あぁ、きっとそれは、
「沖田コノヤロォォォ!!」
「うるせェチャイナァァ!!」
「・・・呆れてものが言えないってこういう事なのね」
「そうね」
ハーイ、私は。所属クラスは3年Z組で、出席番号は100番あたりで(此処、突っ込むところだよー)
私と友達の阿音はポッキーを食べながら二人の熱い攻防戦を見物。
ポキポキポッキー♪、期間限定の抹茶ポッキー♪
3Z名物は色々ある。
例えば、てか、今現在行われているコレ(ケンカという名のゴジラとモスラ)がそう。
そして、この学校の七不思議のほとんどはこのクラスによって行われているのでも有名(誰だ、調べた奴ァ)
後は血が噴出す光景、怖い高校生、おっさん高校生、地味メガネ(アレ、コレ名物じゃねェや)
担任も担任で人気があって、他のクラスは憧れているが、絶対このクラスにはなりたくないと思っているらしい(校長調べ)
「、止めなさいよ。アレ止めるの、いつもじゃん」
「ピー」
「思う存分暴れさせたらー?近頃、なんか機嫌悪いし」
神楽は嫌いじゃないよ。でも、なんかムカツク。
その腹立ちは嫉みから来ているのか、生理的に来ているのかわからない。でも、なんかムカツク。
どうムカツクと聞かれても答えようがない。
おかしいな、嫌いじゃないのに。
あんな事言ったけど、私はその言葉とは反対に二人の方へ近付く。
「沖田、アンタもいい加減にしなよ。女の子の顔に傷を付ける気?」
「チッ、か」
「今舌打ちしたな?舌打ちしたな?」
「大体、コイツの何処が女なんでェ?そんな馬鹿力女、見た事もねェ」
「ッ、馬鹿力女とは何アルか!私だって・・・ッ」
あ、傷付いた顔。
確信は薄々していたが、神楽はやっぱり沖田の事、好きなんだなァ。
なのに、何よ。沖田の今の言葉!
「私だって、好きでこんな力、付けた訳ないネ!」
「そうだよ。今のは沖田が悪いよ」
「・・・ったく、なんなんでェ」
それはきっと、神楽が聞きたいに違いないよ。
あ、そうか。私が神楽に対するムカつきは、さっさとくっつけよお前等的なものか。納得。
神楽も神楽で力は抑えられなくても、女の子らしくは出来る筈なのに。あー、じれったい。
どうせお前等、両想いだろ。・・・腹立つ。
・・・ん?まだ腹立つ事あんの?私。
+
今日、暴れた罰としてまた、沖田と神楽が掃除当番。
アイツ等、朝からずっと一緒の癖して、まだ付き合ってないんだよ。じれったくてムカツクわ。
でも、何故か私は今日に限って、教室の外で隠れて二人の様子を観察。
いやー、人の恋沙汰は楽しいんだけど、この二人のだけはムカツクんだよねー。アレ、矛盾してる?
ドアにコップを付けるという、ギャグで同じみな事をしてみる。教室の前を通った生徒と先生の視線が痛かったけど(めげない!)
銀八先生も通ったけど、爆笑される前に制圧させた(まだ倒れているよ)
つか、その前に無言で掃除か、コイツ等。
と思ったら、神楽の声が聞こえた。
「お、・・・沖田はど、んなタイプアルネ?」
「は、タイプ?女の?好きなタイプ?」
「そ、そう」
お、お、おぉ!いっちゃう?言っちゃう?イっちゃう!?(違う!)
でも神楽!そこはいっそ、『好きアルゥ!』的なノリでいかないと!え、私?絶対、無理☆
「好きなタイプかァ・・・まぁ、強いて言うなら可愛くて逞しい子かねィ。つか、ぶっちゃけ――― 」
ん?え、何?全然聞こえなくなったゾ?
何?沖田が神楽に告白!?
「―――― そ、うアルか」
アレ、神楽の声のトーンが落ちてる。てか、暗い。
え、何。告られたんじゃないの?だったら、もっと嬉しそうにしなさいよ。
なんで、訳がわからない。
神楽も、沖田も、私も。
「そうアルか。だったら私、沖田を応援してるネ」
「お前に応援されるなんて、俺も落ちたもんだなァ」
「何アルか、それ」
え、何、何?何、応援って・・・?
