」
「死々若、めっ」
凍矢さんは間接ちゅーを気にしたのですよ。
純粋無垢なお嬢様は全く動じないのです。誰かの食べかけだって平気で食べます。そして、凍矢に止められます。
暑いから冷たい者同士べたべたさせてもいいかなと思って書きました。後悔はしてません。
(2011.6.15)
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