初めて見た、銀の涙。



痛いほど、目に焼きついてる。







10 瞼の裏に残るのは笑顔だけ





ガサガサ



銀が私を抱えて、草むらまで行ってくれた(ちょっとハッピー)

『そこで待ってろ。すぐ、終わらせてくるから』と言われて、降ろされた(チェッ)



「銀、頑張って・・・ね?」

「当たり前だ。俺を誰だと思ってんだ?白夜叉だぞ、白夜叉」

「ふふ・・・わか、てるよ。なるべく・・・早、く戻っ・・・きてね」

「・・・あぁ」

「ね、銀・・・」

「あ?」

―――好きだよ、銀」



コレだけはハッキリとした言葉で言った。

銀は驚いた顔になったが、いつもみたいに笑って、

キス、してくれた。



「俺もだ。そこで待ってろよ。いなくなったら、承知しねーからな、テメー」

「ハイハイ。・・・ありがと」

「・・・じゃぁな」

「うん、バイ・・・バイ」



銀の背中が遠くなる。

あぁ、銀のキス、血の味したな。でも、いっか。幸せだし。

ねぇ、神様。このまま生き残ったら、銀と幸せに暮らせますか?

そう思って目を瞑れば、瞼の裏に残った、銀の笑顔―――











「・・・・・」























!悪いけど、茶ァ持ってきてくれるか?」

「ハーイ」



私は奇跡的に生き残った。

何故かっていうと、











「たでェまー」

「おー、おかえりー・・・って、ちょっと総悟君!何それ!誰それ!?」

「道に落ちてましたぜ。痛そうだったんで、持って帰ってきやした」

「お前、持って帰ってきたって・・・そんな、犬や猫じゃねーんだぞ。そいつにだって、家あるだろ」

「んだよ、お前まだいるのかよ。死ねよテメー。大体、お前も拾われた身だろ」

「いい度胸してんな、このガキャ・・・」

「あーぁー・・・こんなに怪我しちゃって・・・どうしたのかな、この子・・・」

「さぁ。それより、手当てしてやってくだせェ。まだ、息はありやす」

「そうか。トシ、救急箱、持ってきてくれるか?」

「言うと思って、とっくにあるぜ」

「流石トシだな。・・・痛いけど、我慢してくれよー・・・」



ピト



「(ピク、)うぎゃああぁぁぁぁぁ・・・!!」

「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」」

「(ピクピク・・・)いってー・・・コター。もうちょっと、優しく・・・ん?」

「「「・・・(ビクビク)」」」

「・・・誰、アンタ達」












総悟君に拾われて、今に至る訳です。

帰る術を知らなかった私は、近藤さんの道場で世話になった。

そして今、真選組で働く事となり、また刀を持つ事が出来た。

未練があったけど、もう過ぎた事だし、仕方ない。

それに、コタや高杉は生きてるんだって知ってるしね(皆には知り合いだって事、言えないけど)



、事件だ。現場に行くぞ」

「ハイ。・・・って、なんです、近藤さん。その気ぐるみは?」

「何って、そりゃぁ、。お母さん役だ」

「・・・土方さん。アホ放っておいて、行きますか」

「そうだな。行くぞ、総悟」

「へィ」

「え、何コレ何コレ。皆して何。俺、アホ決定?」

「近藤さん。アンタの母親作戦、ありゃ全然、効き目ないんですよ」

「・・・マジでか、総悟」

「はい」



もう、アホに関わるのやめようかな。























『無駄な抵抗はやめなさーい』



スピーカーで犯人に向かって言う。

が、犯人はチャイナ風な女の子を人質に取っているため、コッチも無駄に手が出せない。

・・・と思ってたら、



「うるせェェ!このチャイナ娘がどうなってもいいのかァ!」

『別に構やしません。兎に角、さっさと下りてこいやコラァ。夕方から見たい再放送があるんでィ』



総悟君がドラマの再放送とチャイナ娘を秤にかけて、再放送の方を取ってしまったよ。

アンタ、人の命をなんだと思ってんだ。

こんな事を思ってたらまた、



「ほぁちゃァァァァ!!」



なんと、女の子が犯人の顔面を蹴っ飛ばして、ピンチを脱したではないか。

訳がわからなくてポカンとしていると、土方さんが『アイツはあーいう奴なんだよ』って言った(何、知り合い?)

