最近気付いた事。

・凍矢は横になって寝ると寝相が悪い。
・そして寝起きが凄く悪い。

・・・の二つ。
座って寝ている時は体勢が体勢なだけに全く動かないんだけど、横になるともう寝相が悪くなる。もう何回殴られたり蹴られたりのしかかられたか。
魔忍時代は一緒に寝る時って大抵外だったから、座って寝てたんで気付かなかったけど。
あと、寝起き。本当に今まで知らなかったよ。あんなに寝起きが悪いなんて思わないし、想像も付かないんだもん。
つまり、何が言いたいかと言いますとね、




「とりあえず退かして欲しいんですよ、コレを。起こさないように、出来るだけそーっと」
「イチャついてるところに呼ばれて欲しくないべ、ムカつくから」
「イチャついてないし呼んでもいない。アンタが勝手に来ただけ。都合良く」


部屋の入り口からやや冷ややかな視線を送る陣。
それをものともせずさらりと受け流し、その陣に自分の上に乗っかっている人物を退かしてくれるよう、懇願する。
けど、陣は一向に行動を示さなかった。


だってそんな弱くないべ?それぐれー退かせれるけろ」
「そりゃぁ、多少荒っぽくやったら出来るよ。けど、起こしたらめんどいんだ、コレが」
「凍矢の寝起きの悪さを知らねーのはだけだべよ」
「マジでか。いや、ていうか、わかってんなら何とかしてよ」
「知らね」


そういうと陣はスタスタと部屋から去っていってしまった。
陣のアホー!薄情者ー!とが心の中で叫んだのは言うまでもないだろう。
頼りになる者はいない、しかし、この状況も色々と耐えれるものでもない。
は半ば諦めたかのように溜息を吐き、凍矢をやや荒っぽく退かせた。
その衝撃で凍矢は目を覚ます。


「・・・・・」
「(うわー、めっちゃ眉間に皺寄っちゃってるよ)おはよ、凍矢」
「・・・・・」
「(目は開いてるけど意識ないよ、コレ)」


は明後日の方向を見ている凍矢の顔を見つめる。
目は半開きで眉間に皺を寄せていて、なんの反応も示さない凍矢。
まだ完全には起きてはいない。
めんどくさい事になるなー、とは不満気にそう思った。


「と・う・やっ!朝だよ、起きて!」


声を大にしては凍矢に話しかける。
当然、寝起きの凍矢にとっては不快以外の何物でもない。
話し続ける目の前の女の頬を抓ってやる。


「いふぁいいふぁい!!はひすんほ!(痛い痛い!!何すんの!)」


しかし、それは静まるどころか、余計に煩くなった。
抓っていた指を離し、チッと舌打ちする。


「舌打ちしたいのコッチだよ、バカ!」
「・・・煩いな」
「起きないからでしょー・・・ッ!!」


止まる事のない口を己の口で塞ぐ。
は突然の事で体を強張らす事しか出来なかった。










ー。凍矢起きたらコレ渡しとい・・・」


デジャヴとはこの事を言うのか。
ノックも無しに訪れた訪問客、というか陣の存在に更に体を固める
しかし、前と違うのは完全に口付けしているのをバッチリと目撃されているという事。


「・・・朝っぱらから何やってるだ、キミタチ」
「ッ!!」


陣の言葉に我に返ったは突き放すように凍矢の体を押した。
一方、事の原因である凍矢はまた夢の世界へと旅立ち、その体はの方へ倒れる。
それを受け止めながらは真っ赤な顔で陣の方を向く。


「なななに、何って・・・!」
「まぁ、言われなくてもが凍矢の寝込みを襲ったってのはわかったべ」
「違うから!」


白い肌を紅潮に染め上げて弁解するをニヤついた顔で見やる陣。
内心、彼女を弄っているのを楽しんでいるようだ。
そして、まだ少女らしさが残る顔に手を添え、


ちゅ


赤い頬に口付けた。


「・・・あんまり、凍矢以外に見せない方がいいだよ?その顔」
「じ、陣まで何して・・・っ」


はもう訳がわからず、目の前にある冷たい体を抱き締め、羞恥に耐えようとする。
涙目になりつつも陣を鋭い目で睨む。


「じゃな、。あ、コレ、凍矢に渡すの忘れないでけろ」
「・・・はーい」


そう言って、漸く陣は部屋を出た。


「・・・凍矢のバカッ!起きろコノヤロー!!(ドスッ)」
「!」


突然の腹への衝撃に咳き込む凍矢。
しかし、そのおかげか意識がはっきりとし、完全に目覚めた。


「なんなんだ、朝っぱらからお前は!」
「それはコッチの台詞だし!」
「俺が何をしたって言うんだっ」
「ッ、覚えてないとか最低!陣は陣で・・・、あーもう!知らない!」


ヤケっぱちに叫んだ後、陣から預かった書類を顔に叩きつけ、部屋から出て行く
何が何だかわからない凍矢は書類に目を配った後、呆然と部屋の扉を見ていたのであった。







その夜、は螢子のうちに押しかけ、泊めてもらう事になった。
一方、凍矢はというと、


は一体どうしたんだ・・・」
「アレだ、難しい年頃って奴だべ、きっと」
「・・・何か知っているんじゃないか、陣」
「さーな」


不服そうな顔で陣を睨む凍矢。
その視線を軽く流し、手を頭の後ろで組んで口笛を吹く。
教える気配のない彼に凍矢はひっそりと息を吐き、の機嫌が直って帰ってくるのを待つだけであった。







念のために言っておきますが、VSものではありません。
小動物にちゅーする感覚なんです、陣にとっては。
凍矢に「啼かすぞ」っていう台詞を言って欲しかったんですが、言ったところでこのヒロインの場合は意味を把握しないだろうなと思い、やめました。
そのうち陣や若や幽助あたりが凍矢のいないところで色々教えてそうです。
(2011.4.24)



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