一言でデート、されどデート。
16年生きてきて初めてのデート。







「ぅおう〜」
ちゃん、凄く悩んでるみたいだけど、大丈夫ですか?」
「月乃ちゃん・・・」
「私でよろしければ、相談相手になりますわ」
「ありがとう。実は・・・」


付き合ってから初めてのデート。それに着ていく服とかをどうしようかっていうのを月乃ちゃんに相談してみた。
月乃ちゃんはきょとん、となって、


ちゃんなら何着て行っても大丈夫ですわ」
「う、月乃ちゃんはそうかもしれないけどさ〜」
「それとも、デートに着ていくような可愛い服を持っていないんですの?」
「・・・うん」
「でしたら、私の貸して差し上げますわ。ちゃんが気に入るかわかりませんが・・・」
「え、い、いいよ!月乃ちゃんのだから高そうだし、それに」
「それに?」
「多分、サイズ合わない」
「え?背丈は私と同じくらいでしょう?体型も変わらないと思いますが」
「(胸のサイズが合わないのよ・・・)やっぱいいよ」
「そうですか」


ちょっと肩を落としてしまった月乃ちゃん。
私は少し慌てて、『気持ちだけでも嬉しいから、ありがとう』と付け加えた。
月乃ちゃんはほんの少しだけホッとした顔を見せた。


「それに、先ほども言いましたが、ちゃんなら何着ても大丈夫ですわ。特に彼なら」
「・・・仮にそうだとしても、私が嫌なの!」
「どうしてですの?」
「だって、相手は超が付くほどの美少年だよ!?せめて服装だけでも可愛くならないと釣り合わないじゃない!」
「そ、そう言われましても・・・」
「だって私、月乃ちゃんみたいに美少女じゃないも〜ん!あっ、別に月乃ちゃんが悪いんじゃないよ!」


いいな〜、月乃ちゃんは綺麗で可愛くて〜、と、月乃ちゃんが困っている事を知っていてそんな事を言う。
そりゃぁ、彼は見た目で私を選んだんじゃないってのはわかっているんだけどさ。
でも、周りからお似合いのカップルに見られたいじゃない。
そう思っちゃいけないのかなぁ・・・?











散々迷ったあげく、白のトップスに黒のジャケット、七分丈の黒ズボンという、割とシンプルなものになってしまった。
私ってば、どうしてもこういう傾向になってしまうのよね、服装。
普段後ろで結んでいる髪はおろしている。一応、コレでもオシャレ(?)なつもり。巻いてるとかはしてないけど。

とくんとくん

もうすぐで待ち合わせ場所に着く。時間は5分ほど早い。
彼は、冠君はまだいないかな、それとももう来ているかな、などと考える。
先程から鳴り響いている心臓がとても苦しい。
目的地に近づくごとに苦しくなる。


「あ」


冠君、だ。
心臓が更に高鳴りし、あまりの苦しさに立ち止まってしまう。
他にも人はいるのに、一際目立っている彼。
珍しいピンク色の外ばねしている髪に、男の子とは思えない華奢な体。
そして何より、あの整っている顔。ちらちらと周りの女の人達が彼を見ているのがわかる。


「か、冠くん」
「あ、さん!」


得意の人懐っこい笑顔で私を迎えてくれる冠君。
毎回思っているのだが、この笑顔は本当に反則だよ。


「ご、ゴメン、待った?」
「いえいえ、僕も今来たとこです。さ、早速行きましょう」


自然に私に手を差し伸べる白い手。
恥ずかしさあって少し戸惑ったが、嬉しい気持ちが勝って、その手を握る。
恋人同士だから変じゃないよね?
でも、ラフな格好の彼にカッチリしてる私の格好。
コレって、どうなのかなぁ?





今日のデートの行き先は映画館。
内容は切ない動物物語なのだが、開演までまだ時間がある。
私達は近くのショッピングモールで時間を潰す事にした。
こういうところを歩いてると嫌でも目に入るのがレディース服の売り場。
その店の商品と同じものを着た店員がいらっしゃいませーや、お買い得ですよーなどという声が聞こえる。


「そういえば、さんってスカートとか穿かないんですか?」
「そうだねー・・・、というか、スカート自体持ってない、かも」
「えー」


不満気な声をあげた冠君は次から次へとお店の商品に目を移す。
その視線がある一点を見つめたまま止まった。


「コレとかいいんじゃないですか?」


そういって彼が指差したのは黒のプリーツスカート(しかもミニ)
え、えぇー・・・。


さん、シンプルなの好きみたいだから、こういうのいいんじゃないですか?」


そんな反則笑顔で言われましても。


「そのスカート、セール品なので出ているもので全部なんですよ〜」
「はぁ」
「よろしければご試着してみます?」
「試着だけでもいいじゃないですか、さん」
「そ、そうね〜」


店員さんの笑顔と冠君の反則笑顔に負け、試着室に入っちゃった私。
着替えたら見せてくださいね〜と2人に言われ、渋々着替え始める。
というか、個室とはいえ、外で脱ぐのに気が引けるのって私だけだろうか?





穿き終えた感想。
腰で穿くタイプだからか、見た感じあまり短くないかも?
それに、案外スカートもいけるかも、私。
いやでも、冠君の反応が大事だよね(店員さんは敢えて無視)(ああいう人達はお伊達上手だから)


「冠く〜ん・・・」


試着室のカーテンを少しだけ開け、彼を呼ぶ。


「あ、終わりましたか?」
「・・・終わったには終わったけど」
「早く見せてくださいよ(わくわく)」
「う、うん」


恐る恐るカーテンを開ける。
大体全部見えたところでじっと私を見つめる冠君。
ちょっと恥ずかしく感じるも、どうかなと聞いてみる。


「どうも何も、可愛いですよ、さん」
「えっ」


さらりととんでもない事を笑顔で言っちゃうもんだ。
ヤバイ、絶対赤い、顔。
その後で来た先程の店員さんもよくお似合いです〜と、決まった台詞を言う。
けど、その決まっている台詞も悪い気はしなくて。


「どうしよう、買っちゃおうかな、コレ」
「あ、買いますか?」
「うん」
「ありがとうございます〜」


買う決意を決め、もう一度元の服に着替える。
ささっと着替え終え、試着室から出て、スカートを持ってレジへ向かう。
6800円です、と店員さんが言ったのを聞き、財布の中からお札を出そうとしたら、


「コレでお願いします」
「ハイ。1万円お預かりしまーす」
「え、えぇ?」
「僕が払いますよ」
「え、いやいや、え?」
「3200円のお返しで御座います。ありがとうございましたー」


あれよあれよという間にお勘定が済んでしまい、店から出た私達。
私の手には先程のスカートが入っている袋が。


「え、冠君、どういう・・・。ていうかいいよ、私返すよ」
「だから僕が払いましたから。僕が買ってあげたものを身に着けてくれると嬉しいですし」


照れくさそうにはにかむ冠君(その笑顔も反則だ)


「それに、やっぱりさんはスカートもよく似合いますよ。というか、可愛いです」
「!あ、ありがと・・・」


最後、声が小さくなってしまった。













ジャぱんの冠茂君でしたー。
冠きゅんいいね、可愛いね、腹黒いね、イカスね。
最初、頭の中では最終的にヒロインちゃんの衣装はもっと可愛くなる予定だったのですが、スカート穿けたって事だけでも進歩という事で。
というか、ジャぱんってちょっと昔(4年前ぐらい)の漫画、アニメだから知っている人いますかね?
冠きゅん可愛いよぉ。コレからも彼の夢、書けたらいいな。
(2010.1.29)



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