「あでで・・・お前、気付いてねェの?」
「先生」
「自分の気持ちにも気付かないなんざ、クソガキの証拠だな」
「『クソ』はいらないと思います。つか、何がですか」
そう先生に疑問を投げたところ、教室から二人が出て来た。
「あー!先生!だけはダメアル!禁断の恋なんかしちゃダメアルヨー!!」
「神楽ァ!何言っちゃってんのォ!?少なくとも、こんな教師とはヤダ!」
「うわ、傷付いた!興味もなんもねェのになんか傷付いた!!」
神楽が私達を見るなり、突然変な事を言い出してきた。
私も先生もびっくりで隣の沖田の存在を気にもかけないくらい。
いや、気付いてはいたよ?勿論。
ちょっと会話して、先生が半ば強制的に神楽を連れ去った(幼女誘拐発生ー!?)
オイオイ、この状況の中で置いていかないでください。
「、は」
すると、沖田の口が開いた。
「好きなタイプとか、あるんかィ?」
「は?何、突然」
「え、いや、なんとなく」
「・・・まぁ、いいけど。好きなタイプはそりゃ勿論、あるよ」
「へェ、どんな?」
「どんなって・・・昔と変わらないよ」
昔、沖田と好きなタイプについて話した事がある。
コレでも私達、俗に言う幼馴染って奴。
今となっては、ケンカを止める時以外、あんま喋らないけど。
「昔って、アレか?『強くて、カッコ良くて、全てを包み込めるような男』っつー、ベタな」
「ベタで悪かったな。つか、そんな男いないから、そういうタイプが好みになってしまうのよ」
「・・・じゃ、。俺は?」
「・・・は?」
本日何回目かわからない疑問。
初め、意味がわからなかった。いや、現在進行形で意味が理解出来ない。
「俺、強いし、全てかどうかはわかんねーが、なら包み込めるし、それなりにモテるからカッコいいんだろーし」
自意識過剰ですか。いや、実際、本人がわかるほどモテてるけど。
「なぁ、」
沖田が私の瞳を覗き込む。
ダメ、そんな顔、反則だって。
それじゃ、神楽は沖田の事を、沖田は私の事を好きって事じゃん。
私は神楽が上手くいけばいいのにと思ってたのに。ムカついてたけど、思ってたのに。
そんな、沖田が私を好きだなん、て。
「沖田、ダメだよ」
「なんで」
「なんでって、」
言い返せる言葉があった筈なのに、口に出ない、思い浮かばない。
何故だ。何故、何故、何故、
「俺ァ、の事がなんで好きだっつー理由なんてわからねェ」
沖田の目が真剣。
聞く私も真剣。
「気付いたら好きになってたんでェ。恋愛なんてそんなもんだろ」
『気付いたら好きになっていた』?
そんなのって、いつ気付くの?
答えられない私は、まさか、と思う自分に軽く苛つきを覚える。
でも、否定の言葉はない。
「が俺と付き合えないなら、それでいい。只、中途半端な答えだけはしないでくれィ」
『沖田と付き合う』、脳内でそれがリピートされる。
付き合えないとは思ってはいない。でも、沖田は中途半端な答えは求めてない。
それはイコール、イエスかノーでハッキリと答えろって事。
今、考えさせてという答えはダメだって事。
「・・・沖田は神楽じゃないの?神楽の事、好きじゃないの?」
「嫌いではないが、アイツとはそういう感情を持てねェ。やっぱり、お前じゃねェと」
沖田のその言葉が痛く、けど何故か優しく刺さった。
気が付けば、私は『よろしくお願い、します』と言葉を発していた。
あぁ、私は本能に任せてしまったんだ。
知っていたのに、知らないフリを続けて来たからか、自分の中にある、沖田に対する感情さえ気付いてなかった。
ずっと、神楽の事に腹が立っていたのは単なるヤキモチ。
付き合う事になって、沖田が一言。『コレからは昔のように総悟と呼ぶ事』だって。
結構、苦労したのにな。総悟から沖田へ呼び方を変えるの。
ま、コレも一種の青春って事で。
「、良かったアルな」
「神楽。・・・えと、」
「いいヨ。私、知ってたネ。アイツがの事しか見てないって事。そして、もアイツの事を見ていた事」
「・・・そんなにわかりやすかった?アイツ。先生と言い、神楽と言い」
「モロバレアル。気付いてないの沙知だけヨ。でも、私、謝るネ。沖田との気持ち、知ってたのに、私は沖田に・・・」
「いいよいいよ。コレも一種の青春だよ」
「・・・そうアルな」
そう言って笑った神楽は、嬉しそうだった。
甘酸っぱい、恋の始まり方。
(企画:High school High life!)