番外:子育ては計画的に
広いホールには煌びやかな女性多数と酔っ払い親父多数。
ボーイはドンペリなどを運んだり、女性を呼んだりと大忙し。
そんな女性達が集まってる裏(控え室)に回れば煙草吹かしたり化粧したりしながら、愚痴やら陰口やら。
女の裏側は怖いなと思いながらも、職員用トイレを出てまたもやホールに戻り。
此処は親父相手に女が話を聞いたり酒を飲む場所。そう、スナックである。
尤も、此処はスナックというよりキャバクラ・・・って、どう違うんだ?
いや、元々は小さな、そこらへんにあるスナックとなんら変わりなかったのに、いつの間にかでかくなってしまって。
此処はお触りパブではないと入店時に説明は一応しているが、酔っ払った親父の理性とやらは何処へ。
売れたいから我慢したり、さらりと流すキャバ嬢もいれば、必死に嫌がるキャバ嬢もいたり。
「おるぁぁぁ!!(バキッ)」
「ぉご!」
・・・このように相手をぶっ飛ばす奴までいたり・・・って、普通いねーよ。
コイツの場合は私が撃退しなくても自分で撃退するからといつも放置している。
けど、そのしばいた相手が阿音のお得意様とかなんかだから、余計ヒートアップしている。
「・・・百音さん。私達の姉ってなんであぁなんでしょうね」
「そうですね。てか、私、普段家では巫女服着てますけど、こういう場所で着ていると泣きたくなります」
「ちょっとぉぉ。阿音もいい加減になさいよ。確かに妙もやり過ぎだけどさぁ、でもやっぱ黙って触られてるのはよくないよ」
「うっさいわね、ケツや乳の一つや二つ。てか、アンタ何で百音にはさん付けと敬語で、私には呼び捨てとタメ語な訳?」
「百音さんが同じ境遇にいるからのと、貴女をなんというか、下等生物にしか見えないんで。・・・アバズレ」
「んだとゴルァァァ!!」
はぁー、帰りたい。
チラチラ時計見てるけど、今から帰っても門限間に合わないよ、どうしよう。ていうか、5分前だよ。
いや、帰してくれる感じはさらさらないんだけどさ。
「姉上。いい加減帰りたいです」
「何言ってんの!生活苦しいってのに!食べたきゃ働け、引きこもりが!」
「姉上。私も帰りたいです」
「あら、何言ってるのかしら?父上の道場の再復興が悲願じゃないの、引きこもりが」
「引きこもってないから!公務員だから!ちゃんと働いてるから!百音さんと違って!」
「何言ってるんですか。巫女が祈ってたらいけないと言うのですか」
あぁ、そうこうしているもう9時になっ
ピルル!
ほらほらぁ、来ちゃったじゃん。9時ピッタリじゃん、携帯の時計。
仕方ない、出るか。(ピッ)
「もし」
『てめっ、今何時だと思ってんだ。今すぐ帰って来い』
オイ、挨拶ぐらいさせろよ。せっかちだな。今に始まった事じゃないけど。
『お前、今かぶき町にいるだろ。さっさと出ろ。そんでもって帰って来い』
「GPSで位置調べるなって何回言ったらわかるんだバカヤロー。ストーカー行為と見なすぞ」
『あ?攫われても位置わかるようにだろうが』
「いや、いくら女といえど、武装警察がおちおち攫われますかってんだ。私に護身術叩き込んだの誰だっての」
『いいから、さっさと帰って来い。そっからだと30分あれば帰って来れるだろ』
「・・・はーい、わかりましたぁ」
・・・疲れた。
此処は素直に帰らないと、またGPSで位置調べられるからな。
「妙。今、局から連絡受けて、ちょっと・・・仕事が入ってしまって」
「・・・そう。無理しないでね」
こういう風に言うと、妙は私が今から斬りに行くのだと悟ってくれる。
嘘吐いてるから、妙のこの表情見ると、本当に斬りに行く時と違って心が傷付く。
でも、どうして此処にいるかを考えると、その傷は少し癒えてくるのも事実であって。
「ん、わかってる。終わったらまた連絡するから」
「必ずよ、」
「ハイハイ。じゃ、行ってきます」
ロッカールームに行って、荷物取って、携帯を鞄に入れて。
仕事用とプライベート用と、・・・3つ持っているのだ、携帯は。
え、もう1台は何用に持っているって?
持っているというか、持たされている、土方のヤローに。
プライベート用は勿論、自分自身で買ったもの。勿論支払いも自分で。
仕事用は局(警察)から支給されたもの。
土方用は土方さんが勝手に買ってきて、勝手に持たせているもの。料金は彼持ちだ。
因みに保護フィルターだとかなんとかはバッチシ設定されている。
「遅い」
「コレでも急いで帰ってきたつもりなんですけど、一体いつからそこ(玄関)にいたんですか」
「お前に電話した直後」
「あらお暇ですねー。いつも私達が暇潰ししてたら怒鳴るくせに」
「ごちゃごちゃうるせーんだよ。いいから風呂入れ。酒くせー」
「(煩いのはどっちだ)へーへー、わかりましたよー」
「風呂から上がったら真っ先に俺の部屋に来い」
「キャー、セクハラ発言ー」
「よーし、今日は特別にたっぷりしごいてやる」
言われた通りに風呂入って着替えて髪乾かしてから副長室に向かった。
失礼します、と一声かけてから襖を開ければ部屋のど真ん中であぐらかいて、更に腕組している土方さんがいた。
「そこに座れ」
言われて素直に応じる。
ココでちゃちゃこいたら余計怒られるっていうのはわかりきった事。
「毎回言っている事だが、出来れば今日みたいな事はするな」
「ハイ、わかっておりますけど」
「まぁ、あの姉に言われちゃ、仕方ねーとはコッチも思っているんだけどな、その、なんだ」
「・・・土方さん。貴方が私の事を凄く心配してくれてるっていうのはわかってます。でも、いい加減に信じてくださいよ」
「確かにお前には俺が嫌というほど護身術を叩き込んだ。けどな、言っちゃ悪いが、やっぱりお前は女なんだ。一瞬のスキをつかれたら終わりだ」
うん、わかる、わかるよ。貴方の言いたい事。
親の心、子知らず。子の心、親知らず。そんなんじゃないからね、私達は。
ちゃんと互いを理解しているんだけど、やっぱり心配なんだと。
私もそれを鬱陶しいとは思わないし、寧ろありがたい。
ケータイ持たされようが、門限がうるさかろーが、GPSで調べられよーが、別にいいんだ。
正直言っちゃうと、もうちょっとぐらい自由にさせて欲しいなと思って。
なんとかならないものか・・・。
「(ピンッ!)いい事思いつきましたよ、土方さん!」
「なんだ」
「だったら、土方さんが妙の店に来たらいいんですよ!土方さんは私の事見守れるし、店の売り上げも伸びるしで一石二鳥!」
「え、お、オイ・・・」
「あぁ、なんで今まで思いつかなかったんだろ。あ、それに土方さんも女の人に囲まれるからまさに一石三鳥?」
「待て、。俺の仕事はどうす、」
「え、いいでしょ、土方さん。私の事心配なら。ね?」
「あ、あぁ・・・」
いや〜、ホントに何で今まで思いつかなかったんだろ。
よし、コレからは気にせずスナックで働くんだ〜。
「・・・なんか、本当に娘を持った父親の気分だ(かわいいな、ちくしょー)」
END
惚れた弱みではないです、娘が可愛くて可愛くてしゃーないんです。
(2010.1.29)
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