「さくらさく、こ〜ろ〜にありがとう〜♪」
桜舞散る中、きいちゃんの歌を歌いながら掃除する。
桜って、散る時は綺麗なのに、散った後の花びらってなんか汚いのよね、皆に踏まれるからか。
今年は冬並の冷え込みが続いた所為か、いつもより長持ちしている。
いつも思うんだけど、どうして一瞬しか咲かないのに皆惹かれるのかな、桜って。
「ふー、なんとか一区切りついた、かな?」
次々と落ちてくるからキリがないんだけど、とりあえず汚いのは一掃出来た。
さて、次は裏庭の掃除だ。
裏庭もきっと、桜がいっぱい散ったんだろうな〜。
またきいちゃんの歌を弾みながら裏庭に向かう。
裏庭に着き、縁側で寝ている人を見つけた。
「沖田さん・・・」
いつもながら、仕事中だというのに寝ていらっしゃるのね。
土方さんは今、出張中だから誰も注意しないのかしら。
とか言って、私もしないんだけどね。
まぁ、昼寝したくなる気持ち、わからない訳でもないけどね。ぽかぽかしてて気持ちいいんだもん。
掃除する前まで少し強い風が吹いてたからか、縁側にまで桜の花びらが入り込んでいる。
いつから寝てたのかわからないけど、沖田さんの体の上にも桜の花びらが。
歌いそうになる気持ちをぐっと堪えつつ、気持ち良さそうに寝ている沖田さんを起こさないよう、そっと掃除をする。
此処はあまり人が通らないからか、落ちている花びらは中庭より綺麗な方。
時々、ゴミ袋に入っている花びらを手に取って、感触を楽しむ。
そして、一通り裏庭の方が終わった後、縁側に少し入り込んでいる奴も片す。
それもすぐ終わり、未だ起きる気配の無い沖田さんの方を向く。
体の上に花びらが乗っているけど、このままにしておこう。触ったら起きそうだし。
しかし、一体どんな寝顔しているのかな?
いつも変な赤いアイマスクして寝ているから、寝顔を見た事無い。
さっきは触るの躊躇ったが、こんなに熟睡してるから、大丈夫よね?
目を閉じているとは言え、アイマスクを取ったら明るくなるから、私の影で覆ってからアイマスクを上にずらす。
見えたのは、当たり前だが、目を閉じていて、穏やかな顔で寝ている沖田さんが。
あ、こんな顔してるんだ、なんて思う。
ごつい男達に囲まれているからか、華奢で小さく見えるのに、沖田さん個人だけで見ると、やっぱり男の子なんだな、と思う。
体格はしっかりしているし、手も大きい。見れば見るほど、男らしい体している。
そりゃ、近藤さんとかと比べたら全然だけどね。
もうちょっと背が高かったら、土方さんみたいになってそうだね。
ざぁ、と風が吹き、また桜が散った。
そのうちの一枚は、偶然にも沖田さんの鼻に。
「ふ、ぶぇっくしっ!」
やっぱりというか、今ので起きたらしい。
のそと、起き上がり、私に視線を移す。
「あり、・・・。いつの間に」
「おはよう御座います」
「・・・あー、寒」
起きたてだからか、風の冷たさを感じたようだ。
縁側から降り、んーっと背伸びしている。
なんでが、と聞かれ、素直に掃除していた事を話す。
「へぇ、掃除を」
「えぇ、ほら、その証拠に」
花びらがいっぱい入ったゴミ袋を指差す。
沖田さんはそこまで歩くと、ゴミ袋に入っている桜を手に取る。
綺麗なのに、もったいねって言う彼に、そうですねと答える。
染物に使おうかしら、って思っていると、両手いっぱい手に取った桜を持ってくる沖田さん。
え、何する気ですか。
「そーれっ!」
「・・・あー!!なんて事を!」
あろう事か、その両手いっぱい入っていた桜を上に舞い上がらせたではないか。
花びらは重力に従い、ゆっくりと落ちていく。まるで、桜吹雪のように。
「もう、いっちょ!」
「ああああ!!もう、沖田さんっ!」
「笑いなせぇ」
「え?」
「折角、綺麗にしてやってんのに」
「綺麗って・・・」
「散りゆく桜の中に立っている女子(おなご)、と言うよりは綺麗で、可愛いんでさぁ」
唐突過ぎる沖田さんの言葉に心がときめく。
もう、何言ってるのかわからないけど、沖田さんが喜んでくれるなら。
そう思っていたら、今度は手の平に乗っている花びらを私目掛けて息で吹いた。
「もー・・・、誰が掃除すると思ってるんですか(くすくす)」
「(あー、かわいいなぁ)」
何を思っているのかわからないけど、私が笑ったら、沖田さんもふんわりと笑った。
やってる事は子供っぽいのに、そんな大人な笑い方もするんだ、と失礼ながらも思ってしまった。
その後は、沖田さんと一緒に散らかした桜の花びらを片付けをしました。
桜舞散る中で。
私の中の沖田さんは確信犯の時もあれば、普通の少年という時もあるんです。
この話は少年っぽさを出したと思うんですが、どうでしょうか?
因みにタイトル、桜精はおうせい、と読みます。桜の妖精みたいな感じで。
(2010.4.26)
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