そうして、伸びてる犯人を隊士が捕まえ、連行した。

なんだか、出陣しただけでも無駄だったような気がするが、あえて気にしない。



「はぁーい、退いて退いてー。あの子の保護者的存在でーす」



呆然としていると、後ろの方で気だるそうな声が聞こえた(アレ、この声・・・)

思わず、振り向いたら、



「テメー。保護者なら、ちゃんと見とけよな」

「だーかーらー、あくまでも保護者的存在だって。保護者じゃないって」

「まぁ、チャイナだったから、被害は少なかったですけでねィ」

「だろ?やっぱ、うちの娘ってスゲー」

「オイ、今コイツ、保護者を否定しなかったか?」







「銀・・・?」



私がそう呼んだら、銀髪が振り向いた。

忘れる筈ない、その髪の色と質。

そして、その声。



「・・・?お前、・・・か?」

「銀、だよね?坂田銀時だよね?」



銀、だ。

最初は忘れようと必死になってた、けど、忘れられなかった想い人。

銀だ。私が愛した銀だ。



「お前、何処に行ったかと思えば・・・!凄い探したんだぜ?」

「ゴメンね、ゴメンね(ボロボロ)」

「おまっ・・・!泣くなよ!どっかの三流ドラマじゃねーんだからさ!」



「涙は女の武器アル」

「神楽ちゃん・・・」



「うっさい!私は三流ドラマが好きなんじゃー!銀のバカー!」

「ちょっとちゃん!久々に会ったのにバカはないんじゃないの!?」



「旦那とさん、知り合いだったんですねィ」

「てか、今まで会ってなかってのが奇跡に近いな」

「何コレ、何コレ。うちの可愛いが銀時に取られる訳?ねぇねぇ?」



会いたかった、会いたかった。

そう思えば思うほど、涙がドバドバ溢れ出てくる。

また止める術を知らなくなった私を銀がまた抱き締めてくれた。

あぁ、この体温も変わって無い。



「アイツ等、此処が街の中だって事、気付いてるのかな」

「さぁ、どうなんでしょうね」

「いいじゃないか、ゴリラ!銀ちゃんにも遂に恋人が出来るアル!」

「認めねーよ!・・・って言いたいところだけど、の顔、幸せそうだからなァ」

「おや、珍しい。さんに悪い虫が付かねーように見張ってた近藤さんが」



後ろの方でこんな会話があったけど、此処は街の中だけど、構わない。

だって、こんなにも嬉しくて幸せな事なんて、無いんだもん。

聞きたい事、山ほどあるけど、それらはゆっくりと聞けばいいや。今は銀のこの体温を感じるのが先。

と思ってたのに、案の定、離された(ヤダーッ)



「新八、神楽ー。新しいママだ。坂田になるから、この子」

「え」

「コルァァァ!!何、勝手に決めてんだァ!」

「んだよ、ゴリラ。お前、俺等の交際、認めたんじゃねーのかよ」

「交際は認めても、結婚は許さん!は生涯、俺達のところで働くって決まってんの!」

「バカ言っちゃいけねー。はいずれ、俺が経営してる万事屋に・・・」

「お前んとこにを転がしたら、が餓死する。確実にな」

「よーし、上等だコラァ。テメーとは決着つけねーとな」

「望むところだコラァ。俺の土方スペシャルとお前の得体の知れねー小豆丼、どっちが優れてるか勝負だ」



何、銀ってば今時、万事屋っていう商売してるの?

それに、小豆丼って何。お前、御飯にまで小豆かけるようになったのか。

聞きたい事、本当に山ほどあるけど、嫌ってほどわかると思う、多分。







戦争から数年、私達はひょんな事から再会しました。

その時、口付けられた時、甘い甘い味がしました。あの時の血の味じゃありません。

コレは神様が生き残った私達に出してくれた御褒美なのでしょうか。

今夜は月が綺麗です。まるで、雫が落ちてきそうな。

あの時、泣いて見上げた空にも月がありましたね。

今夜の月は、あの時と変わらず綺麗で、でも、私達を祝ってくれる様子でもありました。

私は最高に幸せです。美しく最期まで生きていけれます。

私の第二の人生の幕開けで御座います。

それでは、さようなら。