煩い上司と客相手の仕事は本日終了。
日に日に重なっていくストレスに脳天がハゲている感じさえしてしまう。
まぁ私は性格上、鬱にならないと思うよ。
うじうじうじ悩んだってどうも出来ないし。
かといって、私だって人の子。悩みの一つくらいは持っている。
らしくもない、恋の悩みだ。
「おねーさん、団子とあっついお茶、頂戴」
「ハーイ。あら、今日は早いんですね」
「ん、早く此処の団子が食べたいのとおねーさんの顔が見たくてね」
「あら、嬉しいわ。でも、貴女が会いたいのは私じゃなくて、いつも来ている彼では?」
「おねーさん嫌ー」
クスクスと、可愛らしく笑うおねーさん。
可愛い顔しちゃってまぁ。
私もコレくらいの顔を持っていたら、彼に覚えてもらえるのかしら。
このおねーさんはこの団子屋の一人娘で、看板娘でもある。
その可愛らしい顔に華奢な体。此処に来ているほとんどの男は彼女目当て。
勿論、純粋に此処の団子が美味しくて、それだけで通っている客もいる。
「でも、彼さっき帰っちゃったのよ」
「そんなぁ、折角早く帰れたのに」
そして月日は過ぎて行き、暫く団子屋に来ていた彼とは会っていない。
いや、別に仲良かったとかそういうのではない。相手はきっと、私の事は知らないだろう。
一目だけでも会いたい、それだけのために私はほぼ毎日此処に来る。
おかげで増えて欲しくないものは増え、減って欲しくないものは減っていってしまう始末だ。
「オイねーちゃん、団子みっつ」
ちょっと懐かしい声が横から耳に入る。
ハイハイ、いつものね、とおねーさんが去った後に横を向けば、私が一目会いたくて待ち遠しかった人がそこにいた。
何週間ぶりかなぁ。
視線に気付いたのか、彼もコッチを見てきた(わゎ!)
「あり、アンタ暫く見てないから来てないかと思ってたのに」
「え、私の事覚えて?」
「毎日団子ひとつと熱い茶飲んでただろィ」
嘘、夢みたい。
好きな人に顔を覚えてもらっている。
「俺、沖田総悟いいやす。よかったらコレからは一緒に食べてくだせぇ」
常連客同士っていう設定で。
(2010.3.25)
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